この記事の監修者
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岩井佑樹
所属 合同会社ゆう不動産 代表社員
熊本市空き家相談員
職業 宅地建物取引士
不動産会社兼Web記事制作会社経営。不動産売買専門×不動産Webライターの強みを活かし、情報発信と販売力で安心の取引を実現。今まで作成した不動産関連記事は1,000記事以上作成。「どんなことで悩んでいるのか」「どんなことを知りたいのか」など、読み手の気持ちに寄り添って記事を書くように心がけている。
相続などで土地を取得すると、固定資産税もかかることから土地活用を検討する方も多いと思いますが、その中でも最初の活用として「初期投資を抑えながらアパート経営を始めたい」と考える方も多いのではないのでしょうか。
確かに初期投資を抑えることで当初の資金負担は軽減されます。
しかし長期的な経営や利益を見据えると、入居者の満足度・安全面などの理由から、初期コストより品質に問題ないことが極めて重要な点となります。
そのためローコストアパートの建設を検討する際には、初期投資に要する費用と長期的な収益性のバランスを慎重に検討することが必要です。
この記事では、ローコストアパートのメリット・デメリットについて解説するとともに、アパート建築で評判の高いおすすめの会社10選などについてご紹介します。
この記事を読むと、
といったことがわかります。
この記事の内容
はじめにローコストアパートを建てられる理由や、ローコストアパートを建てるメリット ・デメリットについて解説します。
まずローコストアパートを実現できる理由としては、以下の3つのような点が挙げられます。
建物外観は複雑な形状や凝ったデザインを避け、長方形などのシンプルな形状を採用することで、設計や施工の手間を削減し資材の無駄も少なくできます。
加えて、共用部の設備は最小限に抑えることでコストを抑えることが可能です。
ローコストのアパートを建築する際は部屋の内装や設備(キッチン、バス、トイレなど)にハイスペックなものは採用せず、必要十分な機能を持つ汎用品を選択しましょう。
これにより初期費用だけでなく、将来の修繕・交換費用も抑えることも可能になります。また建物の規模が大きいと水回りの設備なども増え建築費が高くなるため、適切な部屋数で設計しましょう。
十分な品質を考慮する必要がありますが、ローコストアパートを建てるメリットとしては以下の4つが挙げられます。
ローコストアパートは一般的なアパートに比べて建築費用を安く抑えられるため、自己資金が少なくてもアパート経営を始めやすいのが何よりのメリットです。借り入れ額も抑えられるため、返済負担を軽減できます。
投資における利回り(収益性)は家賃収入を投資額で割って計算しますが、ローコストアパートは建築費用が低いため利回りが高くなり、効率的に利益を出せる可能性が高い傾向にあります。
そんな建築費用が安いアパートの仕様・設備はグレードが高くないこともあり、家賃を一般的なアパートの相場よりも比較的安価に設定する傾向が見受けられます。家賃が安いことは入居者にとって魅力的であるため、入居者を確保しやすく空室期間を短く抑えることにつながるのです。
また、事業の出口戦略が立てやすいのもメリットの一つです。初期投資を抑えやすいローコストアパートは、売却時の価格も比較的抑えられ、買い手を見つけやすい傾向があります。
逆に、ローコストアパートを建てる際にデメリットとして挙げられるのは、以下の3つです。
コストを抑えるために、建材や設備は規格化された汎用品が使われることが多く、建物のデザインや間取りの自由度は低くなりがちです。 そこで、すべてを安価なものにするのではなく、ターゲット層が重視する設備や内装に絞って、少しグレードアップしたものを採用するとよいでしょう。
例えば、入居者ニーズの高い、「エアコン」や「テレビモニター付きインターホン」にはこだわるなどです。「アクセントクロス(壁紙)や、デザイン性の高い照明器具など、安価でも部屋の印象を大きく変えられるものを取り入れるのもおすすめです。 コストを抑えようとして断熱材や遮音材を最低限の仕様にすると、入居者から寒さ・暑さや騒音に関するクレームが発生するリスクがあります。
外部に面する壁・窓・天井といった熱の出入りが特に多い部分は、断熱材の品質を下げすぎないようにしましょう。 また耐久性の低い建材や設備を選ぶと、将来的に修繕費用や維持管理費がかさむ可能性があります。 例えば給湯器の場合、耐久性の高いものを選べば故障のリスクが減り、交換頻度を抑えられます。
