アパート経営について、メリット・デメリットや合っている土地のタイプ、具体的なシミュレーションに加え、アパート経営で知っておきたいポイントや数字をわかりやすく解説しています。
- こんな方に
オススメ
- 「とにかくしっかり儲けたい」
「相続税対策をしたい」方向け
アパート経営
アパート経営の特徴一覧
人気度◎高い→×低い |
収益性◎高い→×低い |
初期費用◎低い→×高い |
相続税対策◎高い→×低い |
流動性◎高い→×低い |
リスクの大きさ◎小さい→×大きい |
管理の手間◎楽→×大変 |
◎ |
○ |
○ |
◎ |
△ |
× |
○ |
流動性◎高い→×低い |
リスクの大きさ◎小さい→×大きい |
管理の手間◎楽→×大変 |
△ |
× |
○ |
メリット
- 相続税対策や節税対策ができる
- 安定した収入を得られる
- 利回りを高くしやすい
- 規制が少なく建てやすい
- 賃貸需要が安定している
- 価格が下がりにくく売却もしやすい
- 生命保険の代わりになる
デメリット
- 空室リスクがある
- 賃料の下落リスクがある
- 築年数が古くなると維持費が増える
- 満室以上に儲けることができない
- 始めるには自己資金が必要となる
- マンションよりも老朽化が早い
合っている土地のタイプ
- ・最寄りの駅から徒歩10分前後のエリア
- ・駅から徒歩圏外だが周辺に生活に便利な施設(スーパーや銀行など)がある
- ・通勤通学に30分~40分圏内
- ・約60坪~
参考シミュレーション
- 前提条件
- 埼玉県浦和駅から徒歩15分圏内
構造:木造
延べ床面積:50坪
階数:2階建(ワンルーム8戸)
家賃:1戸当たり月7万円
- 初期費用
- 合計:約5,200万円(ローン:約4,000万円、自己資金:1,200万円)
建築費:約4,000万円
諸経費:約1,200万円
- 利回り
- 年間家賃収入:672万円
年間経費:約135万円
年間ローン返済額:約312万円(返済期間:15年)
年額利益:約216万円
解説
比較的どんな所にも建てやすく、狭い土地から広い土地まで敷地に合わせて計画することができるうえに、安定的な収益が得られ、利回りも土地活用全体の目安とされる5%を上回る6.4%が相場なのできちんとした経営ができれば儲けることのできる土地活用です。
またアパート経営は相続税対策で王道の活用法であり、収益物件の相続は単純な「家や土地の相続(自家使用の不動産)」よりも約30%も相続税評価が低くなり、団信(団体信用生命保険)に加入することでご家族に負担少なくアパートを残すことができるので人気の活用法です。
経営の失敗例として多く挙がるものは「大規模修繕費の捻出ができなかった」というものです。
約15年に1回程度で発生し、その修繕費用は数百万円~数千万円単位必要になってきます。加えて、この経営は空室の数が大きく影響してきますので、アパート経営の自己資金の目安は、物件価格の1~3割と言われていますが、少し余裕を持っておくと空室が出た時などのいざという時に安心できます。
月々のローン返済額や修繕費等を細部までシミュレーションし、綿密な計画を立てておくことでリスクを回避することが肝要です。
賃貸需要は全体的に安定しているとはいえ、需要の弱いエリアでは相続税対策でも無理にアパート経営を行わないという判断もしっかり出来る位、きちんと見極めて経営をスタートすることをおすすめします。
1. 知っておきたい数字・ポイント
利回りの相場
6.4%
(表面利回り)
主な経費は18種類
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大家さんの年収
約521万円
(全国平均)
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相続税対策
収益物件の建物評価額は自用の不動産よりもさらに
約30%
低くなる
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建築費の相場
木造:約77~100万円/坪
鉄骨造:約80~120万円/坪
鉄筋コンクリート造:約90~120万円/坪
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自己準備資金の
目安
物件購入価格の
1~3割
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建て替え時期の
目安
築30年~35年
大規模修繕は約15年に1回
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2. 利回りの相場について
表面利回りと実質利回りの基礎知識と計算方法
利回りには、表面利回りと実質利回りの2種類あります。
表面利回りとは、年間賃料収入の投資額に対する割合です。
実質利回りとは、不動産が生み出す年間純収益の投資額に対する割合です。
