【基本を解説】相続土地国庫帰属制度とは?要件や負担金、手続き、メリットとデメリットまで
土地を相続したものの、管理が難しかったり、活用方法が見つからなかったりすることがあるかもしれません。思い切って手放したいという場合、土地を国に引き取ってもらえるのが、相続土地国庫帰属制度です。
この記事を読むと、以下のことがわかります。
- 相続土地国庫帰属制度の対象者や要件、負担金、申請手続き
- 相続した土地を国に引き取ってもらう負担金はいくらぐらいか?
- 相続土地国庫帰属制度のメリットとデメリット
- 本当に土地活用できないかを知りたい
なお、相続した土地の活用方法について相談したいという方は、「HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」をぜひご活用ください。以下のボタンから簡単に最大10社の土地活用プランの入手が可能です。
この記事の内容
1. 相続土地国庫帰属制度(法)とは
相続土地国庫帰属制度とは、法律に基づいて新たに導入された制度です。
相続土地国庫帰属法(正式名称「相続などにより取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」)が、2023年4月27日に施行されました。これにより、指定の要件を満たす土地であれば、所有権を国に移転できるようになりました。
1-1.相続した土地を国に引き取ってもらえる制度
土地を相続しても、活用が難しい場合があります。土地利用のニーズが低いエリアだったり、農地や山林など管理に手間がかかったりすると、負担ばかりがかさんでしまいます。
こうした管理の難しい土地を相続または遺贈することなった場合、選択肢の一つとなるのが相続土地を国庫に帰属させる方法です。一定の負担金を納付することを条件に、土地の所有権と管理責任を国に引き取ってもらうことができます。
1-2.相続土地国庫帰属制度の目的と背景
相続土地国庫帰属制度ができた背景には、相続した土地を手放したい方が増えてきていることがあります。特に過疎の地域や農地、森林などでは負担が大きく、管理できずに荒廃して危険な状態になることも増えています。
また、相続土地国庫帰属法が制定されたのには、所有者が不明となった土地の発生を防ぐ目的があります。管理が行き届かない土地を国が引き取ることで、国土が荒廃する状況を改善するためでもあります。
1-3.要件を満たすかを法務局が審査
ただし、管理が難しい不要な土地を相続したからといって、どんな土地でも国に引き取ってもらえるわけではありません。対象となる土地の所有者が法務局に申請し、審査を経て、要件を満たしている土地と承認された場合のみ、国庫に帰属することになります。
なお、土地を相続することになった時の手続きについて、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
2. 相続土地の国庫帰属を申請できる対象者
相続土地国庫帰属制度に申請できる対象者は、以下の要件を満たしていなければなりません。
- 相続または遺贈で土地を相続した相続人であること(「土地全体を所有する権利」を取得した者)
- また兄弟など複数の人たちで土地を相続した場合(「共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者」)
出典:e-GOV「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(法2条2項)
つまり、ここで土地の相続人となるのは、亡くなった人の配偶者や子といった法定相続人だけでなく、遺言書によって8財産を譲り受ける「遺贈」によって土地を取得した方も含みます。
基本的に相続土地の国庫帰属は、相続人でなければ申請できません。ただし、兄弟など複数の人たちで土地を相続した場合は、例外的に共有者全員であれば申請できます。
なお、生前贈与で土地を受けた場合は、相続や遺贈で土地を取得したものではないため、国庫帰属の申請はできません。
3. 国庫帰属が認められる相続土地の要件
相続した土地は、どんな土地でも国に引き取ってもらえるわけではありません。国庫に帰属させるためには、相続土地国庫帰属法で定められた土地の要件に該当していなければなりません。
相続した土地が要件に当てはまっているかどうか、申請する前によく確認しましょう。
3-1.承認される相続土地
国に引き取ってもらえる土地の要件を端的に説明すると、申請者の所有権以外に権利の設定がなく、のちのち訴訟の原因になるようなことのない更地が対象です。
もっと具体的には、次項で説明する「却下事由」や「不承認事由」に該当しなければ、承認されます。
3-2.承認されない相続土地
相続した土地を国に引き取ってもらえない可能性があるのは、「却下事由」や「不承認事由」がある場合です。詳しく見ていきましょう。