前述にありますように、ローコストアパートは初期投資を抑えて高い利回りを期待でき、家賃の優位性や売却時の出口戦略の面でも魅力があります。
しかしその一方で、建物のデザインや性能、将来的な修繕コストといった課題も無視できません。 したがって、コストを下げる部分と品質を確保すべき部分を見極め、入居者が重視する要素には適切に投資することが重要です。 価格だけでなく長期的な経営の安定性を見据えて判断するようにしましょう。
アパートを建てる際には、まず構造を木造か鉄骨造のいずれかから選ぶことになりますが、坪単価を左右する重要な要素となっています。
以下が木造と鉄骨造の費用と特徴の比較になります。
比較項目 | 木造 | 鉄骨造(軽量鉄骨造) |
---|---|---|
費用目安 | 1坪あたり70万円〜100万円 | 1坪あたり80万円〜100万円程度 |
特徴 | ・断熱性・調湿性に優れている ・設計の自由度が高い ・法定耐用年数は22年 ・ほかの構造に比べて遮音性が低い |
・木造に比べて耐久性に優れ、耐震性も高い ・法定耐用年数は19年~34年 ・断熱性は木造に劣る |
木造は建築費が比較的安く、ローコストアパートに適していますが、耐久性や遮音性で劣りがちです。
一方、鉄骨造は耐震性や耐久性に優れるものの、建築費が高くなりやすい点がデメリットです。ローコストを重視する場合でも、このような構造の違いによる初期費用や維持管理コスト、入居者ニーズを総合的に検討することが重要です。
建物の構造によって定められている「法定耐用年数」は、アパート経営のキャッシュフローを左右する「減価償却費」に直結します。減価償却費は、建物の取得費用を耐用年数に応じて経費として計上できる制度です。法定耐用年数が短いほど単年あたりに計上できる減価償却費が多く、利益を圧縮できることから節税効果が大きくなります。建物構造の選択は、アパート経営の収益性にも影響することを理解しておきましょう。
ローコストアパートの建築会社を選ぶ際は、費用面だけでなく、施工品質や保証内容、アフターサービスなども重視することが大切です。
確かにコストを抑えることは魅力ですが、長期的な収益性や経営の安定を考えると、品質やサポート体制の充実が結果的に経営を安定化し、資産価値を維持することにつながります。ここでは、ローコストアパート建築に適した会社の選び方と、総合的におすすめできる建築会社を切り分けてご紹介します。
アパートの建築会社選びは、アパート経営の成功を左右する重要なプロセスです。コストを抑えつつ、アパート建築・経営に失敗しないためのポイントは以下のとおりです。
ローコストのアパートを建てたいといっても、安全性や防音トラブル対策、住みやすさにつながる施行品質が損うようなプランはおすすめしません。結果安定した収入につながるので、信頼できる実績があるか良く確認することをおすすめします。
また建てたい土地の周辺にある競合物件の家賃や設備、ターゲット層を分析し、入居者が集まりやすい間取りや設備を提案してくれるかどうかも確認しましょう。「建築」だけに限らず建築主のこだわりや要望に対して、代替案や解決策を一緒に考えてくれる柔軟な姿勢を持ってもらえるかは非常に重要です。 建築費用を考えるときは、契約時に提示される本体工事費だけで判断するより、全体でかかるサービスと費用を総合して検討しましょう。
ほかにも実際には外構工事・設計費・登記費用などが必要となり、建築後も管理委託費や修繕・設備交換などの維持費が発生します。 「最初に安く建てられるか」だけではなく、建てた後にもどれくらいお金がかかるかまで含めて比較することが大切です。アパート経営は建物を建てて終わりではありません。長期にわたって維持・管理していく必要があるため、アフターサービスと保証体制が整っているかどうかも見極めのポイントです。
次にアパートを建てる際におすすめできる、信頼性やコストパフォーマンスが高い建築会社10社をご紹介します。
実際のアパート建築費用はそのハウスメーカーの商品内容や、坪単価・構造で大きく変わってくるので、まずは複数社の見積もりをして比較検討してみることをおすすめします。
その中で費用感に困った際は、前述のような建築会社選びのポイントで比較してみてください。
※横スクロールで表の内容が確認できます。
会社名 | 主な事業概要 | 実績 | 年間売上高(万円) | ブランド例 | アパートの特徴 | アフターサポート |
---|---|---|---|---|---|---|
大東建託 | ・賃貸物件・アパート建築 ・不動産の仲介・管理 (一括借り上げ) ・ガス供給など関連事業 |
約4万戸 (2023年度完成戸数) *1 |
約5,083億円 (2024年度) *7 |
