土地活用で賃貸経営を始めると、専門用語も登場し、知らなければいけないことが多過ぎると感じることがあります。
賃貸経営では、確かに一定の専門知識は必要ですが、それぞれの分野で専門家になる必要はありません。それぞれの分野を深堀りするよりも、むしろ広く浅く知ることの方が実践的で役に立ちます。
そこでこの記事では土地活用の賃貸経営で必要な知識を、「建築」「賃貸借」「管理」「お金」の4つの分野に分けて、土地オーナーが知っておくべき知識を幅広くご紹介いたします。
土地オーナー目線で書いていますので、これから土地活用で賃貸経営を始める方はぜひ参考にしてください。
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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット
1. 賃貸経営の4つ のメリット
賃貸経営を始める方が多いのは、それだけ得られるメリットが多いからだと考えられます。しかし、具体的にはどのようなメリットが得られるのでしょうか。これから賃貸経営を始めたい方も、まずはどのようなメリットがあるのかを把握しておきましょう。
1-1. 家賃収入が長期的に入る
賃貸アパートやマンションなどを運用すれば、入居者からの家賃収入を得られます。きちんと入居者を確保できていることが大前提ですが、空室にならないように運営できれば長期的な家賃収入が見込め、収入面における大きなメリットを得られます。
賃貸経営が軌道にのれば、オーナーが働けなくなっても利益を生み出してくれます。病気やケガで動けなくなった、といった状況においても安定した収入が得られます。
1-2. インフレ対策に有効
インフレとは、需要が供給を上回る状況を指します。インフレになると、物価が上昇し貨幣価値は下落します。たとえば、1億円の貯金があったとしても、インフレにより価値が5,000万円程度になってしまう、といったことも起こりえるのです。
一方、不動産はインフレに合わせて価値が変動します。現金のように実質的な価値が下がるといったことがありません。こうした理由から、現物資産として所有できる不動産はインフレ対策に有効だといわれています。
1-3. 資金が少なくても始められる
賃貸経営を始めるにあたり、巨額の費用が必要だと考える方は少なくありません。賃貸経営を始めるには、土地や物件を購入しなければならず、それなりの費用が発生するからです。
実際には、多くの方が金融機関から融資を受けて賃貸経営を始めています。むしろ、アパートやマンションの経営なら融資を受けるケースが一般的です。そこまで初期投資額は必要なく、少ない自己資金からでも始められます。
1-4. 生命保険代わりになる
生命保険へ加入していても、保険金が支払われないケースはあります。告知義務違反が発覚した、免責事由に該当したといったケースでは、保険金が支払われないことがあるのです。
一方、不動産なら万が一自身に何か起きたとしても、確実に家族のもとへ残せます。住宅ローンを組んで物件を購入したのなら、亡くなったときに団体信用生命保険でローンも完済されるため、家族にローンの支払い義務も発生しません。
2. 賃貸経営の4つのリスクと対策
賃貸経営にはいくつものメリットがありますが、デメリットがあるのも事実です。これから賃貸経営を始めたい方は、メリットだけでなくデメリットについてもきちんと把握してください。以下、代表的なデメリットをピックアップしました。
2-1. 空室のリスクがある
アパートやマンションなどの賃貸物件は、入居者を確保して初めて収益を生み出せます。逆にいえば、入居者が見つからず空室の状態が続いてしまうと、収入が得られません。
金融機関から融資を受けているのなら、空室の増加で収入が減少しても月々の支払いは必ず発生します。このような状況を避けるには、設備や独自のサービスを充実させるなど、魅力ある物件を提供する必要があります
2-2. 建物が老朽化する
木造にしろ鉄筋コンクリート造にしろ、建物は必ず老朽化します。老朽化が進むと、点検や修繕の費用が必要となり、出費がかさんでしまうリスクがあります。また、老朽化した物件は空室リスクも高めてしまうため注意が必要です。
