【詳しく解説】木造と鉄筋の違いとは?収益物件を建てる際の構造の選び方
土地活用でアパート経営やマンション経営を始めるにあたって、「木造か?鉄筋か?」という構造の選択はその後の賃貸経営にも大きく影響します。
本記事は木造と鉄筋(鉄筋コンクリート造)について、収益物件建築の視点から徹底的に比較します。
この記事を読むと、
- アパートで採用される主な構造は木造、鉄骨造
- 音漏れは木造でも問題ない
- 構造比較は経営プランで比較すると成功する
といったことがわかります。
アパート建築を検討されている方は、まずは建築会社に相談してみることをお勧めします。その前に、「HOME4U土地活用」で建築会社ごとのアパート建築プランを比較してみましょう。
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【比較表】木造と鉄筋の違い
木造と鉄筋の建物には、使用する建材がもたらす違いのほかにもさまざまな異なる点があります。
また、鉄筋は建物構造において、鉄骨造と鉄筋コンクリート造に分けられます。まずは木造と鉄筋の違いを表にして比較しました。
アパートの構造について詳しくはこちらでも解説しています。
1-1.初期費用の違い
賃貸経営を始める際の初期費用の大部分は、建築費用が占めます。
初期費用を抑えて賃貸経営を始めるなら木造がおすすめです。アパートなど建築費の坪単価相場をまとめました。
構造 | 坪単価 |
---|---|
木造(W) | 77~100万円程度 |
鉄骨造(S) | 80~120万円程度 |
鉄筋コンクリート造(RC) | 90~120万円程度 |
※坪単価相場はHOME4U調べ
例えば、延床面積200坪の建物の場合、木造で1億5,400万~2億円、鉄筋コンクリート造で1億8,000万~2億4,000万円です。
初期費用はこれに加えて付帯工事費や諸費用がかかります。延床面積が広くなればその分差は大きくなるため、初期費用を抑えて始めたい場合は木造を選択するのが一般的です。
1-2.防音・遮音性能の違い
木造 | 鉄筋 | |
低い | 防音性能 | 高い(軽量鉄骨造は低い) |
多くの場合が使用される木材に厚みがさほど取れないため、構造的な防音性能は低い。ただし、各メーカーでは防音ダンパーや遮音壁などを開発しており、そん色ないほどに至っている。 | 遮音の仕組み | 重量鉄骨造:使用される鉄骨造が太いため、床や壁に厚みがとれ、遮音性が高めやすい。 鉄筋コンクリート造:構造自体がコンクリートの面で支えているため、遮音性が高い。 |
賃貸集合住宅では音漏れなどを気にする借主が多く、木造にネガティブなイメージを持っている場合があります。
一般的には木造の防音性能は鉄筋に劣るとされていますが、防音ダンパーや遮音壁の採用によって、木造でも高い防音性能を備えた集合住宅が増えています。
1-3.耐震性の違い
木造 | 鉄筋 | |
低い傾向 | 耐震性能 | 高い傾向 |
建物の耐震性能は建築基準法で厳しく基準が定められています。したがって、耐震性能は木造も鉄筋も十分保たれていると考えてよいでしょう。
ただし、構造によって揺れ方には違いが出ます。木造の場合、建材の特性上揺れが大きくなる傾向です。そのため、中高層には採用されません。
集合住宅の建築では、多くのハウスメーカーが耐震性能を高める独自の技術を開発しており、標準設備として導入しています。
1-4.耐用年数の違い
構造 | 耐用年数 | 定額法償却率 |
---|---|---|
木造 | 22年 | 0.046 |
軽量鉄骨造 | 19年(厚み3㎜以下) 27年(厚み3㎜超4㎜以下) |
0.053 0.038 |
重量鉄骨造 | 34年 | 0.030 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 |
上表はアパートの減価償却期間と減価償却率を構造別に示したものです。
建物は構造別に法定耐用年数が定められています。
法定耐用年数は、税務上の価値がなくなるまでの期間である減価償却期間と同じ年数です。減価償却期間が短いと1年当たりの減価償却費は大きくなるため、早い段階で経営の軌道に乗せやすくなります。