実質利回り(NOI利回り) = 年間純収益(NOI) ÷ 投資額
不動産が生み出す純収益とは、家賃収入から固定資産税や保険料、修繕費等の支出を差し引いたものであり、NOI(エヌオーアイ:Net Operating Income)と呼ばれる純収益を用いるのが国際標準となっています。
実質利回りは、NOIの投資額に対する割合であるため、NOI利回りとも呼ばれています。
パターン別 利回りの考え方
「元々土地を持っている人」と「土地から購入する人」で少し考え方も変わります。
元々土地を持っている人の利回り
元々土地を持っている人の利回りは、一般的には年間賃料収入の建築費に対する割合で語られることが多いです。
実質利回りで語られることは少なく、建築費の表面利回りが議論の対象となっています。
元々土地を持っている人の利回り = 年間賃料収入 ÷ 建築費
土地から購入する人の利回り
土地から購入している人の利回りは、年間賃料収入の土地価格と建築費の合計額に対する割合です。
土地から購入している人の利回り = 年間賃料収入 ÷ (土地価格 + 建築費)
土地から購入している人の利回りは、分母に土地価格を含むことが特徴となります。
分母の土地価格は都市部の方が高く、地方の方が低くなります。
分子の年間賃料収入も都市部の方が高く、地方の方が低くなりますが、土地価格ほどの大きな差は生じません。
地域差は分子の賃料よりも分母の土地価格の影響の方が大きいため、土地から購入する人の利回りは、都市部の方が低く、地方の方が高くなるという特徴があります。
実質利回り(NOI利回り)の純収益の算出方法
実質利回り(NOI利回り)は「年間純収益(NOI) ÷ 投資額」で計算できます。
年間純収益は「年間家賃収入-年間支出」で算出します。
その際の「支出(経費)」の主な費目18種類を一覧で紹介します。またこの18種類は経費として計上する事が認められているものです。
これらの費目は、あくまでもアパート経営に関連するものだけが経費として落とすことが可能です。
3.大家さんの年収について
不動産所得者の所得金額・手取り年収の内訳
【資料】国税庁:「令和元年申告所得税標本調査」
不動産所得を得ている人の、所得金額別の内訳は以下の図の通りです。
不動産所得を得ている人の、所得金額別の内訳一覧
所得 |
割合 |
~100万円 |
7.8% |
100万円~200万円 |
19.8% |
200万円~300万円 |
16.8% |
300万円~500万円 |
23.2% |
500万円~1000万円 |
21.9% |
1000万円~2000万円 |
8.2% |
2000万円~5000万円 |
2.3% |
5000万円~1億円 |
0.1% |
1億円~ |
0.1% |
300万円〜500万円、500万円〜1,000万円の層が比較的厚いという結果になっています。
この中にはアパートだけでなく大規模なマンションやテナントビル、土地を貸している場合の地代や、区分所有マンションを貸している方など、様々なタイプのオーナーが含まれているのでご注意ください。
また、アパートオーナーの所得は、家賃収入総額の「約15%」程と言われています。
具体的には、以下の計算式の考え方で算出できます。
アパート経営の手取り収入=家賃収入等の総収入(アパート経営の収入)-税金や修繕費等の総支出(アパート経営の支出)
アパート経営の年間の収入と支出の内訳
・アパート経営の収入
家賃収入
アパート経営の主な収入源は家賃収入で、家賃収入の額がほとんどアパート経営の収入と同額、ということも珍しくありません。
家賃収入以外の収入
アパートの敷地内に自動販売機を設置していたり、屋根の上に太陽光発電システムを設置していたりする場合、それらの収入を家賃収入以外の収入として考える事ができます。
・アパート経営の支出
修繕費
入居者が退去した後の、壁紙やフローリングの張替え費用、古くなったエアコンなど各種設備の取り換え費用、10~15年に一度は行う必要のある外壁工事などが該当します。
修繕費は突発的な費用も発生しやすく、毎年変動しますが、おおむね年間家賃収入の5~10%程度を目安としておくのがよいでしょう。
管理費
入居者管理を管理会社に頼む場合、毎年家賃の5%程度を管理委託費として支払う必要があります。
管理委託費のパーセンテージは、数ある管理業務の中から、どこまでを依頼するかによって異なります。
火災保険
火災保険費用は、どのエリアで、どのようなプランに加入するかによって異なります。
税金
アパート経営に関わる主な税金は所得税や住民税、固定資産税、不動産取得税(不動産取得税は不動産を取得したときに、一度だけ支払う必要がある)、消費税の5つです。
4.相続税対策について
アパート経営で相続税評価額が下がる仕組み
不動産の相続税は「建物の価値」「土地の価値」それぞれを個別に計算します。
まず、自宅をはじめとした「自分で使っている不動産」(「自家用の不動産」という)の相続税評価額は以下のようになります。