老朽化は避けられないことですが、定期的な点検やメンテナンスを実施することで対策が可能です。また、老朽化に伴う修繕費用の発生を見越して資金計画を練らねばなりません。
2-3. 自然災害の可能性
日本は地震の多い国と言われています。地震に伴う津波や火災の被害に遭う可能性があり、賃貸経営が頓挫してしまうおそれもあります。地震以外にも、洪水や落雷など、自然の脅威にさらされるケースは多々考えられます。
自然災害はいつ発生するかわからないため、対処のしようがありません。つまり、すべての賃貸物件オーナーが自然災害に遭う可能性があります。物件を自然災害から完全に守る方法はありませんが、事前に保険へ加入しておけば被害を受けても建物の復旧、運営の再開が可能です。
2-4. 売却時にリスクがある
不動産を売却することで、まとまった現金を手に入れられます。ただ、不動産は車を売るときのようにすぐ売却できるとは限りません。どうしても金額が大きくなるため、見積もりを出すだけでもある程度の時間を要することがほとんどです。
また、必ずしも希望する価格で売却できるとは限りません。基本的に、アパートやマンションなどの建物は年月が経つにつれて価値が下がります。購入価格の半分にも満たなかった、といったことも起こりえるため注意しなければなりません。
将来的に売却も視野に入れるなら、計画的な資産運用計画を立てる必要があります。
3. 賃貸経営を始める前に知っておくべき4つのこと
これから賃貸経営を始めるにあたり、大切なポイントを押さえておけば、安心して賃貸経営をスタートできます。以下、ポイントを4つに絞って解説します。
3-1. 入居者のターゲットを明確にする
ターゲティングはビジネスの基本です。賃貸の場合、入居者のターゲットを明確にすれば、需要の有無を把握しやすく競合の情報収集もしやすくなります。
たとえば、学生をターゲットとするのなら、無料のWi-Fiサービスを提供する、オシャレな内装を意識するといった工夫で入居者を募れます。効果的なプロモーションをしやすくなるのもメリットといえます。
3-2. 資金計画を立てる
初期費用だけでなく、ランニングコストも含めた資金計画を練ってください。資金計画がいい加減では、運転資金が不足する事態に陥るおそれがあります。
賃料を決めるときは、周辺の相場をリサーチすることも忘れないでください。適切に賃料を設定し、そのうえでコスト回収にどれくらいの年月を要するのかシミュレーションしてください。
3-3. 経営の知識を身につける
賃貸経営を進めるうえでは、さまざまな知識が求められます。不動産はもちろん、税金や保険に関する知識も必要です。賃貸経営で失敗しないためにも、これらの知識を身につける努力が大事です。今はインターネットがあるため、これらの知識を手軽に学ぶ環境は整っています。
3-4. リスクの対処法を把握しておく
賃貸経営を進めるうえで、どのようなリスクが発生するのか、どう対処するのかを把握しておきましょう。発生しうるリスクと対処法を併せて理解しておけば、リスクを回避しやすくなり問題が発生したときも適切に対処できます。
賃貸経営に伴うリスクとしては、空室や老朽化、災害などがあることを本記事でもお伝えしました。リスクが生じないことがもっとも望ましいのですが、現実的には困難です。せめて、発生したときスムーズな対処ができるよう体制を整えておくとよいでしょう。
4. 稼げる建築の基礎知識を知ろう
賃貸経営は建物が稼ぐため、どのような建物を建てるかによって、これから先どれくらい稼げるかの勝負が決まります。そこでこの章では稼げる建築の基礎知識についてご紹介します。
4-1. 稼ぐための建築計画
土地活用では、最初の建築計画が一番重要です。建築計画とは、どのような用途・規模の建物を建てるのか、様々なプランを何度も検証して最適解を見つける仕事になります。
建築費の安さだけではなく、将来に渡る賃料収入と費用のシミュレーションも考慮して最適なプランを決定していきます。
どのような建物を建てるべきかについては、「土地の用途規制」と「賃貸需要の動向」の2つで決まります。
4-1-1. 土地の用途規制
土地の用途規制とは、都市計画法や建築基準法、市区町村の条例等で定められている規制です。土地には建物を無制限に建てられるわけではなく、エリアによって建築可能な建物の用途や規模が決まっています。
