ビル経営の基本を解説。成功しやすいビルの企画・設計について
この記事は個人が建築できる規模の「ビル経営」を、土地活用として検討している方へ向けて書かれています。
主に下記について詳しく説明しています。
- ビル経営のメリット:オフィスがメインのビルの賃料単価は、住宅系の賃料よりも高い。
- 注意点:賃貸住宅経営と違い、立地が限定的である。
- ポイント:貸しやすいビルにするためには、貸室形状などに注意しましょう。
上記のように、ビル経営は大きな収益を得ることができますが、収益化を成功させるためには、建設会社と事前にしっかりと相談する必要があります。
信頼できる建設会社を見つけるには、複数の建設会社から企画・見積りをもらうようにしましょう。
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この記事の内容
1. ビル経営のメリット
最初にビル経営のメリットについて紹介します。
1-1. 相続対策となる
土地活用でビルを建てる場合、最大のメリットは相続対策となるという点です。
相続対策はアパートだけでなく、店舗やホテル、オフィスビル等の賃貸物件を建てれば全て相続対策となります。
つまり、土地の上に「他人に貸す建物」を建てれば、どれも相続対策になるということです。
自分で使う建物を建てた場合、土地と建物の相続税評価額は以下のようになります。
(土地)
自用の土地評価額 = 路線価評価額
(建物)
自用の建物評価額 = 建物固定資産税評価額
土地については相続税路線価から算出した額、建物については建物固定資産税評価額が相続税評価額となります。
一方で、「他人に貸す建物」を建てた場合、土地と建物の相続税評価額は以下のようになります。
(土地)
貸家建付地 = 路線価評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
(建物)
貸家の建物評価額 = 建物固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
土地については他人に貸す建物が建つことで、貸家建付地という評価になり、更地よりも評価額が下がります。
建物については、借家権割合による評価減が適用されるため、自分で使う建物よりも評価額が下がります。
借家権割合は全国一律で30%です。
借地権割合は30%~90%の範囲でエリアによって指定されています。
これらの評価減のルールは、特に住宅や事務所等の用途を定めていないことがポイントです。
1-2. 収入が大きい
オフィスがメインのビルの賃料単価は、住宅系の賃料よりも高いです。
そのため、同じ賃貸面積であれば、賃貸住宅よりもオフィスビルを建てた方が収入は大きくなります。
固定資産税や保険料、管理費、修繕費等の費用は、家賃収入の15~30%程度であり、その割合は賃貸マンションやアパートと大差はありません。
ただし、収入が大きくなるのは、あくまでもオフィスの賃料単価が住宅の賃料単価よりも高い場所に限られます。
例えば東京駅の駅前のような土地であれば、アパートやマンションを建てるよりオフィスビルを建てた方が良いという比較の話です。
そもそもオフィスの賃貸需要がないエリアでは、賃貸住宅の方が収益性は高くなります。
2. ビル経営と賃貸住宅経営の違い
この章では、ビル経営を理解するために、賃貸マンションやアパート等の賃貸住宅経営との違いについて解説します。
2-1. 立地が限定的である
ビル経営ができる立地はかなり限定的です。
アパートのような賃貸住宅であれば、かなり広いエリアでできますが、オフィスビルの賃貸需要は狭い範囲にしか存在しないという違いがあります。
特に地方都市の場合では、ターミナル駅周辺のほんの一部の土地だけであり、それ以外の土地でオフィスビルを経営すると、テナント獲得にかなり苦戦する可能性があります。
一方で、住宅の賃貸需要は幅広く存在しますので、ちょっと場所が変わった程度で激減することはありません。
オフィスの場合はちょっとした立地の違いで命運を分けることもあり、「本当にオフィスで良いのか」をしっかり検討することが必要となります。
所有地がビル経営にマッチしているか相談したい方は「HOME4U 土地活用」を使えば、最大10社からビル経営の収支プランの提案を受けられます。
2-2. 専有面積が広いほど賃料単価が高くなる
オフィスビルの賃料単価は専有面積が広いほど、高くなる傾向にあります。
