親からアパート経営を引き継ぐことになったら?やるべき事と判断基準
相続税対策として、保有している土地にアパートなどの賃貸物件を建築することは、よくある土地活用方法と言えます。
しかし、子世代の方は、ある日突然親が建築したアパートの経営を引き継ぐことになれば、困惑することでしょう。また、生前に受け継ぐのと、相続でいきなり継ぐのとでは、使える制度以外にも、気持ちの上での準備にも大いに違いがあります。
この記事を読むと、
- アパートの引き継は事前にフローや注意点、タイミングを確認する必要がある
- 引き継いだ後は、そのまま経営する・建て替え・売却などさまざまな選択肢がある
- スムーズに経営するには不動産パートナーが重要
といったことがわかります。
なお、アパート経営を引き継いだあと、建て替えや別の土地活用など幅広い選択肢から検討したい方は、下のフォームからご自身の土地に合った経営プランの一括請求をすることもできます。ぜひご利用ください。
この記事の内容
1.アパートを引き継ぐ4つのパターン
アパート経営を引き継ぐ場合、よくあるのは以下の4つのパターンになります。
ご自身に当てはまる、または将来当てはまる可能性があるところを重点的に確認してください。
- 相続
- 生前贈与
- 家族信託
- 事業継承
1-1.相続
相続によって、親世代から子世代へとアパート建物・土地を含めて受け継がれていきます。4タイプの中で、最も良くあるタイプのアパート経営の引継ぎ方法です。
親世代が、将来の相続などを想定して、節税対策として、早くからアパート経営をスタートしているケースもあります。相続に関して、親子間できちんとした話し合いがされていた場合は、引き継ぎもスムーズにいきます。
しかし、事前に何も知らされていなかった場合には、相続が起きてからはじめて、ご自分がアパートを引き継ぐ可能性があることを知らされる場合もあります。
アパートの引継ぎは、遺言書にあるとおりに進めるか、または法定相続人による話し合い(遺産分割協議)によって次の世代へと引き継ぎが行われます。
遺言書に、ご自身が引き継ぎの当事者だと指定があった場合でも、引き継ぎを拒否(放棄)することはできます。その場合には、法定相続全員の賛同が必要となり、再度、法定相続人による協議で引き継ぐ人物を決めることになります。
1-2.生前贈与
生前贈与とは、生きているうちにご自分の財産を、配偶者や子・孫などに分け与えることです。生前贈与をすると、相続税の課税対象になる財産を減らしておくことができるので、生前贈与による節税準備をしているアパートオーナーは少なくありません。
また、生きている間に次の世代にアパート経営を委譲しておき、ある程度の経営などは自分が教えて、引き継いでおきたいとお考えの場合にも、生前贈与は適しています。
生前贈与をしたときに相続時精算課税制度を適用し、実際に相続が発生したときに清算するという方法がとれます。この方法であれば、仮に相続税額が大きくなっても、それまでの間にアパート経営による収入を相続税支払用に準備しておくことができますので、引き継いだ方が大きな負担を抱えずに済みます。
生前贈与を機に建て替えを検討するケースも多くみられます。「HOME4U 土地活用」では実績豊富な企業からあなたの土地に合ったアパート経営プランの比較検討ができます。
1-3.家族信託
家族信託とは、親世代が、万が一自分が認知症などになった場合でも、アパート経営に問題が生じないように、経営や財産に関した権限を事前に設定しておくことです。
家族信託をすると、財産の管理・処分をする権限が信託の受託者(子世代)に移行します。子世代は、経営中のアパートを、親世代の希望に沿って管理・処分することができるようになります。
家族信託は、子世代の次の相続方法まで指定できるのが特徴です。例えば、先祖代々の土地でアパート経営をしている場合、子世代に土地建物を相続で遺したものの、自分の死後、子世代が不動産を売却してしまう可能性があります。
先祖代々の土地なので、せめて孫世代にまで残したいという意思がある場合は、家族信託を設定しておくことで、アパートオーナーである親世代の意志を孫世代にまで引き継いでもらうことができます。
1-4.事業継承
普通の相続は「資産」を次世代へ引き継ぐことですが、事業継承は「アパート経営権」ごと資産を引き継ぐ事を指します。