【自用の不動産の相続税評価額】
(建物の相続税評価額)
建物評価額 = 建物の固定資産税評価額
(土地の相続税評価額)
土地評価額 = 路線価による評価額
建物については、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
相続税路線価は、周辺の地価公示価格の80%程度で設定されています。
一方でアパートのような収益物件では、相続税評価額が下記の計算の様に下がります。
【収益物件の相続税評価額】
(建物の相続税評価額)
建物評価額 = 建物の固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
(土地の相続税評価額)
土地評価額(貸家建付地評価額) = 路線価による評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
・借家権割合とは
全国一律で「30%」となります。
・賃貸割合とは
相続時における入居率のことで、賃貸割合は100%、つまり満室のときが相続税評価額は最も低くなる仕組みです。
・借地権割合とは
借地権は土地を利用する権利の価値の割合を図る数値で、国税庁が30~90%(10%刻み)で定めています。
国税庁が公開している「路線価図」で公開しており、都心部ほど割合が高く(銀座であれば90%程度)なります。
5.建設費の相場について
アパートの本体工事費の相場とシミュレーション
一般的に建築費の坪単価は、「本体工事費」について表したものです。
・坪単価 = 一坪あたりにかかる単価
・延床面積 = 建物の各階層の床面積を足し合わせた面積
例えば、1階30坪、2階30坪のアパートならば延床面積は60坪。
延床面積60坪で坪単価が80万円とすると、本体工事費の総額は 80万円×60坪=4,800万円 と計算できます。
アパート構造別 本体工事費坪単価相場一覧 (2~3階建て想定)
構造 |
坪単価 |
木造(W) |
77~100万円程度 |
鉄骨造(S) |
80~120万円程度 |
鉄筋コンクリート造(RC) |
90~120万円程度 |
ちなみに、アパートというと通常は木造や鉄骨造の2~3階建ての建物を指します。
一方、鉄骨や鉄筋コンクリート造の3階建て以上の建物はマンションと呼ばれることが多いですが、アパートとマンションの名称の使い方に法律的な決まりはありません。
アパートの建設費用総額の計算方法と考え方
アパートを建築するときには、「本体工事費」のほかに、「別途工事費」と「諸経費」が必要になります。
建設費用総額=本体工事費(延べ床×坪単価)+別途工事費(本体工事費の約20%)+諸費用(100~200万)
本体工事費、別途工事費、諸費用の詳細は下記になります。
・本体工事費
本体工事費は、建物の基礎、構造、内装、外装、バス・トイレ・キッチンなどの設備費用を含み、本体工事費は、アパートの建設費用総額の7~8割を占めます。
・別途工事費(付帯工事費)
本体工事費の20%前後かかるのが一般的です。
別途工事費には、次のような費用があります。
- 給排水工事、ガス埋設管の引き込み工事、メーター設置費用
- 電気、空調工事
- 駐車場、塀、植栽などの外構工事費用
- 地盤の強さに応じた地盤改良工事費用
- 市区町村の定める負担金(上下水道負担金など)
別途工事費は本体工事費の20%程度というのはあくまで目安で、敷地条件や建築プランによって様々です。
例えば、前面道路から上水道・下水道・ガスの埋設管を引き込むとき、工事費は自己負担となるので、引き込み距離が長いと工事費用が増えます。
どんなプランにするかによって外構費用には幅がありますし、その土地の地盤の強さに応じて地盤改良費用は変わります。
・諸費用
諸費用はローンではカバーされないので、自己資金で支払う必要があります。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
- 建築確認申請等の手数料
- 司法書士に支払う報酬
- 火災保険料
- アパートローンの融資手数料
アパートの建設費用総額のシュミレーション
例として、1階30坪、2階30坪、延床面積60坪のアパートの場合で計算してみます。
約50坪の土地があれば、延床面積60坪のアパートが建てられることが多いです。
(※実際に建てられるアパートの規模は、建ぺい率、容積率などの法令上の制限によって変わってきます。)
60坪のアパートというと、25平米×8部屋くらいの規模です。
シュミレーション結果は以下の通りです。
6.自己準備資金の目安とアパートローンの融資限度額
自己準備資金の目安
物件購入価格の1~3割が必要と言われています。
想定上に費用がかかってしまうこともあるので、自己資金には余裕を持っておきましょう。
例えば、8,000万円のアパートを購入する場合、だいたい1,600万円の自己資金が必要になります。