ニューデフィ | コンパクトながらも 機能的な空間 |
・原状回復&修繕対応プラン (30年・35年プラン) ・緊急時対応の管理体制 ・事務作業支援 |
東建コーポレーション | ・土地オーナーの土地活用を支援 ・賃貸物件・アパート建築、入居者募集、管理 |
– | 1,181億円 (2024年度 ※アパートのみ完成工事高) *8 |
リバーヒルズ | 柔軟なカスタマイズで 多様なニーズに応える |
経営代行システム (最長35年間にわたり一定の賃料収入保証) |
朝日建設 | ・賃貸物件・アパート建築・土地活用 ・設計・施工・管理 |
734棟10,169戸 (2025年7月末現在) *2 |
90億円 (2024年度) *9 |
ジラソーレ | シンプルモダンな デザインが魅力 |
建物の専有部分・共有部分・設備機器について きめ細かく保証 |
積水ハウス | ・賃貸物件・アパート建築 ・戸建住宅・分譲マンションの建築 ・海外事業 |
約4.3万戸 (累積受注戸数) *3 |
5,449億円 (2024年度) *3 |
シャーメゾン | 確かな住み心地と 品質の賃貸住宅 |
・全国各地にカスタマーズセンター設置 ・独自の建物保証制度やリフォーム提案 |
旭化成ホームズ | ・賃貸物件・アパート建築 ・戸建住宅の建築 ・リフォーム事業 |
– | 4,195億円 (2024年度※一般住宅含む) *10 |
ヘーベルメゾン | ターゲット別にさまざまな 仕様の賃貸住宅 |
・30年一括借上げシステム ・60年無料点検システム |
ミサワホーム | ・賃貸物件・アパート建築 ・戸建住宅の建築 ・リフォーム事業 |
3,688戸 (2019年) *4 |
約476億円 (2019年度) *11 |
ベルリード | 入居者の暮らしやすさを 追求したデザイン |
・一括借上 ・構造体35年保証 |
パナソニックホーム | ・賃貸物件・アパート建築 ・戸建住宅の建築 ・リフォーム事業 |
– | 3,720億円 (2024年度※一般住宅含む) *12 |
ユアメゾン | 快適性と資産価値を 両立させた賃貸住宅 |
・35年初期保証 ・60年長期保証延長システム ・オーナー相談24時間365日受付 |
トヨタホーム | ・賃貸物件・アパート建築 ・戸建住宅の建築 ・リフォーム事業 |
– | 約924億円 (2024年度※一般住宅含む) *13 |
ティーメゾン | 高い耐久性と長期保証が特徴の 鉄骨造賃貸住宅 |
・60年長期保証 ・一括借上システム ・管理サポート |
ユニホー | ・賃貸物件・アパート建築 ・土地活用の提案 ・賃貸管理 |
賃貸マンション269棟、 賃貸アパート184棟 (2004年~2025年6月) *5 |
約356億円 (2024年度※一般住宅含む) *14 |
アプトココノ |
一人暮らし向け1DK |
・一括借上(契約期間10年) ・管理業務代行 |
大和財託株式会社 | ・賃貸物件・アパート建築 ・不動産投資コンサルティング ・賃貸管理 |
117棟 (2024年8月末まで ※関東木造物件竣工数) *6 |
220億円 (2024年度※グループ業績) *15 |
ジー・メゾン | 入居者の暮らしやすさと 高入居率を両立 |
・独自の家賃保証サービス ・一括借上 |
*1~*15の出典資料は記事末尾に掲載。
大東建託は、全国展開している日本最大級の賃貸住宅建築・管理会社です。アパート建築から入居募集、管理まで一括でサポートする「賃貸経営受託システム」が特徴で、オーナーにとって経営負担を軽減できるのが強みです。
東建コーポレーションは、賃貸住宅の建築から管理、仲介までワンストップで提供する大手建築会社です。土地オーナーに向けた「サブリースシステム」に強みを持ち、空室リスクを軽減しながら安定収益を確保できる点が魅力的です。
朝日建設は鉄筋コンクリート造(RC造)に強みを持つ建設会社です。高耐久・高遮音の賃貸マンション建築を得意としており、デザイン性と入居率の高さにも定評があります。
積水ハウスは住宅業界最大手の一社で、高品質な施工と充実した保証体制が強みです。賃貸住宅「シャーメゾン」シリーズは入居率の高さと長期安定経営で注目を集めています。
旭化成ホームズは耐火性・耐震性に優れた鉄骨造住宅「ヘーベルハウス」が人気です。長期耐用や安心の保証体制により、賃貸経営の安定性を重視するオーナーに選ばれています。
ミサワホームは木質パネル構法を強みとし、デザイン性と快適性を両立した住宅を提供しているハウスメーカーです。賃貸住宅では高い断熱性や収納提案に特徴があり、長期的な入居ニーズに応えるプランが評価されています。