【国が引き取ることのできない相続土地の要件概要】
(1) 申請の段階で却下となる土地(却下事由)
A 建物のある土地
B 担保権や使用収益権が設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地
D 特定の有害物質によって土壌壌汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2) 該当すると判断された場合に不承認となる土地(不承認事由)
A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
「(1)A 建物がある土地」については、実家を相続する方も多いでしょうが、国に土地を引き取ってもらうには建物(家屋)を解体・撤去し、更地にしなければならないということになります。
また、「(1)C 他人の利用が予定されている土地」は、通路や水道用地、墓地・境内などが相続した土地に含まれている場合は承認されないということです。
さらに、「(2)E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地」ですが、例を挙げるなら、適切な造林などがなされていない森林も含まれます。管理の行き届いていない土地を相続した場合には注意が必要です。
なお、承認されない土地いでも、本当に活用ができないのか確認したい方は、以下の記事もご参照ください。空き地の有効活用法をご紹介しています。
4. 相続土地国庫帰属の申請手続き
相続土地国庫帰属制度を利用して、相続した土地を国に引き取ってもらうには、法務局への相談・申請・審査の手続きがあります。
承認申請の方法と、土地を国に引き渡すまでの流れは以下の通りです。
- 法務局へ相談
- 申請書類の作成・提出
- 法務局担当者による書類・実地審査
- 負担金の納付・国庫帰属
なお、法務省のホームページ「相続土地国庫帰属制度の概要」から、具体的な手続きを詳しく紹介した「相続土地国庫帰属制度のご案内」(申請の手引き)がダウンロードできます。併せてご参照ください。
4-1.法務局への相談
まず、承認申請をする前に法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)に相談すると、あとの手続きがスムーズに進みます。相談に際しては、以下の書類を準備しましょう。
- 相続土地国庫帰属相談票
- 相談したい土地の状況について(チェックシート)
- 土地の状況等が分かる資料や写真(可能な範囲で)
「相続土地国庫帰属相談票」と「相談したい土地の状況について(チェックシート)」については、法務局のホームページに様式が掲載されています。ダウンロードしてプリントアウトし、記入して用意すると良いでしょう。
「土地の状況等が分かる資料や写真」ですが、例としては登記事項証明書または登記簿謄本、法務局で取得した地図または公図の写しや地積測量図、その他土地の測量図面、土地の現況・全体が分かる画像または写真などがあります。
これらの資料をもとに相談の予約をしましょう。ただし、相談のために送付した資料は返却されません。必要な資料は写しをとって送付してください。
相談は、相続した土地の所有者本人だけでなく、家族や親族でも相談できます。事前予約制で1回30分です。法務局・地方法務局(本局)の窓口で対面または電話での相談となります。
相談の事前予約は、「法務局手続案内予約サービス」を利用すると便利です。また、直接対面で相談に行く場合は、法務省のホームページ「法務局・地方法務局所在地一覧」を参照すると所在地が分かります。
なお、相続した土地が居住地から遠方にあるなど、承認申請する法務局・地方法務局(本局)での相談が難しい場合は、近くの法務局・地方法務局(本局)でも相談できます。
4-2.申請書類の作成・提出
相続土地の国庫帰属を申請するには、必要な書類一式を作成・提出します。
まず、相続した土地が国庫帰属の要件を満たしているか確認した上で、相続人が申請しなくてはなりません。共有地の場合は、共有している全員の同意を得て、共同申請を行います。
承認申請には、以下の書類が必要となります。
【新たに作成する書類】
- 承認申請書
- 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
- 承認申請に係る土地及び当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
- 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
【用意する書類】
- 申請者の印鑑証明書
- 固定資産税評価額証明書(任意)
