アパートの建て替えを行う際など貸主の都合で、入居者に退去してほしいことがあります。
こうした状況では事前に立ち退きの交渉が必要となり、ほとんどの場合で立ち退き料を払わなければいけません。
この記事では、アパート建て替えに伴う立ち退き交渉について解説します。また、立ち退き料の根拠や具体的な支払い額の相場などもご紹介します。
また、立ち退き交渉を伴うアパートの建て替えについては、プロに相談するとスムーズです。以下のボタンから、最大10社の専門企業のアパート建て替えプランを取り寄せられます。ぜひご活用ください。
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アパート建て替えには立ち退き料が必要
アパートの入居者に立ち退きをしてもらうには、まず賃貸借契約を解約しなければいけません。
ただし、借地借家法により、賃貸人が賃貸借契約の解約を申し入れるには、正当事由が必要であると定められています。
解約を申し入れるに足りる正当事由がない場合は、立ち退き料でその分を補い、解決を図ります。
次章で詳しく解説しますが、立ち退きは裁判に発展しない限り、賃貸人と賃借人の間での交渉で成り立つものです。そのため、立ち退き料も当事者間の事情により異なります。
以下では、「正当事由とは何か」「建て替えが正当事由にはならない」という2点について解説します。
1-1.正当事由でなければ立ち退き料は必須
賃貸人の意思により賃貸借契約の解除を行うには、正当事由が必要です。
ここでいう正当事由とは「契約を解除するにふさわしい事実」を指します。
例えば、アパートの建物の老朽化がひどくて自然災害による倒壊のリスクが高い場合は、その修繕や立て直しが正当事由と認められるケースがあります。
しかし、正当事由に足りる契約解除の理由がない場合は、十分な立ち退き料を支払うことで補います。
なお、正当事由であるかどうかの判断は裁判によって決まりますが、通常は裁判にまで発展させず、賃貸人と賃借人の間で交渉して解決します。その際、相場に見合った立ち退き料を交渉の材料としながら話を進めます。
1-2.単なる建て替えでは正当事由にならない
立ち退きをお願いする場合、アパートの「建て替え」だけでは十分な正当事由とみなされないことがほとんどです。
建て替えは、賃貸人の利益に直結することであり、賃借人側から見てまったく「契約を解除するにふさわしい事実」とはいえません。
安全性を確保するための緊急度の高い建て替えでなければ、賃借人に立ち退きを納得してもらうことは難しいでしょう。そのため、立ち退き料という名目の金銭で交渉を進めるほかありません。
1-3.立ち退き料が不要なケース
ただし、アパートの建て替えが正当事由として認められる場合は、立ち退き料を支払う必要はありません。
賃借人との交渉の段階で立ち退き料を要求される可能性もありますが、裁判で正当事由が認められれば、支払わずに契約解除ができます。
以下は、立ち退き料が不要となる例です。
- 老朽化による倒壊や健康被害のリスクがあり、緊急で建て替えが必要な場合
- 定期借家契約での契約期間満了した時
- 賃借人が契約違反を起こしている場合
2.建て替え時での立ち退き料の相場
居住用の賃貸アパートにかかる立ち退き料の相場は、賃借人の家賃の6ヶ月分+引っ越し費用です。これは多くの裁判の判例によるものです。
例えば、「家賃8万円」「引っ越し費用20万円」の住居では、立ち退き料相場は68万円となります。
ただし、法律で立ち退き料が定められているわけではない点に注意しましょう。
立ち退き料については、以下の記事でも詳しく解説しているのでご参照ください。
3.妥当な立ち退き料の決め方
立ち退き費用が高額になるのは、賃借人の転居に伴い費用がかかることと、迷惑料的な意味合いがあるためです。
ただし、立ち退き料はあくまでも交渉の材料であり、賃貸人・賃借人双方の事情によって金額は上下します。
立ち退き料を決める際はまず相場価格(賃借人の家賃の6ヶ月分+引っ越し費用)を計算してから、適宜上下させるように考えていきましょう。
以下の項目に合わせて、妥当な立ち退き料を検討すると良いでしょう。
- 転居先の家賃との差額を補償する
- 正当事由に近い立ち退きを要求する
- 賃借人の精神的・肉体的な負担に配慮する
- できるだけ早い時期の立ち退き交渉する
3-1. 転居先の家賃との差額を補償する
賃借人の転居にかかる初期費用や今後の固定費は、転居先の家賃を基に決まることが多いため、立ち退き料も家賃の差額を必ず考慮しなければなりません。