パナソニックホームズは耐震性・耐久性に優れた鉄骨住宅を提供し、独自技術による快適性と省エネ性能が特徴です。賃貸住宅分野でもデザイン性と長期安定経営を支える提案力に定評があります。
トヨタホームは鉄骨系住宅を得意とし、自動車製造の技術を活かした高精度な工場生産が強みです。賃貸住宅も耐久性や品質の安定性に優れています。
ユニホーは東海地方を中心に展開する総合不動産会社で、アパート建築から管理・仲介まで一貫対応できる点が強みです。地域密着型で提案力が高く、土地活用や賃貸経営を安心して任せられます。
大和財託株式会社は、不動産投資専門の資産運用会社です。土地活用から賃貸経営、資産形成まで総合的にサポートし、収益性とリスク管理に重点を置いた提案力に強みがあります。
これらの建築会社はアパート建築・管理の実績が豊富であり、建てた後もきめ細かいアフターサポートを提供してくれます。初心者オーナーでも、安心して賃貸経営に取り組めるでしょう。
アパート建築会社の選定に失敗しないためには、各会社の情報収集と比較検討が欠かせません。 失敗しないための実践アクションは以下の流れで行います。
ここでは、それぞれのステップの詳細は、各見出しで解説します。
アパート建築会社選びの失敗を避けるための実践的なアクションとして、複数の会社から建築プランと見積もりを取り寄せることが有効です。複数の見積もりを比較することで必要な工事、適正な価格を知ることができ、不当に高い費用を請求されるリスクも減らせます。
また、費用だけではなく担当者のサポート力や相性も確認できるので、なるべく多くの会社に問い合わせるのがおすすめです。
アパート建築で成功するために、見積書とプランの比較検討ポイントも知っておきましょう。それぞれの比較ポイントはこちらです。
比較検討ポイント | チェック項目 |
---|---|
見積書 | ・工事範囲が明確か ・工事項目ごとに単価・数量が明記されているか ・建材・設備の仕様やグレードは適正か ・諸経費が相場とかけ離れていないか ・工期と支払い条件が妥当なものか ・保証とアフターサービスの内容 など |
プラン | ・市場環境とターゲットが合っているか ・入居者のニーズにあった間取り・設備になっているか ・暮らしやすい間取り・動線になっているか ・現実的な収益シミュレーションになっているか ・必要な住宅性能を備えているか ・将来の修繕や維持管理が考えられているか など |
見積書は「総額の安さ」だけで判断すべきではありません。本体工事に加え、外構や地盤改良など付帯工事や諸費用が含まれているか、工事項目ごとに単価や数量が妥当か、諸経費が相場からかけ離れていないかの確認が欠かせません。
一方で建築プランの比較では、単に図面や間取りを確認するだけでは不十分です。想定するターゲット層に合った間取り・設備・デザインになっているか、収益性を優先し過ぎて暮らしにくい広さ・間取りになっていないかなどを比較検討しましょう。 また、維持費や修繕積立金、空き室率・家賃水準の見通しなどを踏まえた、現実的な収益シミュレーションになっているかも重要なポイントです。
建築会社を選ぶ際に、関連会社に管理会社やアフターメンテナンス専門の会社があるかも一つの基準となります。アパートの管理に精通する会社であれば、精度の高い経営シミュレーションや入居対応まで一貫してサポートを受けることが可能です。また、アフターメンテナンス専門の会社であれば、万一の不具合や事故発生時にも迅速に対応してもらえるだけでなく、建物や設備の耐用年数に応じた適切な修繕計画を立ててもらえます。
アパート建築を検討するにあたり、モデルハウス見学や現場見学会に参加することも、失敗を避けるために有効です。 実際にモデルハウスに行くことで、建築会社の技術力やデザイン、使用されている建材や設備のグレードなどを自分の目で確かめられます。 また完成したばかりのアパートの現場見学会に参加することは、入居者目線で建物の使いやすさやデザイン性を確認できる点がメリットです。
営業担当者の力量は、アパート経営の成否を左右する大きな要素です。資金計画から設計、施工、アフターサービスまでの橋渡し役となるため、知識や対応力を慎重に見極める必要があります。 営業担当者を見極めるポイントは以下のとおりです。
実績と経験が豊富であり、建築法規や税制、融資、市場動向など、アパート建築に関する幅広い専門知識を持っている担当者が理想的です。ただ知識が豊富かどうかを一般の方が把握するには難しいといえます。営業担当者の質を見極める油断としても、複数の会社に問い合わせることが重要です。