それに対して、賃貸住宅は3LDKよりも1Kのように間取りが小さくなる方が賃料単価は高いです。
オフィスビルの場合、ワンフロアの面積が広いほど、テナント属性が良くなる傾向にあり、賃料単価を上げることができるのです。
個人が建てるビルの場合、なかなか大きなビルを建てることはできませんが、それでもワンフロアの面積を大きくすることは貸しやすいビルを作る上での基本となります。
また、オフィスビルは、賃料単価に相場があります。
賃料単価は「坪単価」で形成されており、共益費を含んだ単価となっているのが一般的です。
共益費とは共用部の維持のためにテナントから徴収するお金です。
例えば賃料相場が坪2万円という表現の場合には、「賃料1.7万円+共益費0.3万円」のような構成となっています。
オフィスビルの賃料は、賃料単価に面積を乗じて決まります。
賃料単価はスッキリとした数字でも、総額は端数が出てくる汚い数字となることも多いです。
逆に、住宅の賃料は、総額に相場があり、総額が綺麗な数字になります。
3LDKで家賃12万円のようにスッキリとした数字で決まり、単価は端数が出てくる汚い数字になることが一般的です。
2-3. 付加使用料を徴収する
オフィスビルの特徴として、テナントから付加使用料を徴収するという点があります。
付加使用料とは、テナントが専有部分で使用する水道光熱費のことです。
賃貸住宅では、各戸の入居者がそれぞれ電力会社や水道局と契約し、入居者が直接、電気代や水道代を払います。
一方で、オフィスビルでは、ビル1棟全体でオーナーが電力会社や水道局と契約します。
オーナーは、毎月、各テナントの電気代等に使用量に応じて個別に付加使用料を徴収します。
集めた付加使用料は、オーナーが電力会社や水道局へ支払う流れとなります。
付加使用料に関しては、オーナーが電力会社等に支払う金額と、完全に一致させる必要はありません。
商習慣として、オーナーが実際に支払う電気代よりも、若干利益を上乗せした金額をテナントから集めることが一般的です。
よって、付加使用料もビルオーナーにとっては、貴重な収入源となります。
付加使用料に関しても、地域で相場が形成されていますので、相場を見ながら徴収単価を決定していくのが通常です。
2-4. 階数は上がっても賃料は上がらない
賃貸マンションのような住宅では、階数が上がると賃料が少しずつ高く設定できますが、オフィスビルの賃料は、階数は上がっても賃料は上がらないという性質があります。
オフィスビルの場合、テナントがフロアをまたがって借りることが良くあります。
2階から5階をA社、6階から7階はB社のように各テナントが必要な面積だけ借りるのが通常です。
その際、ビル側で各階ごとに賃料差をつけていたら、テナントが「上の階が高いのなら借りません」という反応になってしまいます。
オフィスビルでは、同じテナントが違う階も借りやすくするために、商習慣として各階の賃料単価は同じになっていることが多く見受けられます。
一方で、住宅であれば、基本的に階数が異なれば借りる人も異なります。
普通は他の階をまたがって借りませんので、階数で賃料差をつけても影響はないのです。
そのため、住宅の場合は、商習慣として眺望が良くなる高層階ほど賃料が高くなっています。
尚、オフィスビルではテナントが1.5フロアなど端数で借りることもあります。
ワンフロアの専有面積が80坪以上あると、40坪ずつ借りるような2分割ニーズが出てきます。
オフィスには分割の賃貸ニーズもありますので、敷地が100坪以上の土地でビルを建てる場合には、フロアを分割対応できるように設計しておくことも必要です。
2-5. 賃料が景気によって変動しやすい
オフィスビルの賃料は、住宅に比べると賃料相場が景気によって変動しやすいです。
好景気のときには上がり、不景気のときには下がります。
賃料変動がほとんどない住宅と比べると、不安定な部分もあります。
また、不景気のときは賃料の下落のみならず、退去も増えます。
不景気のときは、「事業から撤退する」、「支店を統廃合する」等の動きが生じるため、空室が生まれやすいです。
退去が発生しても、すぐに次のテナントが見つかるようにするには、最初の段階で貸しやすいビルを建てることが重要になってきます。
3. どんなビルを建てるのがベスト?ビル経営の始め方
この章ではビル経営に始め方について解説します。
3-1. 複数の賃貸プランを検証する
これからビルを建築するのであれば、まずは複数の賃貸プランを比較して検証することがスタートになります。
