貸家建付地とは?相続税対策をするなら知っておきたい貸家建付地の基本を解説
相続すべき土地や不動産があり、相続税対策のことを調べていると「貸家建付地(かしやたてつけち)」という言葉が出てきます。
本記事では、貸家建付地の概要と、貸家建付地での相続税対策をお考えの方向けに、制度を適用すべきかなどの判断基準を含めて解説しています。
なお、貸家建付地で土地活用をお考えの方は、相続・節税についてもあわせて相談できる土地活用会社に依頼することをお勧めします。
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1.貸家建付地とは
ご自分が所有する土地に賃貸物件があると、その土地は「貸家建付地」です。
例えば、ご所有の土地でアパートを建てて賃貸経営をすれば、その土地が「貸家建付地」になります。
相続財産の中に、アパートやマンションのような人に貸している建物がある土地は、「自分の好きにできないため、土地の使い勝手が悪い」と評価され、相続税の評価額が減額されます。
そのため、将来の相続税対策として、ご所有の土地にアパートやマンション、戸建ての貸家などを建てて人に貸しておくのは、税金対策として有効な方法です。
2.貸家建付地で相続税対策をする3つの判断基準
アパートやマンションを建てて、ご所有の土地を貸家建付地にし、将来の相続税対策に備えようとお考えの方向けに、3つの判断基準を設けました。
- 支払うべき相続税額がある
- アパート経営を引き継ぐ人物がいる
- 相続争いが起きない
2-1. 相続争いが起きない
相続が発生した際に、相続財産の総額が基礎控除額である3,000万円を超えない場合、相続税の支払い義務はありません。
相続税の支払い計算式は「基礎控除3000万円+(法定相続人の数×600万円)」です。相続人が0人でも、基礎控除額は3,000万円です。
ご所有の資産総額が、現金換算したときに3,000万円を超える場合には、早めに相続税対策をしておく必要があります。
特に、その資産のほとんどが現金である場合には、貸家建付地にすることで、大きく節税ができます。
貸家建付地による税金対策をご検討の場合、まずは、資産の整理と確認をしてください。
2-2.アパート経営を引き継ぐ人物がいる
貸家建付地で相続税対策をする場合には、ご所有の土地にアパートやマンションなどの、人に貸すための物件が必要です。
現時点で何もない場合には、新しく賃貸用の建物を建てておき、賃貸経営をしている必要があります。
しかし、賃貸経営は平均で経営期間が20~40年と長期にわたります。
せっかく相続税対策のためにアパートやマンションを建てても、アパート経営そのものが相続人にとって負担になるのであれば、他の相続税対策を選んだ方が良いと言えます。
アパートやマンションの運営管理は、良質な不動産管理会社に任せれば、多くのことを代行してもらえます。
しかし、物件オーナーとして、支払い計画や税金支払いなど、やるべきことは数多くあります。
特に、相続人に会社員などの本業がある場合には、相続をすることによって自動的に副業が始まりますので、そのことが大きな負担になる可能性もあります。
アパート経営などの貸家建付地は、相続税の対策としては有効な手段ですが、相続後には黒字経営を続けられることが大前提であることを、よく考慮の上で選択してください。
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2-3.相続争いが起きない
相続人が複数人いる場合、相続の際の遺産分割協議のことも想定しておいてください。
例えば、相続人が3人いるのに、相続財産のほとんどが貸家建付地であった場合、不動産は現金のようにきっぱりと割ることができないため、経営中の賃貸物件は、結局は誰か1人の所有になるか、売却されて現金で分けることになります。
こうなってしまうと、いったい何のために貸家建付地にまでして、苦労して相続税対策をしたのかがわからなくなります。
ひどい場合は、遺産分割協議が元で、相続人同志が争いになる可能性も出てきます。
貸家建付地での相続税対策をする場合には、不動産のほかにも相続できる現金やその他の資産を用意するか、相続人それぞれに残せる賃貸物件を用意しておくなど、「争族」にならないための対策も必要です。
3.賃貸経営をしても貸家建付地にならない4ケース
以下のような賃貸物件は、貸家建付地の要件に満たないため、制度の適用ができませんので注意してください。