一般的に、アパート経営は個人事業主としてスタートしますが、親世代が積極的に資産拡大をして法人化している場合、社内には家族以外の役員や社員がいることもあり、家族的な個人間のやり取りでは、その後の経営がうまくいかないケースがあります。
アパート経営法人化のめやすは、家賃収入が年間1,000万円を超えているか、所有している建物が5棟以上、またはマンションの部屋数が10室以上ですので、このような規模の不動産経営の場合は、事業継承という形で引き継ぐ傾向があります。
事業継承にも相続時に適用できる事業継承税制があり、個人事業・法人事業ともに制度が整っています。
事業継承では、アパートの経営権・経営資源・物的資産のすべてを引き継ぎますので、子世代はアパート経営を、今後も存続させることが前提です。
2.アパート経営を引き継ぐ際のフロー
本章では、アパート経営を引き継ぐことになった場合、ご自分がアパートオーナーとなって経営するまでに、どのような流れになるのかを解説しています。
アパート経営の引継ぎには、節税や税制が関わってくることが多いので、まだ先の話であっても、フローは把握しておいた方が良いと言えます。
※家族信託のアパート経営は、信託してある内容に沿って行われるため、基本的に相続と同じフローになります。
2-1.事前確認
アパート経営の引継ぎには、さまざまな税金が関わってきますので、節税対策とその制度が有効になるタイミングを把握しておく必要があります。
相続税対策のためにアパート経営をはじめる場合は、相続開始日前に丸3年間の経営期間が必要です。贈与税の場合も、生前贈与をした後に相続税の税制特例を受けるためには、贈与開始から実際にアパートが遺産となるまでに、丸3年間が必要です。
事業継承は、経営ノウハウなどを伝授する期間が必要となるため、この期間を丸5年間設ける必要があります。継承する内容は、それぞれの会社の形態や役員の存在によってやるべきことが変わります。
このように、アパート経営の引継ぎは、パッと思いついたからできることではなく、綿密な事前計画が必要です。適切な節税をするためには、計画の段階で、必ず税理士に相談をしてください。
2-2.ローン残債の確認
相続・生前贈与・継承のどの場合でも、経営中のアパートのローン残債を確認します。ローンの残債がある場合、ローンもマイナスの資産として引き継がれますが、相続の場合のみ、団体信用生命保険によって残債が完済になることがあります。
ローン残債がある場合は、引き継ぎいだ方が毎月の返済を続けることになります。
2-3.誰が引き継ぐかを決める
相続で遺言書や信託書の中に引継ぎ者の指名があった場合は、その方がアパート経営の引継ぎをします。遺言や信託がない場合は、法定相続人による話し合い(遺産分割協議)で引き継ぎ者を決定します。
アパート経営引継ぎ者の決定には、法定相続人全員の賛成が必要なため、複数の引継ぎ希望者がいた場合は、相続トラブルに発展する可能性があります。
贈与と事業継承の場合は、アパート経営者であるオーナーが次の継承者候補に打診をします。候補者が受諾すれば、その方が引き継ぎ者となります。
事業継承の場合、会社の規模や役員の数によっては、候補者が引き継ぐことに異論を唱えるなど、事業継承上のトラブルが起きる可能性がありますが、経営者の決定が優先されます。生前贈与の場合は個人間のやりとりなので、もめ事は起こりにくい傾向にあります。
2-4.管理会社・銀行に連絡
アパート経営を引き継ぐ人物が決定したら、経営者が変わることを不動産管理会社と、関係のある金融機関に連絡をします。不動産管理会社では振込口座や契約書名義などの社内文書の変更作業を開始し、法的な名義変更が終わり次第、家賃収入の振り込み先が引き継ぎ者になります。入居者には、すべての手続きが完了してから、不動産管理会社より、オーナー変更の通知がされます。
ローン残債があった場合は、団体信用生命保険の適用や、ローン継承と口座変更などに関する手続きが、金融機関で行われます。
2-5.名義変更
アパート経営を引き継ぐ人物が決まったら、アパートに関係したものすべての法的な書類の名義変更を行います。名義変更には登録免許税がかかります。
アパートに関した名義変更には、相続・贈与・事業継承それぞれのケースで必要書類が違います。一般的には司法書士や弁護士などに手数料を支払って代行してもらいます。