立ち退き料の相場は「賃借人の家賃の6ヶ月分+引っ越し費用」ですが、この家賃というのは転居先の家賃で考えます。
その上で、現在の家賃と転居先の家賃の差額を補償として立ち退き料に加える「賃料差額補償」を行います。
転居先の家賃は、賃借人の契約時まで判明しないため、事前に候補となるような条件の近い物件の家賃を参考にします。
複数の候補物件を調べ、その平均額を転居先の家賃として考えます。
また、家賃の差額は今後数年の生活に関係するので、差額保証は1~3年の期間で考えるのが一般的です。
例えば、現在の家賃が8万円、規模や立地、築年数などの条件の近い物件の家賃が9万円の場合は、差額が1万円あります。
加えて、時期と規模感に応じた引っ越し費用が20万円である場合は、立ち退き料の相場は以下の通りとなります。
8万円 × 6 + 20万円(引っ越し費用) = 68万円
1万円(賃料差額)× 12~36(補償期間) =12万~36万円
立ち退き料 = 80万円~104万円
3-2. 正当事由に近い立ち退きを要求する
立ち退きを要求する理由が、借地借家法で認められる正当事由に該当する場合は、そもそも立ち退き料は必要ありません。
ただし、建て替えに伴う立ち退きで正当事由が認められるケースはほとんどありません。
とはいえ、立ち退き要求の理由が正当事由に近いほど、相場より安い立ち退き料で交渉しやすくなりますし、裁判に発展しても有利です。
例えば、直近の自然災害で安全性に問題があると露呈した場合は、建て替えに伴う立ち退きも正当自由に近くなります。
反対に、収益性を高めるための建て替えは正当自由にほど遠く、交渉は難航し、立ち退き料の相場も上がる傾向にあります。
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3-3.賃借人の精神的・肉体的な負担に配慮する
転居に伴って、賃借人の精神的・肉体的な負担がどれほどなのかも、立ち退き料の計算には重要です。立ち退き料には、慰謝料や迷惑料的な意味合いがあるためです。
賃借人の負担が重くなる状況であれば、その分、割高な金額を提示しないと交渉にならない場合もあります。
例えば、賃借人や賃借人の家族で高齢者や病気を患っている方がいる場合、健康な方より転居は大変になります。
また、転居による環境の変化が心身にストレスを与える可能性もあります。
このような転居に伴う賃借人の負担に対して、補償という形で相場の立ち退き料に上乗せすると同意を得やすくなります。
3-4.できるだけ早い時期に立ち退き交渉する
立ち退きを交渉する時期が早ければ早いほど、賃借人の負担は減るため、相場よりも安い立ち退き料で納得してもらえる場合もあります。
一方で、交渉の時期が遅く、すぐにでも退去してほしいような状況では、割高の立ち退き料でないと同意を得られない可能性が高くなります。
なお、借地借家法では立ち退きの請求をする場合、契約期間満了の1年~半年前に行うことが原則とされています。
立ち退き要求のタイミングが半年違うだけでも、賃借人からすると負担の度合がまったく異なります。
仕事の都合や転居先の有無など、賃借人のさまざまなな事情を考慮して、立ち退きが現実的でないと考えられれば、立ち退きを拒絶される可能性もあります。
4.立ち退き・建て替えまでの流れ
では、立ち退きの交渉をしてアパートを建て替えるまでに、どのような手順で進めていけばいいでしょうか。
立ち退き・建て替えの流れを、以下の項目に分けて解説します。
なお、建て替えをする時期をいつにしたら良いかについては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご参考ください。
4-1.建て替え計画を立てる
立ち退き交渉をする前に、まず「なぜ建て替えるのか?」という目的を明確化することが重要です。賃借人と立ち退き交渉するときには、建て替え理由に納得できるかどうかによってやりとりの難易度が変化します。
建て替えの目的を確認した上で、具体的な建て替えの計画を立てます。新規募集の停止や立ち退き交渉を考えると、遅くても2~3年前には建て替え計画を立てられると安心です。
建て替え前・建て替え後の収支のシミュレーションと、建て替え工事までのスケジュールを練りましょう。
また、立ち退き料の予算も決めます。立ち退き料は状況により変化しますが、予算決めをするときは正当事由の正当性に重きをおいて考えてみて下さい。
耐震の問題など立ち退きに正当事由があれば、立ち退き料も高くならずに済む場合があったり、賃借人も納得しやすかったりします。逆に正当事由に欠ける場合は高額になる可能性もあるので、予算の計画が必要になります。