例えば、閑静な戸建て住宅街の中に、突然、大規模な工場などが建つようなことはありません。これは、住宅街の中には大規模な工場が建てられない規制がかかっているためです。
建物の用途や規模については、都市計画法で定められる用途地域と容積率と呼ばれる2つの規制によって、ほぼ決定されます。そのため、建てられる建物については、既に選択肢がかなり絞り込まれています。
限られた選択肢の中で、最適解を選ぶというのが土地活用の基本であり、決して自分が建てたい建物を自由に建てられるわけではないということがポイントです。
「土地活用はしたいけど、アパート経営はやりたくない」と思っている方だったとしても、現実的には「選択肢がアパートしかない」ということもあり得ます。まずは土地には用途規制があることを理解しましょう。
4-1-2. 賃貸需要の動向
次にどのような建物を建てるかについては、エリアの賃貸需要の動向を加味することが重要です。仮に用途規制の中で、「5階建ての店舗が建てられる」というような規制であったとしても、実際に5階建の店舗ビルを建ててテナントが埋まるかどうかは別問題です。
5階建ての店舗ビルに全てテナントを入居させることができるのは、相当の一等地でない限り無理なので、郊外の土地では別の用途や規模の建物を考えるべきです。例えば、平家建ての店舗ならテナント誘致ができる場合には、あえて5階建てにはせず、1階で抑えておくという判断もあります。
また、アパートであっても、周辺にアパートの供給量が多ければ、「戸建て賃貸」を建てるという選択肢もあります。賃貸需要を加味する場合、中長期的に見て「貸し続けられるか」を見極めることが重要です。新築当初だけ、借主を入れることができても、退去されると次の借主が見つからないような建物は避けるべきとなります。
建築計画においては、まずは土地の用途規制の中から建てられる建物を列挙します。次に、その中で最も賃貸需要が続きそうな用途や大きさの建物を選択して最終的に決定するというのが基本的な流れです。
限られた選択肢の中から、最も賃貸需要が高い建物を選ぶのが、建築計画の考え方となります。
4-2. 儲かる用途とは
賃貸経営の中で、儲かる用途というのはある程度決まっています。収益性に差を付ける要因は賃料単価ですので、賃料単価の高い用途を優先的に配置していくことが建築計画のコツです。
土地活用の用途は、大きく分けて商業テナントなどが入る事業系と、アパートや賃貸マンションなどの居住系に分かれます。事業系と居住系を比べると、事業系の方が賃料単価は高くなります。
さらに事業系の中でも、コンビニやドラッグストアのような物販店舗は賃料単価が一番高く、保育園や老人ホーム等の補助金を受けながら行われている事業は賃料単価が低くなります。
また、居住系においては、賃料単価はワンルームが一番高く、次に2DK、一番低いのはファミリータイプという順番にあります。そのため、事業系はできるだけ物販店舗を誘致し、居住系はワンルームを作ることが稼げる建物になります。
例えば、1階にコンビニ、2階以上をワンルームマンションとしているような建物は、稼げる建築物の好例です。事業系を誘致できるかどうかは立地によりますが、なるべく店舗を誘致できるような建物を建てることを検討しましょう。
店舗が誘致できないような場所であれば、まずはワンルーム、次に2DKを検討し、それでも難しいようであれば最終的にファミリータイプを検討します。順番からすると、ファミリータイプのアパートや賃貸マンションは一番稼げない部類の建物になりますので、優先順位を下げるように考えましょう。
4-3. 建物を決定する際の注意点
ここでは建物を決定する際の注意点と見るべきポイントについて解説します。
4-3-1. 店舗を入れる場合
店舗を誘致できるような土地活用は収益性が高くなるため、ぜひ検討したいところです。ただし、建物に店舗を配置する場合、よほどの好立地でない限り、原則、店舗は1階のみに配置すべきです。地下階や2階以上にも店舗区画を作ってしまうと、後からテナント集めに苦労します。
地下階や2階以上に店舗を誘致できるのは、駅前にあるような土地くらいですので、それ以外の土地は、店舗区画は1階のみとし、残りは住宅とするのが基本です。
事業系は、賃料単価は高いのですが、退去されてしまうとテナント募集に苦労するというリスクがあります。テナント募集しやすいのは1階のみですので、店舗区画は欲張らずに1階だけに留めるようにしましょう。