それぞれの書類には、必要な添付書類(印鑑証明・住民票・戸籍など)がありますが、司法書士や弁護士から「これを取ってきてください」と言われてから動くようにします。いくつかの書類には有効期限がありますので、早めに用意しても実際に使う時には期限が切れてしまうことがあるためです。
2-6.準確定申告(4ヶ月以内)を行う
相続の場合は、前オーナーの代わりに準確定申告を行い、当年の亡くなった日までの確定申告を引き継ぎ者が代理で行います。これを準確定申告と言い、亡くなった日から4か月以内に行う必要があります。この時点で誰が引き継ぐか決まっていない場合には、法定相続人全員の名義で準確定申告をすることになり、後日、アパートを引き継ぐ人物が決まってから、再分配することになります。
贈与税と事業継承には、準確定申告の必要がありませんので、引き継ぎをしてから確定申告をします。確定申告は1月1日から12月31日までの収入に対しての所得税ですので、アパートを引き継いだ日から年末までの家賃収入から経費を差し引いた額が20万円以上あれば、翌年の2月15日ごろから3月15日までの間に確定申告と納税をします。
2-7.相続税の納税
相続の場合は、相続が発生した日から10か月以内に相続税を納付する必要があります。生前贈与でアパートの引継ぎをした方は、実際の相続が発生したら、相続時精算課税による精算をします。
事業継承では、5年間の経営ノウハウ引継ぎ中に先代経営者がなくなった場合は、事業継承開始日から3年7カ月までで事業「贈与」期間が自動的に打ち切りになります。以降は、事業「相続」期間となり、会社に適用される相続制度の内容が変わります。
会社の規模、株式の有無、役員構成などにより適用できる制度や税制に違いがありますので、必ず税理士に相談をしながらすすめて下さい。
【参照:国税庁 事業承継税制特集】
3.アパート経営を引き継いだ後はどうする?3つのパターン
アパート経営を引き継ぐ前提で考えた場合、引き継いだ後のことも想定しておいてください。
以下は、アパートを引き継ぐと決めた場合のその後の展開の可能性3パターンです。
- アパート経営を続けていく
- アパート経営以外に変える
- 売却する
3-1.アパート経営を続けていく
アパート経営を今後もずっと続けていく方法です。アパート経営の損益分岐点(利益がゼロだが赤字ではない状態)を把握し、適切なタイミングで、新築に建て替える・リノベーションをするなどで、より良い経営状態にするために、経営者として判断していくことになります。
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アパート経営は世間で言われているほど、何もしないでお金が入るタイプの仕事ではありません。入居者が満足し、長く住み続けたいと思ってもらえるような、適切な建物・居室の管理をする必要があります。また、周辺のライバル物件の登場や環境変化などもあり、常に経営努力は必要です。
経営が順調であれば、2棟目、3棟目と増やしていくことで、自分の代で本格的な賃貸経営事業として展開していくことも十分に可能です。
また、アパート経営を引き継いでやってはみたものの「自分には経営者は向いていない」と思った場合は、専門会社に経営委託ができるサブリースという方法で、アパート経営を続けていくことも可能です。
3-2.アパート以外の土地活用方法に変える
アパート経営として引き継いでも、自分の代で別の土地活用に変更することもできます。特に、古いアパートを引き継いだ場合は、建て直しやリノベーションなどの大きな費用が発生する可能性もあるので、別の土地活用を検討するよい機会とも言えます。
例えば、同じ賃貸経営でも、店舗経営・貸しビル経営などの住居ではない建物の経営や、駐車場経営やトランクルーム経営などのモノを置くスペース賃貸も可能です。
ご自身でお店を経営しながら同じ場所に住むのであれば、店舗併用住宅という選択肢があります。
また、ご自身が住まいながら、同じ敷地で小さなアパート経営をするのであれば、賃貸併用住宅という方法もあります。
それ以外にも、土地活用にはさまざまな方法があります。ただし、土地活用の基本は「土地からの利益を最大化する」ことですので、土地条件によってはアパート経営が最適である可能性もあります。
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3-3.売却する
引き継いだアパートは、その後、自分の代で売却することもできます。