- 駐車場や倉庫など
- 親族などに無償や格安家賃で貸している
- 経営している物件に空室が多い
- 経営開始から3年未満の場合
3-1.駐車場や倉庫など
貸家建付地は住居に対する制度ですので、車や荷物などのような、モノのために借りる物件には適用されません。
ただし、アパートやマンションに住んでいる方が専用に使う駐車場であれば、物件と駐車場とが一体だと考えるため、貸家建付地になります。
3-2.親族などに無償や格安家賃で貸している
親の建てたアパートやマンションの一室を、子供が住むことはよくあります。
多くの場合、賃料は無料か格安になっていることが多いと思いますが、相続税対策で貸家建付地としての評価をしてもらいたい場合は、きちんと賃料をとるようにしてください。
貸家建付地として評価されるポイントは、賃貸経営として成立するかどうかです。
そのため、最低でも固定資産税や運営コストを、物件数で割った値段よりも上回っている必要があります。
一般的な経営コストは、賃料収入の1~2割以内ですので、賃料が10万円であれば8万円以上の賃料は必要です。
自治体によっては経営上の利益が出ていればよいとするケースもありますが、あくまで担当者による判断ですので、確実に貸家建付地としたいのであれば、一般賃料の8割はもらうようにしてください。
無償や格安賃料の場合は、「親の敷地内に家族が住んでいる」とみなされ、親の自用となり、貸家建付地ではなくなります。
3-3.経営している物件に空室が多い
貸家建付地は「人に貸している土地は所有者の自由にならない部分が多い」という配慮から、評価額が減額されるため、適用を受けるためには継続的に賃貸経営がされている必要があります。
例えば、アパートを建てて入居者募集をしない、空室が出ても新規の入居者を募集しないなど、本来の賃貸経営とはかけ離れた状態の場合には、相続税対策のためだけにアパートを建てたとみなされ、制度の適用がされないことがあります。
土地活用としてアパート経営をしていても、空室が出てしまうことはあります。
しかし、賃貸経営がうまくいくように適切な対応をしていれば、経営内容が原因で適用外になることは少ない傾向にあります。
3-4.経営開始から3年未満の場合
相続税の際に貸家建付地による評価額減額をするためには、土地に建っている賃貸物件で、丸3年以上の経営実績が必要です。
これは、相続税対策のためだけ、貸家建付地にするためだけに、賃貸物件を建てたのではないことを証明するために設けられたルールです。
経営に丸3年ということは、計画や建築に1年程度はかかりますので、相続の想定時期より4年以上前に行動をし始める必要があります。
相続のことが気になり始めたら、早急に土地活用プランを請求しておくと、相続税対策がスムーズになります。
4.貸家建付地に関したよくある5つのギモン
貸家建付地は相続に関した制度であるため、普段はあまり耳にすることがありません。
本章では、貸家建付地に関して、よくある疑問や質問を5つにまとめています。
- 「小規模宅地の特例」ってなんですか?
- 経営するアパートやマンションに自分や家族が住んでもいいの?
- 土地を持ってなくても貸家建付地で相続税対策はできる?
- どのくらい前から相続税対策をしておけばよいの?
- どんなアパートやマンションを建てればよい?
4-1.「小規模宅地の特例」ってなんですか?
A:高額な相続税負担から遺族を守るための制度です。
「小規模宅地の特例」とは、住んでいた土地や事業をしていた土地に相続が起きたとき、相続税の支払いによって大切な家や事業を失うことが無いようにするための制度です。
遺族が住むための土地、事業を続けるための土地に対し、一定の面積まで課税価格から減額できます。
アパートなどが建っている土地は貸家建付地ですので、土地の上で事業をしている貸付事業用宅地として、「小規模宅地等の特例」が適用されます。
土地の最大面積は200平米、減額割合は最高50%まで評価減されます。
つまり、土地活用としてアパート経営をしていると、相続の際には1つの土地に2つの減額制度が適用できますので、大きく節税できます。
相続税対策を含めた土地活用、アパート経営をご検討中の方は、ハウスメーカーや建築会社の担当者に相談をして、相続税対策としても、土地活用としても利益が最大化されるように、早めの準備をはじめてください。
4-2.経営するアパートやマンションに自分や家族が住んでもいいの?