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4-2.入居者の募集を止める
建て替えの計画が決まったら、新規での入居者の募集を止めます。
また、立ち退きの予定期日まで期間が長くある場合は、定期借家契約で入居者を募るようにしましょう。
定期借家契約であれば、1年未満の契約も結べる上に契約更新もしなくて済むため、立ち退き料が余分にかかることがありません。
4-3.立ち退き交渉を始める
立ち退き要求は、賃貸借契約更新の6~12ヶ月前までに行わなければいけません。
更新までの期間が差し迫るほど、高い立ち退き料を必要とする場合が多いため、できるだけ早く立ち退きの交渉を進めていきましょう。
立ち退き交渉の段取りは、以下の3ステップです。
4-3-1.私書の作成
「立ち退き理由」「立ち退き時期」「立ち退き料」などを明記した覚書などの私書を作成し、賃借人に対して送付します。
送付方法には、郵送またはメールという手段も取れますが、一方的な印象が強いため、反発を持たれる恐れがあります。そのため、賃借人に直接持って行くのがベストです。その時点で賃借人が内容に納得すれば、スムーズに立ち退きが完了できます。
私書を送る時点からコンサルティング会社や弁護士に相談することもできますが、もしも送った後の賃借人の反応によって依頼するかどうかを決めたい場合は、交渉の記録は必ず残しておいてください。相談する際に必要な資料となります。
送付する場合は内容証明郵便が良いですが、少なくとも配達証明付きの郵便にはしておきましょう。賃借人と話しあったのであれば、その議事録を作成し、保管しておいてください。
4-3-2.立ち退き交渉
私書で納得を得られない場合には、立ち退き料の金額や立ち退きの時期について、交渉することになります。
賃借人は、立ち退きによって住む場所を追われます。事情を充分にくみ取り、賃借人の要望に最大限応えることが立ち退き交渉には必要です。
4-3-3.引っ越し先の選定
こちらは必ずしも必須の段取りではありませんが、立ち退き交渉が難航した場合などには、近隣にある家賃が現在より安い物件を紹介したりすることで応諾してもらえる場合もあります。
上記が立ち退きに関する一連の段取りですが、解決しない場合には裁判に持ち込まれることになります。その場合は一般的に、弁護士に相談するという流れになります。
4-4.建て替え関連の契約を進める
立ち退きが完了し次第、すぐに解体工事と建築工事が進められるよう、もろもろの契約を進めていきましょう。
設計事務所と結ぶ「設計管理契約」や、「解体工事」と「建築工事」の契約、「ローンの契約」などが必要です。
解体工事と建築工事は、別々の業者に依頼することもできますが、同じ業者にまとめると、連携がとれるためスムーズな工事が期待できます。
4-5.立ち退き期日を迎える
立ち退きの期日通りに退去いただけるよう善処しましょう。
賃借人全員が立ち退きの交渉に応じて、すんなり退去してくれるとは限りません。
期日を迎えるまでの間、粘り強い交渉が大切です。
立ち退きの期日までに退去いただけない場合は、訴訟を起こし、裁判にて立ち退きを要求するという流れになります。
4-6.解体工事の着工
賃借人の立ち退きが完了し次第、解体工事の着工となります。
スムーズに工事が始められるよう、事前に手続きや契約を不足なく済ませておきましょう。
なお、アパートの解体工事は2週間程かかります。規模や構造によっては1ヶ月近くかかる場合もあります。
なお、建築工事は一般的に「階数+1ヶ月」はかかるといわれています。
3階建てアパートであれば、4ヶ月が目安になります。
5.【事例別】立ち退き交渉術
立ち退き交渉は、難航すると最終的には裁判で争われることになります。裁判は借地借家法にのっとって行われるので、賃貸人の立場は弱くなり、正当事由の認められない場合が非常に多くあります。
ここでは実際にいくつかの事例を紹介し、裁判に持ち込まずに済む交渉術をご紹介します。
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5-1.耐震性に問題がある場合
アパート建物の老朽化による耐震性の悪化のために、賃借人に退去を求める事例です。
耐震性の悪化による退去要請は、基本的に正当事由として見なされにくい傾向にあります。
専門家に耐震検査を依頼して、「大地震による倒壊の恐れあり」という結果が出たとしても、その発生の確率を考えた場合に、賃借人の不都合をおしてまで早急に立ち退かせる必要のある事項にはなりにくいからです。
・交渉術