4-3-2. 一棟貸しの場合
一棟貸しは、コンビニやロードサイド店舗、スーパー、ファミレス、老人ホーム、保育園、独身寮、ビジネスホテルなど、1つのテナントに対し1つの建物を貸す賃貸経営です。土地活用で一棟貸しを行う場合は、テナント有りきで話が進みます。
一棟貸しは、収益が安定しており、管理の手間がほとんどかからないというメリットがあります。しかしながら、一棟貸しの最大のリスクは退去リスクです。一棟貸しは、テナントが抜けてしまうと賃料収入が完全にゼロとなってしまいます。アパートのように1部屋だけ退去が出るのとはリスクの大きさが違います。
また、建物も最初のテナントの要望に沿って建てるため、建物に汎用性がなく、退去されると後継テナントがなかなか決まりにくいというリスクがあります。
そのため一棟貸しの場合には、テナントの与信をしっかり調べることが重要です。良い話でもパッと飛びつかず、事業の内容や将来性、企業の業績、周辺の競合の有無等を考慮した上で、貸すか貸さないかを判断するようにしましょう。
4-4. 大切なのは複数のプランを検討すること
土地活用は限られた選択肢の中から最適解を選ぶことになりますが、まずはその選択肢を広げることが重要となります。
例えば、最も土地の用途規制が厳しいエリアに、第一種低層住居専用地域と呼ばれる用途地域があります。第一種低層住居専用地域は「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」とされており、一戸建てが中心の地域です。
第一種低層住居専用地域では、「どうせアパートくらいしか建てられないだろう」と思われる方も多いです。しかしながら、アパートであってもワンルームアパート、2DKアパート、ファミリータイプアパートが考えられます。
またアパート以外なら、戸建て賃貸、賃貸併用住宅、老人ホーム、保育園、デイサービス、低層型高級賃貸マンション、社宅、学生寮といった用途も考えられます。一番規制が厳しい第一種低層住居専用地域ですら、これだけ幅があるため、選択肢を思い込みで狭めてしまうのは得策ではありません。
そこで、まずはプロに依頼し土地活用の選択の幅を知ることが重要です。
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5. 損をしないための賃貸借契約とは
賃貸経営では賃貸借契約の知識も必要です。この章では賃貸経営を始める前に建物オーナーとして最低限知っておきたい賃貸借契約の基礎知識についてご紹介します。
5-1. 賃貸借契約の種類
賃貸借契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。両者の違いは「更新」があるかどうかです。
普通借家契約には更新があります。建物オーナーが更新を拒絶するには、正当事由(建物を必要とする強い理由)に加え、立ち退き料が必要となります。一方で、定期借家契約には更新がありません。契約期間満了に時は、借主は確実に退去しなければならず、建物オーナーは正当事由や立ち退き料は不要となります。
立ち退き料に関しては、借主が居住系の入居者でも、事業系にテナントでも発生します。事業系のテナントの場合、立ち退き料には営業補償が含まれるため、莫大な金額となることがあります。
莫大な立ち退き料が生じると、将来建物が老朽化したときに、建て替えたいと思っても立ち退き料がネックとなり建て替えができないという事態が発生します。そのため、店舗を誘致する場合、将来的な立ち退きリスクを踏まえ、店舗に関しては定期借家契約を締結することが損をしないコツになります。
定期借家で契約しても、仮に店舗が契約期間後も営業したいと言ってきた場合、特に問題なければ、再度、定期借家契約で再契約を行えば良いだけです。
尚、居住系の入居者の立ち退きには、営業補償は発生しないため、莫大な金額になることはありません。居住系の場合には、あまり立退きは危惧することなく、普通借家契約で良いでしょう。
5-2. 用途と賃貸借契約の関係
定期借家契約は、契約満了時に入居者が退去しなければならないため、借主にとって不利な契約です。そのため、原則として普通借家契約よりも定期借家契約の方が賃料は安いという傾向が見られます。