- 申請土地に辿り着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
- 承認申請土地の境界等に関する資料(あれば)
- その他相談時に提出を求められた資料
申請書の様式や記入例については、法務局のホームページに掲載されています。ダウンロードしてプリントアウトし、記入して作成しましょう。
申請書類を作成できたら、土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局の不動産登記部門(登記部門)に提出します。提出には、窓口に持参する方法と郵送する方法があります。
窓口に申請書類を提出する場合は、できるだけ事前の連絡し、申請者本人が持参するようにしましょう。申請者本人が難しい場合は、家族が代理することも可能です。
郵送で提出する場合は、相続土地国庫帰属の申請書が入っていることを明記した書留郵便かレターパックプラスで送付します。
なお、申請には土地1筆当たり1万4,000円の審査手数料が必要となります。「筆」というのは、登記上の土地の個数を表す単位です。申請書に審査手数料の額に相当する収入印紙を貼って納付します。
ただし、申請後に申請を取り下げた場合や、審査の結果で却下や不承認となり土地を引き取ってもらえないと判断された場合でも、審査手数料は返還されませんので注意しましょう。
4-3.法務省による審査
相続土地国庫帰属の申請書類が受理されると、法務局の担当官による書類審査が行われます。書類審査で要件を満たしていないと判断された場合は、却下または不承認となり、申請者に通知されます。
また、必要に応じて実地調査が行われる場合があります。その際、申請者がやむを得ない理由がある場合を除いて、担当官の調査に応じない場合は申請が却下されてしまうので注意してください。
却下事由も不承認事由もない場合は、申請が承認されたことが申請者へ通知されます。その際、次項で説明する負担金の額も通知されます。
4-4.負担金の納付と国庫帰属手続き
相続の土地を国が引き取ると承認された場合、申請者は通知された負担金を納付する必要があります。通知が到達してから30日以内に、記載されている負担金額を納付します(負担金額の算出方法については後述します)。
なお、納付期限を過ぎてしまうと、国庫帰属の承認が無効となってしまいます。失効した場合は、再び最初から申請し直す必要があるので注意してください。
負担金が納付されると同時に、申請した土地の所有権は国に移転されます。土地の所有権の移転登記は国が行うため、申請者が自分で登記を申請する必要はありません。
5. 相続土地別の負担金算出方法
相続した土地を国に引き取ってもらう際には、負担金の納付が必要となります。
負担金は、もともとの土地の所有者が土地の管理の負担を免れる程度に応じて、国に生ずる管理費用の一部を申請者が負担するものです。
1筆ごとに20万円が基本です。同じ種目の土地が隣接していれば、負担金の合算を申し出ることができ、2筆以上でも20万円が基本となります。
なお、一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては、面積に応じて負担金を算定する場合があります。土地の種目や区域に応じて、10年分の標準的な管理費用を考慮し、負担金の額は決まります。
算定が必要となる種目や区域は以下のとおりです。
負担金算定の具体例
土地の種目や区域 | 負担金の額 |
---|---|
宅地(注1) | 面積にかかわらず、20万円 ※ただし、一部の市街地(注2)の宅地については、面積に応じ算定(注3) |
田、畑 | 面積にかかわらず、20万円 ※ただし、一部の市街地(注2)、農用地区域の田、畑については、面積に応じて算定(注3) |
森林 | 面積に応じ算定 |
その他(雑種地、原野等) | 面積にかわらず、20万円 |
※注1:直ちに建物の敷地として使用できると認められる土地
※注2:都市計画法の市街化区域または用途地域が指定されている地域
※注3:面積の単純比例ではなく、面積が多くなるにつれ、1m²当たりの負担金額は低くなる
それでは、これら種目や区域ごとの負担金の算出方法について、解説していきましょう。
また、併せて法務省のホームページ「相続土地国庫帰属制度の負担金」も参照してください。
5-1.宅地の場合
宅地は面積の大小にかかわらず、原則として一律20万円の負担金となります。ただし、これは都市計画法の市街化区域と用途地域のどちらにも指定を受けていない地域の土地の場合です。
一方、市街化区域・用途地域に指定された地域内の土地の場合は、草刈などの管理をしなければならないため、面積に応じて計算し、負担金額が変わります。
宅地の負担金算定式(市街化区域・用途地域に指定された地域内の場合)
面積区分 | 負担金額 |
---|---|
