この記事の執筆者
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藤井 健太郎
所属 株式会社UN 代表取締役
職業
祖父母の代からの三代目大家。
14棟200戸を自主管理と委託管理で運営し、自ら原状回復工事やリフォームも行う。
数年前より物件分析、市場分析、月次、年次分析などを取り入れた賃貸経営にシフトし、キャッシュフローが改善し現在に至る。
一般的に築30年を経過した不動産は「築古物件」と呼ばれます。
築20年を経過すると徐々に設備の劣化や収益性の低下が始まり、築30年超では、収益の低下に加え、建物維持管理コストが増加していきます。築40年にもなると、将来的な建て替えも検討せねばなりません。さらに、1981年5月31日以前の旧耐震基準の建物は「出口計画」を考える必要も出てきますね。
このように、自主管理の場合は物件の築年数が古くなると大家さんが検討することは多岐にわたります。
私はこれまで、築40~55年の築古物件4棟を、高い入居率で運営してきました。大規模なリノベーションや修繕に費用をかけなくても、です。
築40年以上の築古物件の空室を改善してきた経験から、リフォームやリノベーション工事のような高額な費用を掛けなくてもできる築古物件の空室対策を紹介します。
(1)まずは空室の募集確認です。
空室が掲載されてない、物件写真が全然載ってないこともあるのでスーモやホームズなどの募集サイトでちゃんと募集されているか確認をします。
意外と空室が決まらないのは築古だからではなく、そもそも掲載がなく募集されていないのが原因だったりします。
(2)築古物件こそ物件写真は重要です。
募集サイトで所有されている物件を検索し、外観写真が明るく天気良い日に撮影されているかチェックしましょう。掲載写真を撮り直して、築古に見えないような外観写真や明るく広く見える室内写真にしただけで仲介店からの問い合わせが増えた事例もあります。
(3)物件の特徴をPRする際になかなか物件のPRポイントが見当たらないこともあります。
その場合は周辺の生活利便性(駅までの距離、スーパーや病院などのアクセス)をアピールするのも効果的です。
住居での募集では決まらなかった部屋でも事務所や店舗利用を可能にして募集することで決まることがあります。
たとえば、
・2LDK(60㎡):士業の方の事務所
・2LD(40㎡):建設業の事務所
・1R(17㎡):人材派遣業の支店など
築古物件の様々な間取りや広さでも事業用契約の実績が多くあります。また、2DK(36㎡)の部屋で倉庫や物置として利用していただいている方や会社もいらっしゃいます。
これらは事務所利用を可にするだけなので費用や手間は特段掛かりません。
スーモやホームズなどの募集サイトで「ペット飼育可」にチェックをすると物件の掲載数(競合物件)は大幅に減少します。
犬の飼育はOKだが、ネコの飼育はNGの物件も多いので、ネコの飼育可にすればさらに物件の優位性は高くなります。
事例として、駅徒歩22分程の立地の悪い物件でも、ペット飼育&ネコOK物件なので、空室時の問い合わせは非常に多いです。また、2頭飼育などの多頭飼育の需要も多いです。
ペット飼育可のメリットとしては、賃料を5,000円値上げ、敷金2~3か月(償却100%)など、募集条件も変更することができ、収益のアップも狙うことができます。
ただし、ペット飼育可でない物件から変更する際は、他の部屋の既存入居者から同意をもらう必要があるのでご注意を。
外国人は入居審査のハードルが高いため、部屋探しに難航します。
そのため一度入居した外国人は、単身の日本人よりも長く住む場合もあります。
私はこれまで10か国ほどの外国人に部屋を貸してきましたが、彼らは築年数を気にしない傾向があるので築古物件に抵抗がありません。
さらに、築40年を超える物件のお風呂の設備はバランス釜でありますが、給湯器に改修することなく外国人に使ってもらっています。外国の方は風呂釜に入る習慣がないので、バランス釜のままでも部屋探しの際のマイナスポイントになりにくいのです。外国の方でもバランス釜の使用方法を教えれば問題なく使用していただいています。
ゴミ出しを懸念される大家さんも多いですが、自治体に英語や中国語、韓国語、スペイン語など多くの言語でゴミ出しの仕方の案内が用意されているのでそれでゴミ出しのルールを案内しています。
私の経験上、外国人は日本人よりもクレームが少ないので、自主管理でも十分に対応可能です。
また、外国人対応の保証会社がほとんどであり、家賃滞納や夜逃げなどの対応もカバーできます。
滞納リスクや孤独死リスクを理由として65歳以上になると入居を断れるケースが多くなり、特に70歳以上になると部屋探しに難航します。
これまでの実績では、70歳以上の入居者の平均入居期間は6年以上と、他の世代に比べて長いです。それは引っ越しするには体力やお金も使いますし、なによりお部屋探しのハードルが上がるからです。また、一階のお部屋は、一般的に人気が低いですが、高齢者の方にとっては、階段の上り下りの負担が少なく、安心して暮らせるため、空室対策に繋がります。
もちろん滞納リスクや孤独死リスクはありますが、孤独死保険や保証会社で孤独に対応するプランもあるのでそれらで対応しています。
また、高齢の入居者さんとはなるべくコミュニケーションをとるように心掛けています。お話をすることで体調の変化やご家族の状況などを把握することができるので、共用部の掃除や定期巡回で物件に立ち寄る際は、部屋への訪問や積極的に声を掛けして世間話などをするようにしています。
緊急時の対応や、地域の医療機関との連携など、付加価値の高いサービスを提供することができればより競合物件との差別化を図ることができると思います。
「家賃」は、賃貸住宅を選ぶ際に、最も重視される要素の一つです。
特に、築年数については、家賃を抑えられるのであれば、ある程度妥協する方が多いのが現状です。
一方で、「最寄り駅までのアクセス」「利用する路線・駅」「通勤・通学時間」といった立地条件へのこだわりは依然として強い傾向です。
名古屋市の人気学区築50年の2DK物件があるのですが、そこは設備が古くても、縁がありその地域に暮らしたい方や家族が近くに住んでいるといった理由で、成約に至っています。
築古物件だからといって諦める必要はありません。リノベーションや大規模修繕といった大掛かりな工事だけでなく、入居者ターゲットの拡大や募集条件の変更、周辺環境の活用など、費用をかけずにできる対策も数多くあります。
近年は、新築や築浅物件であっても、必ずしも入居が決まるわけではありません。大切なのは、ご自身の物件があるエリアの特徴や、入居者のニーズを深く理解することです。
入念なリサーチに基づいた、効果的な築古対策を実行することで、築古物件を魅力的なものに生まれ変わらせることが可能です。
ぜひ、上記で挙げられた対策に加え、費用をかけずにできる築古物件の対策を検討してみてください。
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