しかしながら、店舗に関しては、建物オーナー側が定期借家契約を希望する方があまりにも多いことから、定期借家契約と普通借家契約との間に賃料差はほとんど見られません。店舗の場合は定期借家でも通常の相場で貸すことが可能です。
一方で、住宅の場合には、定期借家にすると、賃料を普通借家契約の50~80%程度にしないと貸せないという現象が発生します。そのため、住宅に関しては普通借家で貸した方が良いです。
店舗と住宅を混在させた土地活用を行う場合には、用途ごとに契約の種類を変えるようにしましょう。
5-3. 賃貸人の義務
賃貸人(建物オーナー)には、「建物修繕義務」と「敷金返還義務」の2つがあります。このうち、建物修繕に関しては、賃貸人が修繕義務を履行しないことによるトラブルが多いです。
これから賃貸経営をする以上、賃貸人には修繕義務があることをしっかりと認識する必要があります。賃貸人に修繕義務があるのに賃貸人がその義務を履行しない場合には、賃借人(借主)は自ら修繕をすることができます。
その修繕費用は本来賃貸人が負担すべきものですので、賃借人は賃貸人に対して費用を請求することができます。つまり、修繕費用は最終的に賃貸人が負担しなければならないということです。
賃貸経営を行うにあたっては、賃貸人は一定の修繕費用を積立てておくことが必要です。
5-4. 賃借人の義務
賃借人には「原状回復義」と「賃料支払義務」の2つがあります。このうち、トラブルになりやすいのは原状回復です。
原状回復とは、賃借人が借りたときの状態に戻して賃貸人に返還することをいいます。この「借りたときの状態」ですが、通常の使用収益によって生じた賃借物の損耗ならびに賃借物の経年変化は除きます。
例えば、画鋲の穴などは通常損耗に該当し、原状回復の対象とはなりません。原状回復に関しては、賃貸人と賃借人との間で、「どこまで回復すべきなのか?」という認識が食い違うことが多く、揉めることがあります。
住居系の場合には、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものを開示していますので、アパートや賃貸マンションを経営する場合は、さらっと見ておくことをおススメします。
今の段階では、とりあえず原状回復は賃貸経営でトラブルとなりやすいポイントであるという点を知っておきましょう。
6. 稼ぎ続けるための管理の知識
この章では管理の知識について解説します。
6-1. 管理会社の役割
一棟貸し以外の賃貸経営では、通常、管理会社に管理を依頼します。管理とは、主にテナントや入居者からの賃料の集金業務や家賃滞納の督促、クレーム対応、契約の更新手続き等が日常の業務となります。
また、管理会社は空室発生時に入居者募集のための賃貸仲介も行います。管理業務と賃貸仲介とは、本来は別物ですが、管理会社が賃貸仲介の窓口となっていることが多いです。
そのため、物件の空室が埋まるかどうかについては、管理会社の力がかなり影響します。同じ物件でも、賃貸仲介が強い会社が管理会社となれば空室も少なくなりますが、賃貸仲介が弱い会社が管理会社となってしまうと空室がなかなか埋まらないことも多いです。
せっかく建てた物件でも、管理会社をどこにするかによって、将来に渡って物件の稼ぐ力が変わってしまいます。
土地活用をする上では、管理会社選びもとても重要です。賃貸経営で稼ぎ続けるためには、賃貸仲介に強い管理会社を選ぶようにしましょう。
6-2. 管理の種類
この節では、アパートや賃貸マンションにおける管理の種類について、「管理委託」、「パススルー型サブリース」、「家賃保証型サブリース」の3種類を紹介します。
6-2-1. 管理委託
管理委託とは、不動産会社に管理を委託する形式の契約形態です。管理委託形式は、従来からある最も典型的な管理の方式で、不動産管理会社に管理委託料を支払う形となります。
管理会社とは管理に関しては委託契約を行い、入居者募集に関しては賃貸代理の契約を行います。管理会社との関係は委託であるため、解約しやすいというメリットがあります。
建物オーナーは各入居者と賃貸借契約をそれぞれ締結します。空室リスクは建物オーナーが直接負う形になります。
管理委託料は賃料収入の5%程度が一般的です。
6-2-2. パススルー型サブリース