長期的な経営のために必要なコストは払ったほうが利益的ですが、それでも少しでもローコストでアパートを建築したいときは部分部分で節約を意識ことがポイントです。 ここではローコストアパートの建築を予定している方に向けて、建築費用を賢く抑える8つのコストダウン術について紹介します。
建築費用を抑えるには、まず建物の形状をシンプルにするのが基本です。 総二階・長方形は、まさにその代表的な例といえるでしょう。建物の形状がシンプルであると、その分建築に必要な手間や材料が少なくなるためコストダウンを実現しやすいです。
一方、建物の形状が複雑だと窓や壁の配置も不規則になり、工場で生産した規格品を使いづらくなります。そのため現場での加工が増え、人件費や材料費が上乗せされる可能性があります。 シンプルな外観は耐震計算が容易になり、施工精度も安定しやすいという副次的なメリットもあります。
コストダウンには、屋根の形状と外壁材を見直す必要もあります。 切妻(きりづまやね:三角形の屋根)屋根や片流れ屋根(片側だけに傾斜した屋根)のようなシンプルな形状は施工がしやすく、使用する材料も少なくて済むためコストを抑えられます。
外壁材に関してはデザインやカラーのバリエーションが豊富で、コストパフォーマンスに優れているものがあります。ただし初期費用は安くても、頻繁なメンテナンスが必要になる場合は、トータルのコストがかえって高くなることがあります。塗料の耐用年数や塗り替え時期、メンテナンス費用を考慮して外壁材を選ぶことも重要です。
廊下は居住空間として活用できない一方で、壁や床、天井の施工コストは他の部屋と同じようにかかります。そのため廊下を必要最小限に抑えた間取りは、無駄な建築費を減らす現実的な対策といえます。
また、廊下を減らすことで余ったスペースをリビングや寝室、収納などに振り分ければ、同じ床面積でも活用できる空間が広がり、内見時に選ばれやすくなるでしょう。
間取りを工夫することは、建築費用を抑えるだけでなくアパートの収益性にも直結します。廊下を減らして居室空間を広げることで、同じ専有面積でも「広く感じられる間取り」となり、成約率の向上・空き室リスクの軽減につながるでしょう。また、一戸当たりの居住スペースが広いほど、入居者の快適性が高まり、長く住み続けてもらえる可能性が高まります。間取りを工夫することで、長期的な収益性を高められることを理解しておきましょう。
設備のグレードにメリハリをつけることも見逃せないポイントです。 すべてを高級な設備にすると建築費が跳ね上がり、反対にすべてを安価なものにすると入居者にとって魅力のない物件となるため空室リスクが高まります。 設備を選択する際はターゲット層のニーズを把握し、入居者にとって価値の高いものに投資するようにしましょう。
例えば、単身者向けの物件ではインターネット無料、独立洗面台、温水洗浄便座、宅配ボックスなどが人気です。 床材や壁紙、ドアなどは、デザイン性を保ちつつも、比較的安価なものを選ぶとコストを抑えられます。
設計施工一貫方式を採用して中間マージンを削減すると、トータルコストを下げやすくなります。設計施工一貫方式とは、設計から施工までを一つの会社(ハウスメーカーなど)が担当する方式のことです。
設計と施工を別々の会社に依頼する場合、それぞれに利益(マージン)が上乗せされます。一方で、設計と施工を同じ会社が行えば中間マージンを削減できるため、建築費を抑えることが可能です。
規格化された建材を有効活用することも覚えておきたいポイントです。規格化された建材とは、サイズや品質が統一された製品を指します。 規格化された建材は工場で大量生産されるため、一つあたりの単価が安くなります。
また、流通経路が確立されているため、調達コストも抑えられるのがメリットです。
こういった規格品を組み合わせることで、現場での加工や調整が少なくなり、作業工数を減らせます。工期が短縮されれば人件費や諸経費も削減できます。
相見積もりで価格の妥当性をチェックすることも、建築費用を抑えるには有効な方法です。 相見積もりとは、複数の会社から同じ条件でプランと見積もりを取ることです。前述しましたが、建築費用を抑える面においては改めて必要なことです。
複数社を比較することで、提示された価格が適正かどうかを判断できます。 相見積もりを通じて、どの会社が最もコストパフォーマンスの高い提案をしてくれるかを見極められるでしょう。
アパートを建築する際、一定の要件を満たせば補助金や税金の優遇制度を利用できる場合があります。 補助金や税金の優遇制度(相続税・固定資産税)を積極的に活用することもポイントです。直接的な建築費の削減や、長期的なコスト負担の軽減につながります。 補助金と税制優遇制度を活用する主なメリットはこちらです。