通常、請負工事会社にオフィスビルの土地活用提案を依頼すると、設計プランと収支プランの2つが出てきます。
建築費等も分かりますので、まずはプラン提案を受けて全体像をつかむことが先決です。
オフィスビルを建てたいのであれば、「HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」の利用がおススメとなります。
HOME4Uでは、国内の大手請負工事会社を中心に、最大10社から無料で賃貸プランを得ることができます。
賃貸プランの中には、簡単な設計図面と、請負工事金額、竣工後の収益計画が全て記載されています。
はじめてビル経営をする人でも、どれくらいの建築費が必要で、どれくらい儲かるのかが一目で分かるようになります。
オフィスビルは半世紀以上に渡ってお金を生む資産になるため、しっかりした大手の請負工事会社に建ててもらった方が安心です。
「HOME4U 土地活用」ならビル建築に最適な請負工事会社が見つかりますので、ぜひご活用ください。
3-2. 賃貸マンションやビジネスホテルとも比較する
オフィスビルが建つエリアや土地では、一般的に賃貸マンションやビジネスホテルも建築できるケースが多いです。
オフィスは、東京都内であってもちょっと場所が悪くなるだけで、賃貸需要が弱くなることがあります。
オフィスビルには「オフィスの方が儲かる場所」と「オフィスは儲からない場所」の境界線のようなものがあります。
オフィスは儲からない場所になると、賃貸マンションやビジネスホテルの方が収益性は高いです。
特に、地方都市では、昔はオフィス街であった場所でも、今はほとんどオフィスの賃貸需要がないところが良くあります。
周辺の既存建物がオフィスだとしても、必ずしもオフィスの収益性が一番高いとは限りません。
検討の結果、賃貸マンションの方が良いということもありますので、特に東京以外で土地活用する方は、必ず賃貸マンションやビジネスホテルも検討するようにしてください。
「HOME4U 土地活用」の良いところは、ビル提案だけでなく、その他の様々な用途の提案も可能という点です。
幅広く他の用途も検討した結果、「やはりビルが一番良い」と分かったら、ビルの検討を深堀することをおススメします。
4. ビル経営のリスク
この章ではビル経営のリスクについて解説します。
4-1. 空室リスク
ビル経営の最大のリスクは空室リスクです。
ビルに限らず、賃貸経営では空室が様々なリスクを呼び起こす引き金となります。
空室が増えれば、賃料を下げて募集しなければならないため、賃料下落リスクが発生します。
空室が多ければ、入居中のテナントも強気で賃下げ交渉をしてくるため、既存テナントの賃料まで下げざるを得ないこともあります。
また、空室が増えれば空室対策リノベーションのような工事も必要となり、修繕費の増加リスクも生じます。
空室が増えると、どんどん悪影響が広がりますので、これからビルを建てるのであれば空室になりにくいビルをしっかり建てることが重要です。
4-2. 借入金返済リスク
空室リスクにも関連しますが、空室が増えると借入金返済リスクが顕在化します。
ただし、借入金返済リスクは、自己資金と借入金の割合によっても異なるため、同じビルを建てても人によって異なります。
借入金100%でビルを建てた方であれば、少しの空室で借入金返済が苦しくなりますが、自己資金100%でビルを建てた方であれば、そもそも借入金の返済リスクは生じません。
よって、借入金返済リスクを減らすには、まずは自己資金を十分に用意するということが最大の対策です。
同じ空室が発生しても、借入金が多い方ほどビル経営は苦しくなります。
不動産投資の世界では、自己資金は30%程度用意することが一般的です。
自己資金を用意した上で、さらに貸しやすいビルを企画し、リスクを最小限に抑えるようにしてください。
5. 貸しやすいビル企画
この章では、長期的に空室が発生しにくく貸しやすいビルの企画について解説します。
5-1. 貸室形状
ビルは、設計によって貸室形状が変わります。
貸室形状は、「貸しやすさ」に大きく影響を与えますので、しっかり検討することが重要です。
ビルの基準階は、「専有部分」と「コア(共用部分)」の2つに分かれます。
コアとは、エレベーターやトイレ、給湯室等がある共用部分のことを指します。
専有部分は、テナントに貸し出す部分です。
基準階の企画は、コア配置と専有部分の形状が鍵を握ります。
以下に、オフィスビルの良くあるコア配置の平面図の例を示します。