パススルー型サブリースとは、不動産管理会社が一棟を借上げ転貸する管理方式です。パススルー型サブリースでは、現在入居している部屋の賃料から一定料率を差し引いた後の賃料が入金されるため、賃料は空室に応じて変動します。
建物オーナーは管理会社と賃貸借契約を一本だけ締結します。ただし、賃料は入居状況によって変動するため、空室リスクは建物オーナーが負います。
管理会社が賃料から差し引く料率は賃料収入の5%程度ですので、収益性は管理委託と変わりません。
パススルー型サブリースは管理会社と賃貸借契契約を一本だけ締結すれば良いため、戸数が多いアパートや賃貸マンションであれば、管理委託よりもパススルー型サブリースの方が契約の手間が少なくなるというメリットがあります。
ただし、管理会社との関係は賃貸借契約であるため、解約しにくいというデメリットはあります。
6-2-3. 賃保証型サブリース
家賃保証型サブリースも、不動産管理会社が一棟を借上げ転貸する管理方式です。不動産管理会社から支払われる賃料は毎月一定額となり、空室が発生したとしても、毎月の賃料は変動しないという特徴があります。
家賃保証型サブリースでは、満室家賃の85%前後の家賃が建物オーナーに入金されます。空室が発生しても毎月の賃料は原則として一定額というメリットがあります。
ただし、管理会社との関係は賃貸借契約であるため、解約しにくいというデメリットはあります。
6-3. 家賃保証型サブリースを選択する際の注意点
家賃保証型サブリースは、「家賃保証」というネーミングが付いていますが、実際のところずっと家賃が保証されるわけではありません。 サブリースは賃貸借契約であるため、管理会社は法律上「借主」という立場になります。借主から家賃の削減を求めることは借地借家法で認められており、管理会社は空室が増えてくると建物オーナーに対して賃料減額を求めてきます。
管理会社は、空室が増えると逆ザヤに耐えるというわけではなく、建物オーナーとの賃料を下げるため逆ザヤになるということはありません。
建物オーナーは管理会社から賃料減額の要請を受けるため、結局のところ、空室リスクを間接的に負っているということになります。
そのため、安易に家賃保証型サブリースを選択するのではなく、一定のリスクを取ってでも管理委託やパススルー型サブリースを検討することも重要です。
特に立地の良い物件は、管理委託やパススルー型サブリースを積極的に取り入れるようにしましょう。
7. 稼ぐ人は知っているお金の仕組み
この章は賃貸経営とお金の仕組みについて解説します。
7-1. 投資資金と儲けの関係
賃貸経営では、不動産がお金を稼いでくれるため、収益性は誰がやっても同じとなるような気がします。しかしながら、同じ利回りの物件でも、投資家の資金の構成によって稼げる金額は異なります。
例えば、利回りが5%の賃貸物件を考えます。この物件に対し、100%自己資金で投資するAさんと、100%借入金で投資をするBさんでは、最終的な手残りが異なります。
Aさんは賃貸物件から得られる収益を全て自分のものとすることができますが、Bさんは借入金を返済しながら賃貸経営を行うため、手残りが少なくなります。非常に単純な話ですが、同じ物件に投資をしても、BさんよりもAさんの方が儲かります。
賃貸経営でどのようにしたら稼げるかという問いに対しては、1つの明確な答えとしては「自己資金を増やし借入金を減らすこと」という回答があります。
当たり前過ぎて見落としがちなポイントですが、借入金を減らさないと賃貸経営は儲かりません。建築計画でせっかく最適解を見つけたとしても、借入金が過剰な方は、儲けの額が少なくなります。
最終的に儲かるかどうかは、物件の収益性だけでなく、資金の構成によっても変わるという点がポイントです。
例えば、利回り5%のファミリータイプのアパートに自己資金100%で投資をするAさんと、利回り7%のワンルームアパートに借入金100%で投資をするBさんでは、実はAさんの方が儲かっていることもあります。
これから土地活用を考える方は、プランだけでなく、自己資金と借入金の資金の構成も併せて考える必要があります。フルローン投資は避け、自己資金も用意した上で土地活用を始めましょう。
賃貸経営における利回りや税金に関する詳しい解説は、下記記事が参考になります。
7-2. キャッシュフローから見る借入金の目安