このような場合、補修工事で済ますとするならば、どのくらい費用がかかるかという見積もりをとってみると良いでしょう。補修工事で済みそうであれば、そもそも立ち退きを求めて建て替える必要はありません。また、結果的に建て替えた方が費用もかなり安く済む場合には、正当事由として認められる可能性があり、賃借人の同意も得られるでしょう。
ただし、その場合も立ち退き料は必要となることがほとんどです。
なお、アパートを建て替える時期や限界の築年数については、以下の記事で解説しています。併せてご参考ください。
5-2.賃借人の引っ越しが容易でない場合
賃貸物件の建て替えにおいて、借主自身が病気を患っていたり、一緒に住んでいる家族の人数が多かったりする場合があります。このようなケースでは、健康な賃借人や一人暮らしの入居者よりも、引っ越しは容易でないことが想像できます。
・交渉術
対策としては、住み慣れた土地を離れなければいけない精神的負荷を考えて、借主のストレスを軽減するような方法を考えましょう。具体的には、近くの引っ越し先を紹介したり、退去費用を上乗せしたりなどの配慮が必要です。
それでも難航する場合には、建物の耐久性を考慮するなど、他の要素も含めて考えてみると、突破口が見つかるかもしれません。
5-3.賃貸人が収益アップを図りたい場合
アパートを建て替えることによって、現段階よりも収益性をアップさせられる希望があり、そのために立ち退きをお願いし、賃借人を納得させなければならない場合です。
・交渉術
このような場合は、アパートの建て替えによって実際どのくらいの利益が見込めるのか、現状どのくらい経営が逼迫しているのかといったことを、賃借人に包み隠さず説明をすると良いでしょう。
それでも納得してもらえない場合には、立ち退き料を上げて応諾してもらうなどの手段を取ります。
5-4.頑固に立ち退きに応じてくれない入居者の場合
立ち退き交渉を重ねても、頑固で応じてくれない入居者がいるという事例です。
・交渉術
この場合、さらに粘り強い交渉が必要となります。どのような事情があって応じられないのかを当人に詳しく聞き、立ち退き料の条件を変更するといった手段を取ることで、応じてもらえる可能性があります。
それでも応諾してもらえなければ、弁護士を立てるという手段もあります。
5-5.入居者に迷惑行為があった場合
過去に特定の入居者に何らかの不品行や迷惑行為があり、そのため立ち退き料を払うべきかどうか悩んでいるというような事例です。
・交渉術
この場合、その入居者が迷惑行為をしたという確かな証拠を集めましょう。まずは賃借契約書の項目に違反していないかを確かめます。また、近隣住民から苦情が出ているならば、それを書面に起こします。騒音の問題があれば、録音するなどの記録に残しておきます。
証拠を掲げた上で本人と話し合いをし、それでも応諾してもらえないようであれば、立ち退き料を支払うことで迅速に解決できる場合があります。あまりにも話し合いが停滞する場合は、弁護士を立てるのも一つの手です。
5-6.貸借人が物件をほとんど使用していなかった場合
賃借人が長期出張などの理由から遠地で生活していたものの、期間が終わったので、ほとんど使用していなかった賃貸物件に戻って生活したいという事例です。
・交渉術
この場合は、オーナー都合での立ち退きとなるので、話し合いと立ち退き料の支払いは必須となります。
どういう必要があって立ち退いて欲しいのかを丁寧に説明し、借主の事情を考慮した上で、立ち退き料を調整するなどして、お互い歩み寄った話し合いが必要でしょう。
ただし、借主の方が建物をほとんど使っていなかった場合、立ち退き料の高額化は免れる可能性があります。
6.立ち退き料を安くする10のポイント
立ち退き料を安くするために、注意したい事柄があります。以下の10のポイントです。
- 入居者数が少なくなってから着手する
- 定期借家契約への切り替えを打診する
- 代替物件を提供する
- 用法違反の解除事由がないか確認する
- 最初から誠意をもって立ち退き交渉する
- 原状回復費用を免除する
- 敷金を先に返済する
- 退去までの賃料を免除する
- 再入居を確約する
- 裁判は避ける
6-1.入居者数が少なくなってから着手する
建て替えの計画が決まったら新規の入居者募集を止め、自然な退去によって空室が7~8割程度となったところで立ち退きに着手すると良いでしょう。
交渉の手間も立ち退き料も少なくすることができます。
6-2.定期借家契約への切り替えを打診する
定期借家契約であれば、期間満了時に賃貸借契約が終了します。