50㎡以下 | 国庫帰属地の面積に4,070(円/㎡)を乗じ、208,000円を加えた額 |
50㎡超100㎡以下 | 国庫帰属地の面積に2,720(円/㎡)を乗じ、276,000円を加えた額 |
100㎡超200㎡以下 | 国庫帰属地の面積に2,450(円/㎡)を乗じ、303,000円を加えた額 |
200㎡超400㎡以下 | 国庫帰属地の面積に2,250(円/㎡)を乗じ、343,000円を加えた額 |
400㎡超800㎡以下 | 国庫帰属地の面積に2,110(円/㎡)を乗じ、399,000円を加えた額 |
800㎡超 | 国庫帰属地の面積に2,010(円/㎡)を乗じ、479,000円を加えた額 |
例えば、200㎡の場合は以下のような負担金額になります
国庫帰属地の面積200㎡×2,250円+343,000円=負担金79万3,000円
なお、以下の記事では、宅地の有効活用について詳しくご紹介しています。併せてご参照ください。
5-2.田、畑(農地)の場合
田・畑も面積の大小にかかわらず、原則として一律20万円の負担金となります。
一方、市街化区域、用途地域、農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域、土地改良事業等の施行区域に当てはまる土地の場合は、面積に応じて負担金額が変わります。
田、畑(農地)の負担金算定式
面積区分 | 負担金額 |
---|---|
250㎡以下 | 国庫帰属地の面積に1,210(円/㎡)を乗じ、208,000円を加えた額 |
250㎡超500㎡以下 | 国庫帰属地の面積に850(円/㎡)を乗じ、298,000円を加えた額 |
500㎡超1,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積に810(円/㎡)を乗じ、318,000円を加えた額 |
10,000㎡超2,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積に740(円/㎡)を乗じ、388,000円を加えた額 |
2,000㎡超4,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積に650(円/㎡)を乗じ、568,000円を加えた額 |
4,000㎡超 | 国庫帰属地の面積に640(円/㎡)を乗じ、608,000円を加えた額 |
例えば、10,000㎡の場合は以下のような負担金額になります。
国庫帰属地の面積10,000㎡×740円+388,000円=負担金778万8,000円
なお、以下の記事では、田舎の土地を有効活用できるアイデアを紹介しています。併せてご参照ください。
5-3.森林の場合
森林の場合には、面積に応じて負担金額が決まります。負担金額を算定するための面積の区分は、他の種目や区域と同様に6つあります。
森林の負担金算定式
面積区分 | 負担金額 |
---|---|
750㎡以下 | 国庫帰属地の面積に59(円/㎡)を乗じ、210,000円を加えた額 |
750㎡超1,500㎡以下 | 国庫帰属地の面積に24(円/㎡)を乗じ、237,000円を加えた額 |
1,500㎡超3,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積に17(円/㎡)を乗じ、248,000円を加えた額 |
3,000㎡超6,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積に12(円/㎡)を乗じ、263,000円を加えた額 |
6,000㎡超12,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積に8(円/㎡)を乗じ、287,000円を加えた額 |
12,000㎡超 | 国庫帰属地の面積に6(円/㎡)を乗じ、311,000円を加えた額 |
例えば、3,000㎡の場合は以下のような負担金額になります。
国庫帰属地の面積3,000㎡×12円+263,000円=負担金29万9,000円
なお、以下の記事では、傾斜地・斜面に有効な土地活用について詳しくご紹介しています。併せてご参照ください。
5-4.その他の相続土地(雑種地、原野など)
その他の相続土地の場合には、面積の大小によらず一律20万円の負担金となります。
その他の相続土地とは、雑種地、海浜地、原野などです。
なお、法務省のホームページ「相続土地国庫帰属制度の負担金」から、上記の種目・区域ごとの「負担金額の自動計算シート」(Excel)がダウンロードできるので、利用すると良いでしょう。
なお、以下の記事では、土地活用ができる場合の初期費用・資金調達方法について詳しくご紹介しています。国庫帰属を検討する前に参考にしてみてください。
6. 相続土地国庫帰属制度のメリット