賃貸経営では最終的な儲けのことをキャッシュフローと呼んでいます。賃貸経営では、「建物の減価償却費」と「借入金の元本返済」の2つのお金が発生するため、会計上の利益とキャッシュフローが異なります。
会計上の利益は、賃料収入から以下のような費用が控除され算出されます。
- 固定資産税および都市計画税
- 建物の損害保険料
- 修繕費
- 管理委託料
- 水道光熱費
- 仲介手数料
- 広告宣伝費
- 青色事業専従者給与
- 給料賃金
- 通信費
- 接待交際費
- 新聞図書費
- 交通費
- 消耗品費
- 地代・家賃
- 解体費・立退料
- ローン保証料
- 借入金利子
- 減価償却費
上記の費用の中で、「減価償却費」というものがあります。
減価償却費とは、建物の取得原価を法定耐用年数に渡り費用として配分することで生じる会計計算上の費用です。
減価償却費は、会計上の計算で出てくる費用であり、実際に支出されるわけではありません。実際には支出されませんが費用となるため、その分、利益が小さくなります。税金は利益に対して発生するため、利益が小さくなると税金も少なくなります。
減価償却費は、お金が支出されないのに、利益を小さくし、結果として税金を少なくしてくれます。そのため、減価償却費には節税効果があり、ありがたい存在です。一方で、上記の費用の中に、「借入金利子」はありますが、「借入金元本返済」は費用の中にありません。借入金元本返済は費用ではないということがポイントです。
借入金元本返済は、実際にお金が支出されるのに、費用ではないため、利益も小さくならず、節税効果がありません。借入金の元本返済は、税引後の利益の中から返済するという考えになります。
このように、賃貸経営の最終的なキャッシュフローは「支出されないけど費用となる減価償却費」と、「支出されるけど費用とならない借入金元本返済」を考慮する必要があります。
賃貸経営のキャッシュフローを式で表すと、以下のようになります。
キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費 - 借入金元本返済
賃貸経営における「最終的な儲け」とは、上式のキャッシュフローで表されます。式から見ても、借入金元本返済が大きければ、儲からないことが分かります。尚、減価償却費は建物の法定耐用年数以内でしか計上されません。法定耐用年数とは、減価償却費が計上される期間のことであり、木造なら22年、鉄筋コンクリート造なら47年と決まっています。
法定耐用年数を超えた後も借入金の返済が残っていると、キャッシュフローは以下のようになります。
キャッシュフロー = 税引後利益 - 借入金元本返済
減価償却費が無くなるため、耐用年数満了後は、急激に「最終的な儲け」が減ることになります。急激なキャッシュフローの悪化を防ぐには、以下の2つの条件を満たすようなローンを組む必要があります。
- 返済期間は耐用年数以内とすること
- 返済額は減価償却費以内とすること
銀行によっては、そもそも不動産投資ローンが法定耐用年数の期間内でしか組めない銀行も多く、そのような銀行でローンを組む場合は特に大きな問題はありません。法定耐用年数を超えてもローンを組める銀行もありますが、キャッシュフローの観点から、法定耐用年数を超えた長期ローンは避けるべきです。
自己資金を十分に用意し「耐用年数以内かつ減価償却費以内で返済できるローン」を組むということが賃貸経営で儲けるためのコツとなります。
まとめ
土地活用から始める賃貸経営は、建築や賃貸借、管理、キャッシュの仕組み等、幅広い知識が必要です。賃貸経営で稼ぐには最初に建築計画を十分に検討することが重要です。
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賃貸借契約に関しては、店舗系のテナントを誘致する場合、定期借家契約を有効に活用することがポイントです。管理に関しては立地が良ければ管理委託やパススルー型サブリースも積極的に使うことをおススメします。
また、お金については、利益とキャッシュフローは違うと理解することが重要です。賃貸経営で稼ぎ続けるためには、過剰な借り入れは避けるようにしましょう。
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