木造は耐用年数期間が短くとも減価償却費を大きくしたいときに向く構造であり、鉄筋(鉄筋コンクリート造)は長期的経営を目指している場合に向く構造です。
1-5.工期の違い
木造 | 鉄筋コンクリート造 | |
短い傾向 | 工期 | 長い傾向 |
加工がしやすい建材を用いるため、工期は最も短い。 また、規格化しているユニット工法を選べることも工期短縮につながる。 |
理由 | 木造より重量のある建物を支えるために基礎工事の時間がかかる。 また、現場でのコンクリート打設があることも工期がかかる要因。 |
工期が長くなることは、土地活用を始めるにあたってはデメリットになり得ます。その期間の収入がゼロになり、収入を得る以前に借入金の返済が始まる可能性があるためです。
工期は鉄筋コンクリート造のほうが長くなる傾向です。規模にもよりますが、鉄筋コンクリート造で半年程度、木造で3~5ヶ月程度と見積もっておくとよいでしょう。
2.木造と鉄筋のメリット・デメリット比較
建物の構造を選ぶにはメリット・デメリットで比較したうえで、どの部分を重視するかを決めて選択するのがおすすめです。ここでは、メリットでの比較、デメリットでの比較で違いを浮き彫りにします。
2-1.メリット比較表
構造別メリット比較表 | |
木造 | 鉄筋 |
|
|
メリットを比較するとそれぞれの構造が向いている土地や向いている経営方針が見えてきます。狭小地や変形地などは設計に柔軟性のある木造が向いているのに対し、鉄筋コンクリート造は耐震性や耐久性の高さから中高層が建てられるようなまとまった土地が向いているといえるでしょう。
また、減価償却の観点からは全く逆のポイントがそれぞれのメリットになり得ます。木造は経営を早期に軌道に乗せたい人向き、鉄筋コンクリート造は長期運用を念頭に置いている人向きです。
2-2.デメリット比較
構造別デメリット比較表 | |
木造 | 鉄筋 |
|
|
デメリットに対しては、事前の備えが重要です。
例えば、木造であれば、十数年後のシロアリ被害を想定した積立や修繕費の備えが重要になるでしょう。鉄筋コンクリート造では事前に建てられる土地であるかをしっかり調査し、長期経営プランを十分吟味することが重要です。
3.【ケース別】木造と鉄筋の選び方
木造か鉄筋かを選ぶには土地の特性をしっかり把握する必要があります。ここでは、土地の特徴や条件から見た構造の選び方を紹介します。
3-1. 狭小地は木造
狭小地では周辺環境への影響もあり、重機が使えないことも多くあります。その場合、工期に影響があるため木造を選ぶのが一般的です。
また、土地の利用が難しい狭小地や変形地は空間を最大限利用できる、設計に柔軟性のある木造を選ぶ傾向にあります。木造は加工がしやすいため、土地の形状に合わせた設計への対応が得意です。
3-2.防火地域など建築規制対応は鉄筋
土地によっては木造で建てられないケースがあります。防火地域に指定されているエリアでは、耐火構造の基準値が厳しく、耐火性が高いとはいえない木造では基準を満たせない恐れがあるためです。
こうしたエリアでは高い性能の優れた鉄骨造か鉄筋コンクリート造を選択します。耐火性能の基準は、建築基準法に基づきます。
木造であっても不燃処理をした建材を使用する、避難経路を確保する、といった条件を満たせば建築が可能です。しかし、対応が高額になるケースもあり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造を選ぶことが多いでしょう。
3-3.将来的にリフォームしたいなら木造
アパートなど収益物件でも、リフォームで需要に応えるケースが増えています。中には部分的なリフォームだけでなく、スケルトンと呼ばれるようなリノベーションを施すケースも見られます。
間取りを変更するような大規模なリフォームの場合、鉄筋の構造を採用している建物より、木造のほうが対応しやすく安価に済みます。鉄筋コンクリート造などは耐久性があるものの、構造的に動かせない壁や梁もあるため、リフォームの際に制限を受けることもあります。
3-4.中高層対応なら鉄筋