アパートローンの融資限度額
アパートローンの融資限度額は、その資産価値の50%~60%とされるのが相場です。
金融機関によっても、その割合には差がありますが、アパートローンだけでは、アパート経営にかかる必要資金全てをカバーすることはできないと考えておきましょう。
例えば、アパート建設に5,000万円かかる場合、アパートローンの融資限度額の目安は、2,500万円~3,000万円となるということです。
上記の相場を超えた融資限度額を設けているアパートローンには、条件としては非常に有利な反面、注意したほうがいいでしょう。
7.アパート建替えの目安について
アパートの建て替えは、1つの要因だけで判断するものではありません。3つの目安が全て整っているような状態であれば、建て替えを検討すべきです。
これから、アパートの建て替え時期を判断する3つの目安について解説していきます。
アパート建て替え時期を判断する3つの目安
・築30年を過ぎている
アパートは築30年を過ぎると、建て替えの目安となります。
法定耐用年数も木造アパートであれば22年、鉄骨造(鉄骨の厚みが3mm超4mm以下のもの)のアパートであれば27年ですので、築30年を超えるとほとんどのアパートが耐用年数を満了していて、「減価償却による節税効果」が得られていないことになります。
築30年超の物件では多くの場合、建物の仕様が今のニーズとマッチしておらず、入居が決まりにくくなっていることが多いです。
躯体の状態というよりは30年という時間がニーズとのミスマッチを生んでおり、建て替えの必要性が出てくるのです。
築30年超の物件は仕様が今のニーズに合っていないことが多いので、建て替えによって抜本的に改善することをおススメします。
・高額なリフォーム費用が発生する場合
アパートは古くなるとだんだんと空室が増え、賃料が下がってきます。そのため、空室対策や賃料アップのためにリフォームが必要になります。
大規模なリフォームは、実施すれば賃料はアップしますが、高額なリフォーム費用が立て続けに発生するような場合には建て替えを検討すべきです。
仮に築30年を過ぎているような物件の場合、10年の回収期間がかかるような投資を行うと回収時点では築40年超となってしまいます。
築30年から40年の間には再び賃料ダウンも発生する可能性が高く、10年の回収も現実的ではありません。
単純に家賃の6ヶ月以上のリフォームが頻発するようなアパートであればリフォーム費用が割に合わないとして、建て替えの一つの目安とする考え方もあります。
高額なリフォーム費用が立て続けに続くようであれば、建て替えを検討してみましょう。
・空室率が5割以上
空室率が5割以上になった段階からそろそろ検討することが望ましいです。
アパートの建て替えには立ち退きが必要となるため、実際には空室率が8割くらいになった段階で本格的に動き始めるほうが無駄はありません。
アパート経営は、借入金が多いと空室率が3~4割程度でも経営が苦しくなります。しかしながら、空室率が3~4割の段階で立ち退きを着手してしまうと、相手が多いため立ち退き料も多くかかり、交渉も難航する可能性があります。
そのため、立ち退きに着手するには、空室率が5割以上に増えるまで少し我慢をすべきです。建て替えを前提としている場合、空室率が5割以上になったら無理に入居者を募集する必要はありません。入居者は自然減となることを狙い、残りが2割くらいになったら、立ち退きを開始して本格的に建て替えを進めて行くことをおススメします。
アパート建て替えのメリット
・キャッシュフローが良くなる
古くなったアパートは、家賃収入は減るのに税金が上がるという一見不思議な現象が発生します。その原因は減価償却費にあります。
減価償却費とは、建物の取得原価を各会計期間に計画的、規則的に費用として配分する会計上の費用です。減価償却費が発生する期間のことを法定耐用年数と呼びます。
法定耐用年数は建物の構造によって以下のように決まっています。
構造別 アパートの法定耐用年数一覧
構造 |
耐用年数 |
木造 |
22年 |
木造モルタル |
20年 |
鉄骨造(厚さ3㎜以下) |
19年 |
鉄骨造(厚さ3㎜超4㎜以下) |
27年 |
鉄骨造(厚さ4㎜超) |
34年 |
鉄筋コンクリート造 |
47年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 |
47年 |
(出典:国税庁)
木造アパートなら、22年間にわたり、建物の取得原価が費用として配分されます。費用として配分されると、建物の簿価はその分だけ下がります。
アパート(木造) 築年数と減価償却費・建物簿価の相関関係一覧
築年数 |
減価償却費 |
建物簿価 |
竣工年 |
0円 |
2,200万円 |
1年目 |
約100万円 |
2,100万円 |
2年目 |
約100万円 |
2,000万円 |
~中略~ |
21年目 |
約100万円 |
100万円 |
22年目 |