白抜きの部分がコアで、水色の部分が専有部分です。
オフィスビルで最も貸しやすい理想的な形状は、「長方形型(長辺コア)」になります。
まずは「長方形型(長辺コア)」を目指すようにしてください。
「長方形型(短辺コア)」は、1フロアに2テナントが借りるような場合、専有部分に新たに中廊下を作らなければならず、貸しにくいです。
「L字型」や「コの字型」は、1フロアを見渡せなくなることから、使いにくく、貸しにくくなります。
「コの字型」は大きなビルでない限り登場しませんが、「L字型」は小さなビルで作ってしまいがちです。
「L字型」となってしまう場合には、「長方形型(長辺コア)」に変更できないか再検証するようにしてください。
また、意外と評判が悪いのが「正方形」です。
正方形は、例えば部長が誕生日席で部下が横並びに座るような典型的なレイアウトがしにくく、あまり人気がありません。
NGではないですが、「長方形型(長辺コア)」の方が貸しやくなります。
三角形や台形、湾曲等の「不整形」な貸室形状は避けるべきです。
不整形部分は、テナントにとってデッドスペースとなるため、無駄な賃料を払っていると感じることから貸しにくくなります。
5-2. 無柱空間
貸しやすいオフィスを作るのであれば、無柱空間は必須です。
無柱空間とは、専有部内に柱の無い空間のことを指します。
例えば、下図の左側は無柱空間に該当し、右側は有柱空間となります。
専有部分内に柱があると、それだけでレイアウトの障害となるため、テナントが極端に嫌がります。
個人が建てるビルの場合、専有面積が小さいビルが多いため、自然と無柱空間となっていることが多いです。
ただし、場合によっては専有部内に柱が登場している物件もありますので、無柱空間かどうかは必ずチェックするようにしてください。
5-3. 空調
空調は、個別空調とするようにしてください。
個別空調とは、テナントが自由に空調の入り切りや温度設定ができる空調です。
それに対して、テナントでは制御できない空調のことセントラル空調と呼びます。
セントラル空調は、空調の時間制限が設けられているため、残業や土日出勤が多い会社にとっては不人気です。
古いビルではセントラル空調も多いですが、今どきの新しいビルは個別空調が当たり前になってきています。
空調はテナントが気にする部分ですので、積極的に個別空調を導入するようにしてください。
5-4. 耐震性能
耐震性能もアピールポイントです。
建物の耐震性能には、良い方から順に「免震構造」、「制振構造」、「耐震構造」の3つとなっています。
免震構造は、理想的ではありますが、オフィスビルでの採用は少ないです。
免震構造は建築費が高いだけでなく、建物周囲に揺れを逃がす隙間を作る必要があり、敷地が狭いと専有面積が小さいビルとなってしまうからです。
そのため、免震構造は敷地にかなり余裕のある大型ビルでない限り建てられておらず、マンションのように浸透はしていません。
一方で、ビルでは良い耐震性能として制振構造が採用されていることが多いです。
制振構造は、ビル内に制振ダンパーと呼ばれる揺れを制御する装置を加えると実現できるので、個人向けの規模のビルでも採用できます。
耐震性能をアピールするビルを建てるのであれば、制振構造がおススメです。
また、建築基準法通りに普通に建てれば、建物は耐震構造となります。
制振構造は必須ではないので、建築コストを下げたいという話であれば、耐震構造でも問題ありません。
5-5. エントランス
オフィスビルでは、入居者の印象をアップさせるためにも、エントランスの作り込みが重要です。
建物設計は、「足元が七難隠す」ともいわれています。
エントランスなどの建物の足元部分が立派だと、それだけで「わぁ、すごいビル」という印象を与えることができます。
良いオフィスビルというのは、エントランスの床や壁の仕上げ材が石貼りとなっており、高級感があります。
また、1階部分だけ天井高も高く、広く感じる空間となっています。
エントランスの仕上げ材が高いと思っても、そこを削ってはいけません。
ビルの重要な見せ場ですので、エントランスは高級感のある仕上げにするようにしてください。
5-6. 共用部
近年のオフィスビルは、共用部が充実してきています。
特に、「女子トイレがきれい」というのがポイントは高く、新しいビルほど女性用トイレが充実している傾向にあります。
温水便座やパウダーコーナー、小物入れ、歯磨きボウル等の常設が当たり前になってきています。
オフィスビルでは、テナントの内見に訪れたとき、女子社員もいると、トイレや給湯室もチェックされます。