活用する主なメリット | 詳細内容 |
---|---|
補助金 | ・補助金は返済不要なため、受け取った分だけ自己負担額を減らせる ・省エネ性能の高いアパートを建てる場合、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの関連補助金を利用できる場合がある |
税制優遇制度 | ・相続税対策になる(土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」にすると評価額が下がり相続税の負担が軽減される) ・固定資産税の軽減になる(新築アパートは、一定期間、固定資産税が軽減される特例措置がある) ・所得税対策(アパート経営で発生する赤字は、給与所得などほかの所得と損益通算できる) |
参考:集合ZEH-M|一般社団法人環境共創イニシアチブ
No.4614 貸家建付地の評価|国税庁
新築住宅に係る税額の減額措置 |国土交通省
No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算|国税庁
アパート経営は建てて終わりではなく、長期的に安定した賃貸経営を継続していけるかが重要です。賃貸経営は短期的な利益よりも、長期にわたり安定収入を確保することが重要です。安定した経営は返済や維持管理を支え、資産価値の維持や将来の売却益にもつながります。 ここでは、アパートの維持費と節約のコツについて解説します。
一般的なアパートの主な部位における修繕周期(目安)は以下のとおりです。
ちなみに一般的なアパートは比較的耐久性の高い建材や設備を使うため、修繕周期が長く、長期的に修繕費は抑えられる傾向があります。 一方ローコストアパートは安価な建材・設備を使うことが多いため、劣化が早く修繕の頻度が増える可能性があります 。
そのため修繕周期はローコストアパートの方がやや短めのサイクルになり、修繕費用合計額はローコストアパートの方が高くなる可能性があります。
長期的に安定した賃貸経営を続けるためには、これらの周期を踏まえた計画的な修繕積立が欠かせません。 アパートは木造で建てられるケースが多いため、国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」を参考に、木造10戸のシミュレーションをご紹介します。 木造10戸(1K)のアパートの修繕周期と費用目安は以下のとおりです。
築年数 | 修繕内容 | 費用目安 |
---|---|---|
5~10年目 | ・ベランダ・階段・廊下(塗装) ・室内設備(修理) ・排水管(高圧洗浄等) |
戸あたり約7万円 (棟あたり 約70万円) |
11~15年目 | ・屋根・外壁(塗装) ・ベランダ・階段・廊下 (塗装・防水) ・給湯器等(修理・交換) ・排水管(高圧洗浄等) |
戸あたり約52万円 (棟あたり 約520万円) |
16~20年目 | ・ベランダ・階段・廊下(塗装) ・室内設備(修理) ・給排水管(高圧洗浄等・交換) ・外構等(修繕) |
戸あたり約18万円 (棟あたり 約180万円) |
21~25年目 | ・屋根・外壁(塗装・葺替) ・ベランダ・階段・廊下 (塗装・防水) ・浴室設備等(修理・交換) ・排水管(高圧洗浄) |
戸あたり約80万円 (棟あたり 約800万円) |
26~30年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管 (高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
戸あたり約18万円 (棟あたり 約180万円) |
合計 | 戸あたり 約174万円 (棟あたり 約1,740万円) |
出典:“木造10戸(1K)の修繕時期・費用のイメージ”.民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック|国土交通省.2013年.(参照2025-08-09)
こうした修繕費用をまかなうためには、毎月の家賃収入から一定額積み立てておくのが一般的です。
定期的なメンテナンスを行うと小さな不具合や劣化を早期に発見できるため、後年の大規模な損傷や故障を防ぐことができます。 例えば、外壁のひび割れを放置すると、そこから雨水が侵入し、内部の構造材を腐食させ、大規模な修繕が必要になる可能性があります。一方で定期的な点検で小さなひび割れを発見し、すぐに補修すればそれほど高額な費用はかかりません。