相続土地国庫帰属制度を利用するメリットを整理すると、以下の3つとなります。
- 買い手がつかない土地でも引き取ってもらえる
- 相続した土地の管理が要らなくなる
- 農地や山林も申請対象になる
6-1.買い手のない土地でも引き取ってもらえる
相続土地国庫帰属制度を利用すれば、買い手のない土地でも国に引き取ってもらえます。
土地活用を検討しても良い方法が見つからず、売却を依頼しても買い手がつかない土地は、手放すこと自体も難しいのが現実です。
手放すまでの間も、土地の固定資産税を支払う義務があり、また自分で管理するにも費用がかかります。土地にかかる税金や管理費用を考えると、負担金を支払ってでも国庫に帰属させた方が良いかもしれません。
特に人里離れた不便な土地や、管理に膨大な費用がかかる広大な土地などの場合は、そのメリットも大きいでしょう。
6-2.相続した土地の管理が要らなくなる
相続土地国庫帰属制度を利用すれば、引き取ってもらった土地の管理が要らなくなります。
近年ではしっかり管理されていない未登記の土地などが、治安や衛生の面で問題となってきています。所有者の確認できない土地の多くは、相続人が活用できずに放置したものといわれています。
国に引き取ってもらい、きちんと管理してもらうことで有効な活用が見込め、安心できるでしょう。
6-3.農地や山林でも申請対象になる
相続土地国庫帰属制度の申請対象には、農地や山林も含まれています。
農地を相続して売却する場合、農地法に基づき条件が課されます。農地の買い手は原則として農家でなければならず、宅地などに転用した後でも土地の売買は農業委員会の許可が必要となります。
また、山林の場合は通常、交通アクセスの悪い不便な場所にあり、個人で管理するには手間がかかります。災害リスクも高く、売却しようにも購入者が少ないため、やはり手放したい相続人も多いでしょう。
農地も山林も、売りに出したところで買い手が見つかるという保証はありません。そのため、相続土地国家帰属制度を利用することで、農地や山林を相続・管理する悩みから解放されるでしょう。
7. 相続土地国庫帰属制度のデメリット
手放したい土地を国に引き取ってもらえる相続土地国庫帰属制度は便利なようにも思えますが、デメリットについてもきちんと理解しておきましょう。
- 条件を満たさないと申請できない
- 負担金や手数料が必要
- 引き渡しまでの時間や手間がかかる
7-1.要件を満たさないと申請できない
ここまでで解説したように相続土地国庫帰属制度では、いくつかの要件を満たさなければ申請できません。
どんな土地でも国に引き取ってもらえるわけではないため、注意が必要です。
特に、相続した土地に空き家などの建物がある場合、申請はできません。
以下の記事では、空き家の活用方法について詳しくご紹介しています。参考にしてみてください。
7-2.手数料や負担金が必要
相続土地国庫帰属制度の最大のデメリットは、手数料や負担金が必要なことです。
通常、土地を売却する場合、土地の価値に見合う代金が手に入ります。しかし、この制度では、売却益を得ることができないだけでなく、逆に手数料や負担金を支払わなければなりません。
また、土地の要件を満たすために必要な工事などの費用がかかる場合もあります。
7-3.引き渡しまでの時間や手間がかかる
相続土地国庫帰属制度では、土地の引き渡しまでに時間や手間がかかることもデメリットです。
土地を国に引き取ってもらうには、要件を満たしている土地かどうかを申請や審査の過程で確認します。仮に承認されたとしても、実際に土地の所有権が国に移転するまでには、それなりの時間と手間がかかります。
また、申請前には土地の権利関係を整理し、申請者の所有権のみが登記されている状態にしておかなければなりません。事前の準備にも手間が必要となるかもしれません。
8. 相続土地の扱いに困った時のその他の手段
相続土地国庫帰属制度を利用するには、土地が定められた要件をクリアしている必要があり、承認されない場合もあります。
しかし、ほかにも相続した土地を手放す方法はいくつかあります。ここでは、相続した土地の扱いに困ったときのその他の手段についてご紹介します。
ただし、それぞれに長所と短所があるので、相続した土地の状況に応じてよく検討するようにしてください。
8-1.遺産を分割する
もし土地を相続したいと希望する相続人があれば、協議によって遺産を分割することができます。国庫帰属制度のような手数料や負担金は発生せず、それぞれの相続人の意思を尊重できます。
ただし、活用が難しい土地は通常、誰も相続したがらない傾向があります。また、土地の維持管理費がかかるため注意が必要です。
8-2.売却する
もし土地に買い手が見つかって売却できるようであれば、売却代金を得られ、維持管理費用もかからなくて済みます。相続土地国庫帰属制度に比べ、手数料や負担金の支払う必要ないので、経済的に助かるでしょう。