建物の構造にはそれぞれ、おおよそ対応可能な階数が決まっています。木造の対応可能な階数は2~3階となるため、中高層の建物は一般的に建てられません。建築基準法に抵触する可能性もあります。
中高層階の建物を建てられる土地であるなら、建物構造は一般的に鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造、重量鉄骨造から選びます。鉄筋コンクリート造の場合、4~8階程度まで対応が可能です。
3-5.長期安定経営なら鉄筋
鉄筋の建物は高い耐久性を誇ります。減価償却期間も鉄筋コンクリート造の集合住宅では47年と長期です。減価償却は期間中実際にはない支出額を計上でき、経営の助けとなります。
賃貸経営を長期にわたって安定させたいという意向がある場合は、鉄筋での建築が経営には有利です。維持費はかかるものの、経年劣化や害虫被害による修繕リスクなども木造より安く済みます。
木造・鉄筋どちらがいいか判断が付きにくいという方は、建築会社に相談してみましょう。「HOME4U土地活用」を使えば、土地情報を入力することで、一度に最大10社の建築会社に見積もりや最適な構造などが含まれた、「アパート建築プラン」を取り寄せることができます。
4.「木造アパートはやめておけ」とならないための注意点
木造アパートは建築費が安く、居住空間の快適性が高いというメリットがある一方で、経年劣化、家賃下落リスクが早く訪れるといったデメリットがあります。ここでは「木造アパートはやめておけ」とならない経営にする方法を紹介します。
4-1.家賃減額リスクに備える
アパート経営の最大の敵は空室リスクです。特に木造アパートでは経年劣化が早いこと、遮音性に不安があるという先入観から、空室リスクは早々に備えておく必要があります。
空室リスクを軽減する方法のひとつが家賃の減額です。しかし、家賃を減額すると収入が減るため、経営に影響があります。木造アパートの場合、減価償却期間が22年と鉄筋に比べ短く、減価償却がなくなったタイミングで家賃を下げなければならないと経営が傾きかねません。
そのため、早い段階から家賃下落のリスクに備えておくことが肝要です。
4-2.修繕費対策をする
集合住宅の建物は一般的に新築から10~15年で初めての大規模修繕を迎えます。その間にも小さな修繕が発生する可能性もありますが、修繕の回数は木造アパートのほうが多い傾向です。
アパートの修繕費は、大規模修繕で数百万~1千万円程度かかります。そのため、来るべき大規模修繕に備えて初期の段階から修繕積立をしておくことをおすすめします。
4-3.複数のハウスメーカーの建築プランを比較検討する
ハウスメーカーや建築会社にはそれぞれ、得意とする構造があります。木造か鉄筋かの選択は各企業の提示する経営プランを比較することでさまざまな可能性を考慮できるでしょう。
そのためには複数のプランを比較することが大切です。プランの一括請求では、「HOME4U 土地活用」をご活用ください。専用フォームに1度入力するだけで、最大10社からプランの提示を受けられます。広い視野で検討して最適な建築プランを見出してください。
木造のメリットには以下のような点が挙げられます。
- 建築費が安く済む
- 工期が短い
- 狭小地に対応しやすい
- 1年当たりの減価償却費が多い
- 居住空間の快適性が高い
鉄筋のメリットは以下の通りです。
- 耐震性に優れている
- 耐久性が高い
- 耐火性に優れている
- 減価償却期間が長い
- 設計の自由度が高い
それぞれのメリット・デメリットは「木造と鉄筋のメリット・デメリット比較」で解説しています。
木造が最適なケースにはいかのような土地が挙げられます。
- 狭小地である
- 将来的にリフォームを検討している
また、鉄筋がよいケースには以下のようなケースが挙げられます。
- 防火地域など建築規制対応が必要
- 中高層の規模が建てられる
- 長期安定経営を目指している
具体的な解説は「【ケース別】木造と鉄筋の選び方」をご一読ください。
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