トイレや給湯室の清潔感が入居の決め手になることもありますので、しっかりと作り込むことをおススメします。
尚、小規模ビルでは、専有部内にトイレや給湯室を設計し、トイレ等も専有面積に含めて貸すパターンがありますが、これはおススメできません。
トイレ等を専有部に含めると、トイレの清掃をテナント側で行う必要もあり、また従業員がトイレに行くところを見られてしまうことから、テナントに非常に不評なビルとなります。
トイレや給湯室は、必ず共用部側に作るようにしてください。
テナントに、子供やお年寄り向けのサービスを展開する企業が考えられるなど、場合によってはバリアフリー仕様の多目的トイレなどの設置もあわせて検討してみるとよいでしょう。
5-7. 喫煙室
これから新築ビルを建てるのであれば、共用部に喫煙室を必ず作るようにしてください。
職場における受動喫煙防止対策は厳しくなる一方ですので、共用部に喫煙室のないビルは、今後ますます競争力が落ちていきます。
共用部の喫煙室は、主にビルの1階の裏口あたりに設置することが多いです。
共用部に喫煙室がない場合、テナントが専有部内にわざわざ喫煙ブースを設けることになります。
喫煙ブースは、空気の流れを常に負圧(吸い込む方向)に保つ必要があり、空調工事も伴うため工事費も高いです。
また、専有部内に作ると、専有部の面積も喫煙ブースの分だけ狭くなります。
そのため、共用部に喫煙室があれば、専有部内に喫煙室を設ける必要もなくなるため、テナントにとってかなりありがたい存在となるのです。
喫煙室は専有部が狭い小規模ビルほど求められますので、必ず作るようにしてください。
5-8. 床荷重
オフィスビルでは、床荷重もテナントが気にする部分になります。
オフィスビルの床荷重は、500kg/平米が一般的です。
専有部分の中には、一般的な500kg/平米の他に、ヘビーデューティーゾーンと呼ばれる重い床荷重に耐えられる部分も設けます。
ヘビーデューティーゾーンがあると、テナントが専有部内に可動式書庫などを作ることができます。
ヘビーデューティーゾーンの床荷重は800~1,000kg/平米あたりです。
小規模ビルの場合、テナントが診療所や歯医者等が入る可能性があります。
診療所等は医療器具を設置する必要があることから、全面床荷重の性能が高いことが求められるケースも多いです。
医療系のテナントが入る可能性が高い場合には、それに耐えうる床荷重で設計するようにしてください。
5-9. 環境対応
ビルの環境対応は、意外にもテナントの評価が高いです。
環境配慮とは、具体的にはLED照明を使ったり、Low-eガラス(断熱性の高い窓ガラスのこと)を用いて空調効率を高めたりすることで、省エネ型のビルとすることを指します。
省エネ型のビルを謳うと、テナントは「付加使用料が安くなる」という期待が高まるため、入居も決まりやすくなります。
環境対応をするのであれば、電気代や空調代を下げる方向の対策をすると、効果は高いです。
同じ環境対応でも、例えば屋上緑化など、テナントの評価が得られない部分もあります。
屋上緑化などは条例で定められている最低限の面積をこなし、後はテナントに対して訴求効果の高い部分にお金をかけるのが環境対応のコツです。
5-10. 建物外観
貸しやすいビルにするには、建物外観も重要となります。
外観については、「立派に見えるビル」というのが理想です。
キンピカのガラス張りビルのような派手なデザインは避け、無難に今流行っているデザインを素直に取り入れることが良い対応となります。
オフィスビルもデザインのトレンドがあり、一般の方でも「なんとなく古臭い」、「新しい感じがする」というのが分かります。
せっかく新しいビルを建てるのに、古臭いと思われるのは、非常にもったいないです。
最近のトレンドを重視し、今っぽさはもちろん、飽きのこないデザインのビルを建てるようにしてください。
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6. 賃貸借契約を締結する上での注意点
この章では賃貸借契約を締結する上での注意点について解説します。
6-1. 借主の工事範囲と内容を定義する
オフィスビルでは、借主の工事範囲と内容を定義しておく必要があります。
オフィスビルは、住宅とは異なり、テナントが専有部分を工事することが通常です。
間仕切り壁を作って会議室を作ったり、内部に受付を作って独自のセキュリティをかけたりします。