アパート引継ぎで、売却するのは主に次の3パターンがあります。
1.資産を維持するため
アパート経営を引き継いだ時点で、入居率が不安定だった場合、将来的には赤字経営になる可能性が高くなります。赤字経営が続くとオーナーの自己資金からの持ち出しが必要となり、資産の減少を招きます。せっかく引き継いださまざまな資産を、次の世代にも残すためには、負の資産であるアパートを売却して、より利益の出る土地活用を検討してみてください。
例えば、経営しているアパートの立地条件が良くない場合は、今の場所でリフォームなどの設備投資をして頑張るよりも、もっと立地条件の良いエリアに土地を買い直してからアパート経営をすることで、総合的な資産の目減りを回避しつつ、将来においての資産拡大が狙えます。
2.アパート廃業のため
アパートの経営状態が思わしくなく、さらに、経営を続ける意思がない場合は、アパートを廃業し、土地と建物を売却する方法があります。アパートが経営中であれば、入居者がいる状態でも、アパートの売却は可能です。
売却をすればまとまった資金が手元に残りますので、新たな土地活用をするために、区分マンションなどの不動産を購入する以外にも、新規事業をする・金融商品を買うなどの方法で、資産を拡大して次世代へ残すことができます。
3.納税のため
相続でのアパート経営引継ぎをする場合、どうしても相続税の支払いの問題があります。早くから相続税対策ができていれば、アパートからの収入を相続税支払い用の現金としてプールしておくことができます。
しかし、そのような準備ができなかった場合は、相続税の支払いのために、アパートを売却しなければならないこともあります。相続税は原則、現金一括払いですが、ケースによっては分割払いができますので、税務署に相談をしてください。
引き継いだアパート経営が順調なのであれば、相続税の支払いの為だけに大切な不動産を売却しなくても、相続税の支払いをすることができます。
以上のように、アパート経営の引き継ぎ後は、このような3つの選択肢があります。事業継承や生前贈与の場合は、引渡しをする本人がいますので間違いが起きにくいのですが、相続による引き継ぎの場合は、納税漏れにも注意が必要です。
納税漏れとは、確定申告をし忘れていることです。特に、アパートオーナーが入退院を繰り返していた、認知症を患っていたなど場合、本人が数年にわたり確定申告をし忘れていることがあります。
何も知らずに、引き継ぐことになった場合、税務署から納税漏れを指摘され、過去に申告していなかった分の不動産所得税の支払い請求以外に、追徴金の支払いを命じられることもあります。申告漏れはアパートの引継ぎをした方が負担することになります。
多くのケースでは、起きた経緯を正直に報告すれば、利息が発生する状態での分割納入ができます。ただし、税金逃れのために計画的やっている可能性があると判断された場合は、生前のアパートオーナーへの税額に対して、重加算税などの重たいペナルティが発生することもあります。
このようなトラブルを未然に防ぐには、将来的にアパート経営を引き継ぐ可能性がある場合には、親子間で積極的に相続に関する話し合いを行い、家族の資産を減らさないように、事前の対策を打っておく必要があります。
4.アパート経営を続ける判断基準・チェックリスト
親子が相続に関する話し合いをしてこなかった場合、相続が始まってから突然「アパートの経営をするか・しないか」の選択を迫られるケースがあります。
経営状態に問題がなければ、アパート経営はそのまま引き継いでも問題はありません。
しかし、現状のアパートが赤字経営である、問題がたくさんある場合は、引き継がないという選択肢があることを覚えておいてください。
相続がスタートすると、法定相続人による話合いなどの時間も必要なため、ご自身がアパート経営の相続人に指名されている場合は、素早く「引き継ぐかどうか」を判断していく必要があります。
以下の5項目は、アパート経営を続けるかどうかを判断する際のチェック項目です。
- アパートの立地条件
- 管理状況
- 入居状況
- ローンの残債
- 不動産所得の状況
4-1.アパートの立地条件
アパートの賃貸経営は立地がすべてと言っても過言ではありません。
立地条件が良ければ、アパート建物の劣化、設備の古さなどとは関係なく、比較的、安定した入居率を維持できます。
立地に関したチェック項目は以下の4つです。