ただし、やはり活用の難しい土地の場合は買い手が見つからないことが多いため、見つかるまでの税金や維持管理費を負担しなければなりません。
8-3.相続を放棄する
相続を放棄すれば、土地も手放すことができます。もし亡くなった被相続人に債務(借金)があれば、それも相続せずに済みます。
ただし、相続放棄をすると、預貯金などほかの遺産も相続できなくなるので注意が必要です。
また、相続した土地を自ら管理していて相続放棄する場合は、ほかの相続人または相続財産管理人が管理を始めるまでの間、引き続き管理を続ける必要があります。
8-4.本当に土地活用できないか確認する
相続した土地を手放したい場合、活用できる方法がまったくないと思っているからかもしれません。本当に土地活用ができないか確認してみることも重要です。
以下の記事では、おすすめの土地活用の方法について詳しくご紹介しています。参考にしてみてください。
土地の形や広さ、エリアなどのニーズによっては、有効な活用方法があるかもしれません。そうした場合は、土地活用のプロに相談してみるのもおすすめです。
「HOME4U 土地活用」では、土地活用会社をご紹介しています。土地の情報を入力することで、土地活用をサポートする企業を見つけられます。
9. 相続土地国庫帰属制度に関する主な相談先
相続土地国庫帰属制度は、申請や要件が複雑です。一般の方が申請して、土地の承認を得られるまでは、かなり難しい手続きが必要です。そうした時は、申請書等の作成代行が認められている専門家を活用することもおすすめです。
法務省のホームページ「相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について」には、申請書等の作成について活用が認められている専門家が紹介されています。
ただし、依頼する場合は別途、専門家への報酬がかかることも理解しておきましょう。
9-1.弁護士
遺産相続の手続き全般について相談できるのが弁護士です。相続土地国庫帰属制度の申請書の作成代行も含めて、遺産相続に関する対応全般を一括して任せたい場合は頼りになります。
特に対立が生じた遺産分割協議の調整や、調停・審判について取り扱えるのは弁護士のみです。相続トラブルに備えたい場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。
9-2.司法書士
司法書士にも相続の手続きについて相談できます。司法書士は登記手続きを得意とするため、相続土地国庫帰属制度に申請書を作成する場合も代行などを相談してみると良いでしょう。
ただし、原則として遺産分割協議の調整などの紛争解決に関する業務は、司法書士には取り扱うことができません。
9-3.行政書士
行政書士にも、相続土地国庫帰属制度の申請書を作成代行することが認められています。官公署への提出書類の作成や手続きの専門家なので、申請書類の作成代行も依頼するとスムーズです。
9-4.土地家屋調査士
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記について、必要な土地・家屋の調査や測量を行う専門家です。
相続土地国庫帰属制度においては、申請を検討している土地の所在や境界に不明瞭な点がある場合などは、申請に先立って土地家屋調査士に相談することができます。
なお、相続土地国庫帰属制度に申請する前に、土地活用の可能性をもう一度確認してみるのもおすすめです。以下の記事では、土地活用のプランを一括比較できる「HOME4U」のサービスについて、詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
10.相続土地国庫帰属制度は申請前によく確認を
相続土地国庫帰属制度を利用すると、土地活用が難しい土地や管理に手間がかかる土地などを相続した場合に、国に引き取ってもらうことができます。
土地を手放すことで、税金や維持管理費、手間などから解放されますが、相続した自身や家族の事情などを確認する必要があります。なるべく早い段階で専門家へ相談することもおすすめです。
相続土地国庫帰属制度のポイントは以下のとおりです。
- 相続した土地を国に引き取ってもらえる制度
- 活用できない土地を手放すことができる
- 申請された土地を法務省が審査する
詳細は「相続土地国庫帰属制度(法)とは」をご一読ください。
相続土地国庫帰属制度の申請は、以下のような手続きとなります。
- 法務局への相談
- 申請書類の作成・提出
- 法務省による審査
- 負担金の納付と国庫帰属手続き
詳しくは「相続土地国庫帰属制度の申請手続き」で紹介しています。
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