A:住むのは問題ありませんが、一般的な賃料である必要があります。
親が建てたアパートに、子供たちが住むことはよくあります。
貸家建付地の適用は、賃貸経営をしていることが前提ですので、家族が賃貸物件に住んでいても、一般的な金額での家賃支払いをしていれば問題ありません。
貸家建付地の適用には、アパートやマンション全体の貸付割合をみるため、誰が借りていても、適切な賃料が発生してさえいれば「賃貸経営がされている」とみなされます。
ただし、親族間の賃料は格安や無料になることが多いので、最低でも、1物件あたりの税金と経費負担分が賄える金額設定にしておく必要はあります。
無料や相場よりもかなり安く貸している場合、貸家建付地の適用ができなくなるので注意してください。
アパート経営でサブリース契約という、賃貸管理のすべてを委託し、毎月決まった金額を受け取る経営方法をとった場合は、サブリース会社が全室をオーナーから借りていることになりますので、空室状況に関係なく、貸付割合100%(空室0運営)になります。
4-3.土地を持ってなくても貸家建付地で相続税対策はできる?
A:土地を新たに購入すれば、できます。
現在の資産に現金などの金融資産が多く、ご自宅以外に不動産をお持ちでない場合でも、以下のような方法で貸家建付地を活用した相続税対策ができます。
土地を購入して、そこにアパートなどを建築する。
土地を購入し、そこに土地活用としてアパート建物などを建てます。
相続税対策として貸家建付地の適用をするためには、賃貸経営中である必要がありますので、かならず入居者募集をしてアパート経営をしてください。
この方法は、現金資産が多い方以外にも、ご所有の土地が賃貸経営に向いていない土地条件の場合に、今持っている土地を売却し、賃貸経営に適した土地を購入しなおして、アパート経営を始めるのにも向いています。
完成しているアパート一棟を購入する
すでに完成している一棟建てのアパートやマンション、戸建てなどを土地建物ごと購入する方法です。
土地がついていないと貸家建付地にならないので、注意してください。
賃貸経営に向いた土地条件や間取りなどの条件がそろっている必要はありますが、物件をゼロから作る労力が不要で、貸家建付地での節税の準備がはじめられます。
ただし、売却をしているアパートは中古であるケースが多く、経年劣化による修繕費用などのコストがかかる可能性があります。
さらに、経営が良好な賃貸物件は売りに出される可能性が少ないため、土地条件や経営状態は精査する必要があります。
4-4.どのくらい前から相続税対策をしておけばよいの?
A:気になったらプラン請求だけでもしておく方がよい
貸家建付地の適用は、相続開始前3年以上の経営実績が必要です。
これは、相続が始まる直前に不動産を購入し、相続税を大幅に減らすなどの相続税の抜け道策を防止するためのものです。
ただし、親が経営していた賃貸物件を、相続で引き継いだ場合には、相続前の運営期間が3年以内でも貸家建付地として認められます。
土地活用でのアパート経営の場合、経営期間3年に加え、計画段階から建築期間までを考慮しておく必要があり、最低でも4~5年前に動き出しておく方が、余裕を持った相続税対策ができます。
建築期間が半年~1年程度、経営期間が3年ですから、合計4年が必要です。
その前の段階の、建築プランを選ぶなどは、相続が気になりだしたときにプラン請求をしておけば、必要なときにすぐ動けるようになります。
4-5.どんなアパートやマンションを建てればよい?
A:たくさんの建築プランを比較してみてください
ご自分の所有地であっても、どんな建物でも自由に建てられるわけではなく、建築条件や土地の法的な条件をもとに、建てられる建物が決まっていきます。
アパートやマンションを建てる場合には、まずはご自分の土地のルールを確認し、エリア条件などを考慮した土地活用方法を絞り込む必要があります。
貸家建付地で相続税対策をしたい場合でも、アパートやマンションを建てた後の、経営のことまで含めて判断する必要があります。
せっかく賃貸物件を建てても、その後の賃貸経営がうまくいかない可能性が高ければ、他の相続税対策を検討した方が良いケースもあります。
ご所有の土地にどんなアパートやマンションが建てられるのかは、ご自身で調べるよりも、NTTデータグループの運営する「HOME4U 土地活用」の一括プラン請求で、たくさんの建築プランを比較してみることをおすすめします。
法的な条件以外にも、エリアニーズ・ライバル物件、これから先の開発計画などを土地活用のプロが調べたうえで、最も適している土地活用方法を提案してくれます。
相続税対策として検討している場合には、プラン請求の画面で質問に答えていく際に、相続に関した箇所にチェックをいれておけば、担当者が適切な提案をしてくれます。
一回の入力で最大10社にまでプラン請求ができますので、一度にたくさんのアパートやマンションの建築プランの比較ができますので、たくさんのプランに目を通していくうちに、「うちの土地にはこういうものが建てられそうだ」という具体的なイメージがつけられるようになります。
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