一般的な普通借家契約を定期借家契約に切り替えれば、契約期間満了時に借主が必ず出ていかなければならないので、立ち退き料は発生しないことになります。
アパートの場合、2000年3月1日以降に締結された賃貸借契約であれば、借主と貸主の合意のもと、普通借家契約から定期借家契約に切り替えることが可能です。
逆に、2000年3月1日より前に締結された賃貸借契約は定期借家契約には切り替えることができないとされています。
ただし、定期借家契約への切り替えは、体の良い立ち退きに過ぎないため、借主へ相応のメリットを与えることが必要となります。多くの場合、家賃を50%~80%程度に下げて応諾してもらうことになります。
賃料の減額幅には定まったルールはありませんが、定期借家契約の期間を短くするほど賃料を大きく下げるのが一般的です。後にご説明する退去時の原状回復はすべて免除し、なおかつ敷金も全額返すといったオプションもつけると、話が通りやすくなります。
6-3.代替物件を提供する
立ち退きの引っ越しで必要となる代替物件を提供することで、立ち退き料を安くすることもできます。
例えば、近くにもう1棟の賃貸アパートを経営している場合、そのアパートに優先的に入居させることで立ち退き料を大幅に削減することができます。
6-4.用法違反の解除事由がないか確認する
用法違反などの解除事由が発生していれば、契約解除をすることができるので、立ち退き料が不要となります。
例えば、禁煙物件なのに喫煙していたり、住宅以外での使用は不可としているのに店舗として利用していたりといった事実がある場合は用法違反です。
ただし、その場合は一般的に貸主との間で信頼関係が修復不可能なほど破壊されている状態でなければ、解除事由として認められません。
また、ペット不可の物件で熱帯魚を飼っているケースなど、厳密にいえば違反ではあるものの、建物を汚損するほどのものではなく、近隣へも迷惑をかけていないような場合には解除事由として認められません。
用法違反で契約解除をする場合は、事前に弁護士に契約解除できそうかどうかを確認した上で打診するようにしてください。
6-5.最初から誠意をもって立ち退き交渉する
立ち退き交渉で失敗するのは、書面やメール、電話などの一方的な通知で終わらせようとする場合がほとんどです。書面やメールは、相手の言い分を聞かないといった印象を与えるため、憤りを感じさせてしまうことがよくあります。
交渉を上手く成功させるコツは、借主に誠意をもって直接会いに行き、面と向かって立ち退きをお願いすることです。その際、立ち退き料については引っ越し代程度なら考えていることをハッキリ伝えるようにしてください。1円も払わないような姿勢で臨むと、相手の態度も硬化するので、はじめから誠意ある態度で臨み、立ち退きを軟着陸させていくようにします。
なお、立ち退き交渉に関しては、弁護士以外の第三者に依頼することはできませんので、注意して下さい。
6-6.原状回復費用を免除する
通常、借主は退去時に原状回復の義務が課せられています。
しかし、建て替えを予定しているアパート建物であれば、原状回復はしなくても構わないので費用を免除し、立ち退き料と相殺することも提案できます。
借主も負担を軽くすることができるため、立ち退きを応諾しやすくなります。
6-7.敷金を先に返済する
敷金は本来、家賃の不払いや原状回復の費用に充当するため、借主から預かっているものです。
しかし、建て替えをするのであれば、そうした費用に充当する必要もなくなります。
借主へ先に敷金を返済すれば、立ち退き料も抑えられます。
6-8.退去までの賃料を免除する
定期借家への切り替えではなく、無償の使用貸借に切り替えるという方法です。つまり、立ち退きで退去するまでの賃料を免除する代わりに、立ち退き料も支払わなくて済むようにします。
この場合は、いったん現在の普通借家契約を合意の上で解除し、新たに使用貸借契約を締結することになります。
6-9.再入居を確約する
新しく建て替えたアパート物件に、元の住人を優先的に再入居させると確約することで、立ち退き料を抑える方法です。
借主には、住み慣れた土地を離れなければならない精神的な負担を減らしてあげることができるので、応諾してもらいやすいでしょう。
6-10.裁判は避ける
立ち退きにどうしても応じてもらえない場合は、最終的に訴訟を起こし、裁判で争うこととなります。
立ち退きを要求する理由と立ち退き料を合わせて、正当事由が認められれば強制執行ができますが、立ち退き請求が棄却される場合もあります。
立ち退きは、裁判までもつれてしまうと貸主の立場が非常に弱くなってしまいます。