1.駅歩10分以内
駅から歩いてアパートまでの距離が徒歩10分までの距離にあるかどうかです。駅まで10分であればバスや自転車を使う必要がなく、毎日の通勤通学にも負担がありません。
2.生活便利な商圏がある
駅の近くからアパートまでの間にスーパーマーケット、ドラッグストアなどの日常生活に必要なものをまとめて購入できる商圏があることです。最低でも、駅から家までの間に、1軒のコンビニエンスストアが必要です。
3.主要駅まで30分以内
通勤にかかる時間の利便性です。主要ターミナル駅までの時間が最寄り駅から30分以内であることが理想です。
4.将来の開発計画
引継ぎ予定のアパート建物の立地条件は、現況がそのまま条件になりますが、もう一つ、将来の立地条件もチェックしておく必要があります。具体的には、アパートがあるエリアに今後の開発予定などがないかを、自治体に問い合わせをして確認をします。
現時点でのアパートの立地条件がそれほど良くなくても、将来的に駅前開発や新駅の創設などの予定があれば、駅周辺も大きく発展し、人口が増える可能性があります。人口が増えれば周辺にも企業が集まり、アパート経営がしやすくなります。
このように、周辺エリアも含めた立地条件を調べておくと、中長期的なアパート経営の展望が読みやすくなります。逆に、調査をした結果、将来的に特に大きな変化がない場合は、アパート周辺は現在よりも過疎化する可能性があり、経営が難航する可能性が高くなります。
4-2.管理状況
アパート建物の状態を全体的に確認します。チェックするのは、以下の3カ所です。
1.外壁と屋根の状態
外壁や屋根、ある場合は塀などの外観をチェックします。外壁などが傷んでいるのに修理をせずに放置されている場合は、雨風や害虫などによって内部の柱などまで傷んでいる可能性があり、将来的に雨漏りなどの大きなトラブルの問題が生じてきます。
最悪の場合は、屋根と屋根裏にまで問題が出ていることがあり、アパートの建て直しを検討しないとならないケースもあります。屋根に上ってまで確認する必要はありませんが、周辺の高い建物から眺められるのであれば、遠目からでも破損などがないかは確認してください。
2.エントランス周辺の状態
建物の中でも、最も人目につきやすいエントランス付近をチェックします。この部分に劣化や汚れが目立つ場合は、現時点で提携している管理会社の質が悪い可能性があります。
建物は年数が経過すれば少しずつ傷んでいきますが、建物内は、清掃や修繕がこまめに行われていれば、見た目をきれいに保つことができます。
エントランス周辺は、新規入居者候補の第一印象に影響する大切な場所です。エントランスが汚いということは、入居者募集や入退去に関わる管理会社が、必要な仕事をしていないという証拠になります。
他のチェック項目と合わせて、管理会社を変更することで問題が解決されるかも確認してください。
3.共用部分の状態
建物内の階段・ゴミ置き場・自転車置き場などの清掃状態や整理整頓の状態を確認してください。チェックすべきは、廊下にゴミが落ちていないか、階段の電気などが切れたままになっていないか、ゴミ置き場が汚れていないか、自転車がきれいに整列されているか、などです。
これらは、アパートの建物管理に関する作業ですので、建物管理の管理委託をしていない場合は、かつてはオーナーが自主管理をしていたか、入居者による自主的な管理(気づいた方がボランティア)であった可能性があります。
多くの人が利用する共用部分は汚れやすい場所ですが、あまりにもひどい状態の場合は、入居者以外の人間が頻繁に出入りし、ゴミの不法投棄をしているなどの可能性もあります。建物管理を新規に契約することで解決できる問題かを確認しておく必要があります。
4-3.入居状況
アパート建物の居室のうち、何割の入居状態であるかを確認します。理想は満室経営ですが、全体の7~8割程度の入居率であれば、問題のない経営状態です。これ以下の数値である場合は、経費が多ければ赤字経営になっている可能性があります。
空室状況は、アパートオーナーが契約している不動産管理会社を調べれば、担当者が説明をしてくれます。半年以上空室が続いている場合は、部屋やアパート建物に問題があるか、管理会社に問題がある可能性があります。
空室の要因を調べ、リフォームなどで解決できる内容かを判断してください。空室率は次項のローンの話にも関係がありますので、あわせて判断してください。