経年劣化した手すりや階段、給排水管の破損などは、入居者のケガや水漏れ事故につながる可能性がありますが、定期的な点検を行えばこれらのリスクも未然に防げるようになります。 賃貸アパート経営では目先のメンテナンス費用を惜しむのではなく、長期的な視点で計画的にメンテナンスを行うことで、結果的にトータルコストを抑えられます。 安定した経営を続ける上で欠かせない視点です。
火災保険・地震保険料はアパート経営している限り、通常支払い続けるコストです。所有期間が長いほど支払う保険料は多くなります。 万が一、火災などが発生した際、火災保険に加入していなければ修繕費や建て替え費用などを自費で捻出することになるため、加入するのが一般的です。 なお賃貸アパート経営において、火災保険や地震保険を単に保険料の安さだけで判断することは賢いとはいえません。
物件のリスクと経営上のニーズに合わせて補償内容をカスタマイズする必要があります。 火災保険は火災だけでなく、水害を含めてさまざまなリスクをカバーできるため、所有するアパートに必要な補償を吟味しましょう。例えば、河川に近い立地にあるマンションの場合は、火災、落雷、破裂・爆発のほかに水災の補償も付けておくと安心です。 アパート経営特有のリスクに備える特約を付帯することも検討しましょう。
例えば施設賠償責任特約を付ければ、建物や設備の不備が原因で、入居者や通行人に損害を与えた場合の補償をしてもらえます。 火災保険や地震保険に加入する際は、複数の保険会社から相見積もりを取り各社のプランを比較検討しましょう。
会社で働きながら大家・オーナーになることで効率的に資産形成できる可能性がありますが、いくつかの注意点を理解しておくことが必要です。
アパート経営は、物件探しや融資の手続き、管理会社とのやり取り、確定申告など、多くの時間を要します。本業に支障が出ないよう、業務時間外や休日を効率的に活用する計画性が必要です。
勤務先の会社が副業を禁止していないかも確認しておきましょう。 また無理な借り入れは経営を圧迫するため、本業の収入が安定している間に着実な返済計画を立てることも重要です。
さらに不動産所得が20万円を超す場合は確定申告が必要になります。なお会社員が自主管理で入居者募集やクレーム対応などを実際に行うには限界があるため、管理業務は不動産管理会社に委託するのが一般的です。信頼できる不動産管理会社を見つけるようにしましょう。
親から相続した土地を有効活用してアパート経営をする場合、土地代はかかりません。 とはいえアパートを建てるには高額の建築費用がかかるため、少しでも安く抑えたいのが実情です。 ただし安さだけを追求しては、満足のいく品質の建物を建てることは現実的に難しいことが多いです。
まじは、何より信頼できてコストパフォーマンスの良い建築会社・ハウスメーカーを比較検討することをおすすめします。プランの詳細を決めていく中でできる限りコストを抑えた工夫をしていくことを検討してみてください。
さらに建てた後のアフターフォロー体制が万全な会社に依頼すれば、安心して長期的にアパート経営を継続できるでしょう。 建築会社を決める場合はプランやコストだけでなく、財務状況が良く、アフターフォローがきちんと用意されている会社を選ぶことがポイントです。
ローコストアパートの建築会社を選ぶ際は、初期費用や坪単価だけでなく、施工品質やアフターサポート体制まで含めて総合的に比較することが重要です。最終的なアパート経営の成否は、初期投資だけでなく、運営期間中のキャッシュフロー、そして売却や建て替えといった出口戦略によって決まります。そのため、長期的な資産形成を見据え、経営の安定性と資産価値の維持を両立できるパートナーを選ぶことを意識しましょう。
ここでは、ローコストアパート建築についてよくある質問について回答します。
ローコストでアパートを建てられるのは、さまざまなコスト削減策を組み合わせることで、建築にかかる費用を効率的に抑えているためです。 具体的には以下のものが挙げられます。
建物の形状を総二階・長方形といったシンプルで無駄のない形にすると、外壁や屋根の面積を最小限に抑えられ、材料費や施工の手間を削減できます。 さらに、窓やドア、ユニットバス、システムキッチンなどを工場で大量生産される規格品にすると、設備費を抑えられるだけでなく、現場での作業効率も上げられます。
設計と施工を同じ会社に依頼する(設計施工一貫方式)ことで、設計事務所に支払う中間マージンを削減することも可能です。
ローコストアパートでも、建築基準法に準拠し、適切な工法で建てられたものであれば、安全性や耐震性に問題はありません。