司法の判断は、あくまでも借地借家法の法律に基づいて行われます。借主の権利を強力に守るための法律なので、借主の言い分が認められやすくなります。
また、立ち退き料は、借主が主張する金額に寄せられてしまうため、元の設定よりも高くなってしまう場合もあります。
そのため、できるだけ裁判は避け、あくまでも任意の話し合いで解決することが立ち退き料を安く抑える秘訣です。賃貸人としては、できるだけ穏便かつスムーズに立ち退いてもらえるようにするのが理想的です。代替物件を探したり、引っ越しに関係する業者の手配をしたりなど、立ち退きの負担を感じないような提案を考えましょう。
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7.立ち退き交渉に悩んだ時の相談先
アパート建て替えの立ち退きでは、たとえ正当事由があっても賃借人がスムーズに退去してくれない場合、交渉が必要になります。
非常に手間がかかり、問題の発生率も高いので、私書で立ち退きを通知し、交渉を受けた時点で、実行は専門家に任せることをおすすめします。
7-1. 弁護士
立ち退きでは、弁護士を通した交渉も効果的です。
弁護士が介入することで、賃借人側は感情面を切り離して、法律や判例に基づいた妥協点をイメージしやすくなります。
立ち退き交渉は、弁護士法第72条により禁止される法律事件に該当するため、第三者が報酬を受け取って立ち退き交渉をすることは非弁行為に値します。
そのため、立ち退き交渉を直接行えるのは、弁護士か貸主本人だけです。
弁護士に立ち退きを依頼すれば、立ち退きに関するすべての業務を行ってくれます。
ただし、費用は高額になります。弁護士事務所によりますが、着手金と報酬がそれぞれ数十万円ずつなどとなり、合計100万円を超えてしまうことも少なくありません。
7-2. 不動産会社・建築会社など
不動産関係や建築関係の会社に、立ち退き相談を依頼することもできます。
交渉は弁護士か貸主本人しかできないので、依頼した場合は不動産会社・建築会社などが立ち退き交渉の進め方や交渉の仕方などをアドバイスし、貸主本人が主導で行うことになります。
物件・貸主ごとに立ち退き戦略を立案し、賃借人の転居先を探すなども行ってくれます。
費用は会社によって異なりますが、一例としては成功報酬として1案件10万円ほどです。
8.立ち退き交渉を依頼できる建築会社の選び方
立ち退き交渉を不動産会社・建築会社に依頼する場合、選ぶの基準は以下の通りです。
- 建て替えや立ち退き交渉に経験豊富な会社である。
- 立ち退き料に関する相談を受けたことがある。
- 度重なる相談に親身に対応してくれる担当者がいる。
8-1. 建て替えや立ち退き交渉に経験豊富な会社である
さまざまな条件の下でアパートの建て替えを経験してきた実績のある会社であれば、立ち退き交渉の相談にも乗ってくれ、心強いでしょう。
実際に発生したトラブル事例などについても聞いておけば、参考になり、同じことが起こらないように対策するのにも役立ちます。
8-2.立ち退き料に関する相談を受けたことがある
不動産会社・建築会社には、アパートの建て替えや立ち退きに関するアドバイスを行っている企業も存在します。
立ち退き料についても相談を受けた経験があれば、いざ立ち退き交渉時に臨む際にも安心して相談できます。
8-3.度重なる相談に親身に対応してくれる担当者がいる
アパートの建て替えでは、相談すべきことが数多く発生します。度重なる相談でも親身になって対応してくれる、人間力のある担当者がいる会社を選ぶと良いでしょう。
上記の条件を満たす企業を探すには、アパート建て替えの一括プラン請求サービスの活用が便利です。
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この記事のポイント まとめ
アパート建て替えの立ち退き料はいくら?
アパート建築建て替えの立ち退き料は、以下が相場です。
家賃が8万円で引っ越し費用が20万円かかるとすると68万円がかかる計算です。詳しくは「建て替え時での立ち退き料の相場」でご確認ください。
アパートの立ち退き・建て替えまでの流れは?
アパート建て替えに伴う立ち退きの流れは以下のとおりです。
- 建て替え計画を立てる
- 入居者の募集を止める
- 立ち退き交渉を始める
- 建て替え関連の契約を進める
- 立ち退き期日を迎える
- 解体工事の着工
立ち退き交渉は慎重かつ丁寧に進めましょう。詳細は「立ち退き・建て替えまでの流れ」をご一読ください。
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