4-4.ローンの残債
アパート経営の多くは、金融機関から多額の融資を受けてスタートしますので、相続の際にはローン残債があるかをチェックします。
これらの情報は、融資を受けている金融機関からの定期的な返済状況の通知が、郵送かメールできていますので探してください。わからない場合は、財産目録の中にある権利証などを確認するか、融資先へ直接連絡すれば情報が揃います。
残債があった場合は、まず、アパートオーナーが融資の際に団体信用生命保険に入っていたかを確認します。加入していれば、亡くなった時点でアパートローンの残債は生命保険で完済しますので、残債のない状態でアパート経営を引き継ぐことができます。
加入していなかった場合は、現状のままあと何年で完済できるかを確認します。家賃収入がローン返済額を上回っていれば問題ありませんが、毎月の返済額に満たない場合は、引き継いだ方が自腹で補填することになります。
相続での引き継ぎでローンが残っている場合は、ローンの残債を支払いながら、さらに相続税の支払いもすることになりますので、それらの負担も併せて引き継ぐかどうかを慎重に判断する必要があります。
4-5.不動産所得の状況
不動産所得とは、アパートからの家賃収入から、アパート経営のために必要な経費を差し引いた金額のことです。これらの情報は、過去の確定申告の控えか、アパートオーナーがつけていた帳簿からわかります。
どちらも見つからない場合は、不動産管理会社からの収支明細をもとに、預金通帳への振り込み記録と、口座の入出金を付け合わせることで、ある程度の予測がつきます。
あまり口座残高が残っていない場合は、長期間の赤字経営が続いていた可能性がありますので、その要因を探してから、引き継ぐべきかを判断してください。また、リノベーションや建て替えによる経営刷新で、経営状態が良くなるのかなども、同時に検討してみる必要があります。
アパート経営の是非を検討するならプロの見解を入れたほうがよいでしょう。「HOME4U 土地活用」を活用すれば、最大10社から所有地の立地に合う活用プランが手に入れられます。
5.生前に準備しておくべき、アパート経営の引継ぎ事項
現在、アパート経営をしていらっしゃるアパートオーナーが、将来の引継ぎのためにできる5つの対策をまとめました。もし親がアパート経営をしている場合、子世代の方も以下の項目を意識していただければと思います。
アパートの引継ぎには相続・生前贈与・事業継承のどの場合でも、トラブルになる要因があることがお分かりいただけたと思います。せっかく家族のために築き上げた資産が、将来、家族のもめごとにしないためには、そうならないための事前準備が必要です。
- 遺言作成
- 節税対策
- 納税対策
- 争族対策
- 信頼のおける不動産パートナーの発掘
5-1.遺言作成
遺言書の作成によって相続発生時のトラブルを最小にすることができます。遺言書の効果は絶大ですので、アパート経営の引継ぎを誰にするかなどの指名ができ、本人が拒否しない限りは、遺言通りに相続がすすみます。
遺言書でアパート経営の引継ぎ者を決めることにより、遺産分割協議などによって、アパートのある土地を売却されてしまい、遺産をバラバラにされてしまうのなどの資産縮小を避けることができます。
5-2.節税対策
相続・生前贈与・事業継承のどの場合でも、アパート経営の引継ぎによって得た財産が、一定額を上回ると税金が発生します。税金は、税金支払いによって資産が減少してくことを防ぐため、支払額が減額される、さまざまな制度が用意されています。
このような制度は、適用条件に細則が多いため、制度がうまく使えるように準備をしておく必要があります。例えば、相続税対策のためにアパート経営をはじめておくと、相続が発生したときに、アパートの建設費などの大きなローン残債が、マイナスの遺産として次の世代に引き継がれます。
プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続税の課税対象額として見るため、アパート建築費のような大きな金額がマイナス資産としてあると、支払う相続税額をかなり抑え込むことができます。ただし、このような相続税対策は、相続が実際に起きる日よりも3年以上前にアパート建設と経営が実行されている必要があります。
このように、適用されれば大きく節税できますが、そのためには制度をよく理解し、最大限に制度が利用できるように時間をかけて準備をしておく必要があります。