会社員がアパート経営をする際に最も注意すべきことは、本業との両立を前提としたリスク管理とパートナー選びです。 会社員はアパート経営にかけられる時間が限られているため、信頼できる管理会社を見つける必要があります。 また、会社によっては副業を禁止している場合があるため、アパート経営を始める前に、必ず会社の就業規則を確認しておきましょう。
費用を抑えたい場合、一般的には地元の工務店のほうが有利な傾向にあります。
しかし、それぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらがよいかは自身が重視するポイントやアパート経営の方針によって変わってきます。 大手ハウスメーカーは全国展開しているため、ブランド力や安定した経営基盤に強みがあるのがメリットです。部材の生産から施工までシステム化されており、品質が安定しています。 ただし、CMなどの広告宣伝費や研究開発費、人件費などが建築費に上乗せされるため、費用は高くなるのがデメリットです。
一方の地元の工務店は、地域に密着した小規模な経営形態が多いため、コストを抑えやすいのがメリットといえます。しかし、会社の規模が小さいため、倒産リスクやアフターフォロー体制に不安が残る場合があります。
建築費用以外に後からかかる費用としては、経営開始後にかかる以下のコストが挙げられます。
これらの費用を考慮せず建築費用だけで資金計画を立ててしまうと、後々資金不足に陥るリスクがあるため注意しましょう。
一括請求サービスを利用すると効率良く比較できます 複数の建築会社のプランを比較することは、アパート経営の成功に欠かせないステップです。不動産会社に問い合わせるのもよいですが、自分で何社か当たるとなると時間や手間がかかる可能性があります。 そこで活用したいのが、「HOME4U 土地活用」が提供している建築プラン請求サービスです。
一度の入力で複数の会社からプランや見積もりをまとめて受け取れるため、自分で各社に問い合わせる手間が省けます。 届いたプランを比較検討するだけなので、効率良く複数の建築会社のプランを比較できるでしょう。
出典:
*1 “賃貸住宅 供給戸数(完成戸数)”.FACT BOOK 2024|大東建託.2024.(参照2025-08-10)
*2 “施工実例”.|朝日建設.2025年7月末.(参照2025-08-10)
*3 “請負型ビジネス セグメント別売上高”.ValueReport2025|積水ハウス.2025.P95(参照2025-08-10)
*4 “受注の状況”. 2019年3月期 決算説明資料|ミサワホーム.2019. P5(参照2025-08-10)
*5 “名古屋市の土地活用新築建築施工例・写真集”.|ユニホー.2004-01-01日~2025-06-30(参照2025-08-10)
*6 “【プレスリリース】関東進出5年目で木造物件竣工数が100棟を突破!”.|大和財託.2024.08.30(参照2025-08-10)
*7 “有価証券報告書”.P34|大東建託.2025.(参照2025-08-10)
*8“東建コーポレーション株式会社 有価証券報告書”.|金融庁.2025(参照2025-08-10)
*9 “朝日建設(株)”.|マイナビ.2025/8/19(参照2025-08-10)
*10 “貸借対照表”.P2|旭化成ホームズ.2025-03-31(参照2025-08-10)
*11 “セグメント別連結業績推移”. 2019年3月期 決算説明資料 P3|ミサワホーム.2019
*12 “連結貸借対照表”.|パナソニックホーム.2025-03-31(参照2025-08-10)
*13 “貸借対照表”. |トヨタホーム.2025-03-31(参照2025-08-10) P2
*14 “決算情報 株式会社ユニホー”.|PR TIMES.2024-12-31(参照2025-08-10)
*15 “会社情報”. |大和財託.2024(参照2025-08-10)
この記事の監修者
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岩井佑樹
所属 合同会社ゆう不動産 代表社員
熊本市空き家相談員
職業 宅地建物取引士
不動産会社兼Web記事制作会社経営。不動産売買専門×不動産Webライターの強みを活かし、情報発信と販売力で安心の取引を実現。今まで作成した不動産関連記事は1,000記事以上作成。「どんなことで悩んでいるのか」「どんなことを知りたいのか」など、読み手の気持ちに寄り添って記事を書くように心がけている。
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