このようなテナントによる専有部分の工事を「内装工事」と呼びます。
テナントが内装工事を行った場合、退去時にはそれらの工事はすべて撤去し、原状回復を行います。
専有部分については、内装工事を了承し、原状回復を義務付けるのは当然ですので、そこはあまり悩む必要がありません。
一方で、オフィスビルでは、テナントが借りていない共用部分についてもテナントが工事をしたいという申し出があります。
典型的な例が、共用部分の入り口脇に「独自の看板を出したい」という申出です。
共用部分は、本来、テナントに貸している部分ではないため、テナントに工事をできる権利がありません。
オーナーが特別に許可することになりますが、許可すべきかどうかはオーナーに判断が求められます。
共用部分の工事ですので、1社を認めてしまうと、他社からもやりたいという申出も出てきます。
中には、ビルの風紀を乱すようなド派手な看板を出したがるテナントもいます。
一方で、全て禁止にしてしまうのも、柔軟性に欠ける対応です。
どこまでを許容し、どこからは禁止とするか、ある程度決めておくようにしてください。
6-2. 転貸または同居を禁止する
オフィスビルの賃貸借契約書では、転貸または同居を禁止する条項を設けることが基本です。
同居とは弱い権利の専有者のことを指します。
オフィスビルでは、A社に貸しても、A社の関連会社であるB社も入居してくることがあります。
仮に、A社が勝手にB社と転貸借契約を締結してしまうと、後から問題が生じます。
賃貸人 (建物オーナー)とA社(賃借人)、B社(転借人)がいる関係では、賃貸人と賃借人の賃貸借契約を解除しても、転借人は残ります。
将来、建物オーナーがA社を立退かせたいと思っても、A社を立退かせても、次にB社も立退かせなければならないといった問題が生じます。
立ち退きが二重になり、立ち退き料も2社分発生してしまうことから、転貸を認めるということはオーナーにとってリスクがあることなのです。
関連会社と一緒に働きたいのであれば、関連会社に別のフロアを直接借りてもらうことが基本となります。
テナントと契約する際は、賃貸借契約書の中に、転貸または同居を禁止する条項が入っているかどうかを必ず確認するようにしてください。
6-3. 店舗の場合は定期借家契約を締結する
オフィスビルには、事務所だけでなく店舗も入居してくることがあります。
コンビニや飲食店、美容院だけでなく、塾や歯医者といった業種も、広い意味で店舗です。
このような店舗と賃貸借契約を締結する場合には、定期借家契約を利用することおススメします。
定期借家契約とは、更新規定のない契約であり、契約終了時に確実にテナントを退去させることができる契約です。
それに対して、更新規定があり、立ち退きに対してオーナーに立ち退き料が発生してしまう契約のことを普通借家契約と呼びます。
店舗の場合、立ち退き料の中に営業補償が含まれることから、立ち退き料が莫大な金額となります。
住宅や事務所の立ち退き料には、営業補償が含まれないため、立ち退き料が法外なものにはなりませんが、店舗の立ち退き料は非常に高いという性質があります。
そのため、近年の新築ビルでは、店舗部分に関しては定期借家契約が利用されていることが多いです。
店舗に関しては、定期借家契約が浸透してきたことから、定期借家契約を選択しても相場で貸すことができます。
尚、事務所用途部分については、まだまだ普通借家契約が主流です。
事務所部分を定期借家契約にしてしまうと、テナントに著しく不利な印象を与えてしまうため、賃料を相場より安くしないと貸せないようになってしまいます。
事務所用途部分については、普通借家契約で締結することをおススメします。
まとめ
いかがでしたか。
ビル経営について解説してきました。
ビル経営は、「相続対策となる」、「収入が大きい」といったメリットがあります。
土地活用でビル経営を始めるのであれば、まずは「HOME4U 土地活用」でプラン提案を受けることが第一歩です。
ただし、ビル経営は立地が少しでも悪くなると上手くいかなくなるため、ビルを計画する際は必ず賃貸マンションやビジネスホテルとも比較した上で決定することをおススメします。
長期的に稼ぎ続けるビルを建てるには、貸しやすいビル企画とすることが重要です。
5章で紹介した、貸室形状から建物外観までの10個のポイントについては必ず検討し、ビル経営を成功に導いてください。
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