5-3.納税対策
アパート経営の引継ぎをすると、さまざまな税金の支払い義務が生じます。毎年の納税には所得税・住民税・固定資産税があり、相続が発生した際には相続税の支払いがあります。
毎年の納税に関しては、アパートの家賃収入からの支払いができますが、アパート経営を引き継ぐレベルでの相続税額は、まとまった金額になる可能性があるため、支払のための現金を準備しておく必要があります。
アパート経営の場合、早い段階から経営の引き継ぎがされていれば、アパートの家賃収入から将来の納税額をプールしておくことができます。しかし、何の対策もせずに、突然の相続となった場合には支払額が用意できず、最悪の場合はアパートの土地建物を売却して納税をしなければならないケースもあります。
大切な資産を守り、次の世代に確実に遺していくためには、事前の計画と親子間での相続に関する話し合いが必要です。
5-4.争族対策
争族とは、遺産の取り分について家族間でもめ事が起きることです。アパートなどの不動産は、現金のように明確に切り分けることが難しく、さらにアパート経営として遺された場合には、引き継ぐ子世代に経営の意志があるかどうかも問題になってきます。
このような背景が重なると、アパート経営を引き継ぎたい・現金でもらいたい・不動産を売るのは反対だ、などの複数の意見がまとまらなくなり、遺産分割協議の着地点が見いだせなくなります。これが、争族です。
例えば、3人兄弟で親がそれぞれに遺せるようにと、3棟のアパートを経営していた場合でも、一つだけが駅前物件で、残りが住宅地であった場合、だれが土地条件の良い駅前物件を引き継ぐかで争族に発展することもあります。このような無用な家族間の争いを未然に防ぐためには、あらかじめ、どの資産を誰が引き継ぐのかを、遺言や信託などの形で明文化しておく必要があります。
アパート経営の引継ぎにはある程度の経営ノウハウも必要ですので、生前贈与で相続をしながら、実際の経営方法も教えるという方法もあります。
5-5.信頼のおける不動産パートナーの発掘
アパート経営の引継ぎは、親世代・子世代のどちらにとっても重要な土地活用の話です。アパートを引き継ぐ予定であるものの、現在のアパートの築年が古いことや、空室率に問題がある場合は、将来的に思い切ってリノベーションや建て替えを検討する必要も出てきます。
また、経営中のアパートに入っている管理会社を変更したいが、新しい管理会社をどこにすればいいのかもわからないこともあります。このような、アパート経営全般に関した相談ができる、ハウスメーカーや建設会社の担当者がそばにいれば、アパート引継ぎに関した問題は一気に解決できます。
信頼のおける不動産パートナーを見つけるには、「経営を見直すため賃貸管理会社を再検討する」「アパートそのものを建て替える」という大きく二通りの方法をとることができます。
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この記事のポイント まとめ
アパートを引き継ぐ際には、相続、生前贈与、家族信託、事業継承などいくつかのパターンがあります。また、アパートを経営を引き継ぐ際の代表的なフローは以下のとおりです。
- 1.事前確認
- 2.ローン残債の確認
- 3.誰が引き継ぐかを決める
- 4.管理会社・銀行に連絡
- 5.名義変更
- 6.準確定申告(4ヶ月以内)を行う
- 7.相続税の納税
詳細は「アパート経営を引き継ぐ際のフロー」をご一読ください。
アパート経営を引き継いだ後は、アパート経営を続けるほか、アパート以外の土地活用方法に変更する、売却するなどの選択肢があります。
アパート経営を続けるか否かのチェックポイントは、以下をご確認ください。
- アパートの立地条件
- 管理状況
- 入居状況
- ローンの残債
- 不動産所得の状況
詳細は「アパート経営を続ける判断基準・チェックリスト」をご一読ください。
生前に準備しておくべき、アパート経営の引継ぎ事項は以下のとおりです。
- 遺言作成
- 節税対策
- 納税対策
- 争族対策
- 信頼のおける不動産パートナーの発掘
詳細は「生前に準備しておくべき、アパート経営の引継ぎ事項」をご一読ください。
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