約100万円 |
1円 |
23年目 |
0円 |
1円 |
・簿価とは
確定申告をする上で、帳簿に載る資産価格のことです。
建物は減価償却され、耐用年数満了時には最終的に備忘価格の1円まで償却されます。
建物簿価は1円まで下がると、それ以降、減価償却費は発生しなくなります。
減価償却費が発生しなくなると費用が減るため、その分、会計上の利益が増えます。
利益が増えると税金も増えてしまうので、耐用年数を満了したアパートは家賃が低くなっているにもかかわらず、実際の手取り収入が税金分減ってしまい、最終的なキャッシュフローが悪化します。
アパート経営は、減価償却費の仕組みとして耐用年数満了後の物件のキャッシュフローが悪くなります。
キャッシュフローを元に戻すには建て替えを行って、再度、毎年減価償却費が計上できるような状況にすることが必要です。
・支出が減る
アパートは建て替えると支出が減るというメリットがあります。築年数が古い物件は、収入が減るばかりではなく支出も多くなります。築年数が古いことによって増額する費用は主に以下の3つです。
- 1.修繕費(大規模修繕費を含む)
- 2.空室対策のためのリフォーム
- 3.入居者募集費用
築年数の古いマンションは、新築当初には出なかった費用が発生していきます。これらの費用は、今後、増えていくことはあっても減ることはありません。費用の流出を抑えていくためには、建て替えを行うことが効果的です。
4種類の修繕と実施の目安に費用の目安
アパートをはじめとする賃貸物件は、建築から年数が経つにつれ劣化・老朽化が進むことは避けられません。
また現物資産であるため、突発的な事故や災害などでも故障や破損は起こり得ます。
そのため、アパート経営においてはどのような修繕費用がどの程度、どの頻度で必要になるのか、知っておき、準備することは非常に重要になります。
以下、アパートの修繕が必要になるケースとそれぞれの費用の目安を表で解説します。
アパート修繕の主な発生箇所と発生時期、費用の相場 一覧
修繕箇所 |
修理・交換 実施の目安 |
相場 |
エアコン修理・交換 |
7年~10年 |
修理:1万5,000円~15万円/台 (故障内容による。室外機修理費用は高い) |
交換:5万円~15万円/台 (10畳程度想定・ベーシックなグレード・新品・工事費込み) |
給湯器修理・交換 |
10年~12年 |
修理:6,000円~5万円/台(故障内容による) |
交換:10万円~15万円/台 |
キッチンガスコンロ修理・交換 |
8~10年 |
修理:1,000円~1万円/台 |
交換:5万円~20万円/台 |
ユニットバス修理・交換 |
10~15年 |
修理:5万円~20万円(壁・床など) |
交換:50万円~150万円 |
ウォシュレット修理・交換 |
7年~10年 |
修理:1万5,000円~3万円/台(故障内容による) |
交換:3万円~6万円/台 |
配管設備・ポンプ修理 |
15年~20年 |
10万円~70万円 (配管長さ、状態、修理内容による) |
クロス張替 |
6年~8年 (退去時にも) |
1,000円~1,500円/平米 |
クッションフロア張替 |
8年~12年 (退去時にも) |
3,000円~5,000円/平米 |
間取り変更等の造作 |
15年程度 |
工事内容による |
屋上防水・ベランダ防水 |
10年~15年 |
80万円~100万円/100平米 (工事内容・工法・物件の状態・業者による) |
手すり・階段防錆 |
10年~15年 |
参考価格:5万円~15万円 (階段一基・一階部分あたり) |
外壁補修 |
10年~15年 |
60万円~150万円/100平米あたり (工事内容・物件の状態・業者による) |
外壁塗装 |
10年~15年 |
50万円~100万円/100平米あたり (工事内容・塗料・物件の状態・業者による) |
金額は、あくまでも目安であり一例です。必ず専門業者に見積もりを取ってください。
アパート修繕は、不具合が発生してからのものもありますが、その多くが定期的なメンテナンスを伴うものです。そのため、計画的な修繕が重要となります。
毎月の家賃収入から一定割合を積み立てにまわすなど計画的に積み立てることで、費用負担を賄います。
その都度の修繕費を急に捻出するのは、大規模な修繕では対応しきれない可能性があります。
安易にローンを利用せずに、積み立てでゆとりを持つことをおすすめします。
修繕費の積立金の目安
アパートの築年数と必要な修繕費積立金の目安 相関関係
築年数 |
必要な修繕積立金の目安 |
1~10年目 |
建築費の0.3%程度(毎年) |
10年~20年目 |
建築費の0.5%程度(毎年) |
21年目以降 |
建築費の1.0%程度(毎年) |
たとえば、建築費1億円のアパートの10年~20年目ですと、毎年50万円が積み立ての目安になります。
8.「お役立ちガイド」掲載コンテンツ一覧
アパート経営ガイド記事一覧