【初心者向け】不動産にかかる相続税額や遺産分割方法について
遺産の分割方法は複数あるため、それぞれの特徴を事前に把握しておくと安心です。また、相続に伴う相続税についてもあらかじめ知っておくといざという時に心強いでしょう。
そこで、本記事では不動産相続でかかる相続税額や遺産分割方法について解説します。
この記事を読むと、
- 不動産を分割相続する方法
- どんな場合に相続税が発生するのか
- 相続税の申告と納付について
といったことがわかります。
1.不動産を分割相続する4つの方法
相続財産は、すべて現金であれば比較的スムーズに分割しやすいですが、不動産等分けにくいものが含まれている場合は簡単に分割できず、なにかしらの方法を検討しなければなりません。
不動産を分割相続する方法には、
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有
の4つが挙げられます。
本章では、遺産分割の仕組みや不動産の分割方法、それぞれの特徴について解説します。
なお、以下記事では、不動産相続に関わる手続きや必要書類、不動産相続手続きで相談できる専門家について解説していますので、併せてご確認ください。
1-1.遺産分割の仕組み
遺産分割の方法には、遺言書によって相続財産を分ける「指定分割」と相続人全員の協議により相続財産を分ける「協議分割」の2つがあります。
このうち、最も優先されるのは遺言書による分割です。
遺言書がない場合は、遺産分割協議により話し合いのもと分割します。
また、遺産分割協議による分割が成立しない場合には、家庭裁判所の調停や審判により分割手続きを進めることになります。
1-1-1.遺言書がある場合(指定分割)
遺言書がある場合、遺産は遺言書の内容に沿って分割することが原則です。
遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。
種類 | 内容 | 保管場所 | 検認の要否 |
---|---|---|---|
自筆証書遺言 | 遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆して押印した遺言書 |
|
必要 |
公正証書遺言 | 公証人と共に法律で定められた方式に従って作成された遺言書 | 公証役場 | 不要 |
秘密証書遺言 | 遺言者が作成した遺言書を、内容を秘密にしたまま公証役場に存在認証してもらう遺言書 |
|
必要 |
3種類のうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所で検認しなければなりません。
検認せずに勝手に遺言を開封した場合、5万円以下のペナルティが課されることがあります。
遺言書は不動産の登記手続きにも必要な重要書類です。確認後は、大切に保管しましょう。
なお、都道府県別の公証役場一覧は、以下日本公証人連合会のホームページで確認できます。
参考:日本公証人連合会「公証役場一覧」
1‐1‐2.遺言書がない場合(協議分割)
遺言書がない場合は、遺産分割協議により分割方法を決めます。
協議を行う際は、以下の点に注意が必要です。
- 相続人全員が参加して協議を行うこと
- 協議の結果を書面に残すこと
遺産分割協議は、相続人全員で話し合わなければならず、相続人の中に未成年者がいる場合には代理人を立てて参加することになります。
協議成立には相続人全員の同意が必要です。
話し合いで決めた内容は最終的に「遺産分割協議書」を作成して記録し、協議書には相続人全員が署名と実印を押印します。
また、遺産分割協議書も不動産相続に伴う登記手続きに必要な重要書類です。
1‐2.【分割方法①】現物分割
現物分割とは、不動産をそのまま相続する方法で、相続人が複数いる場合は分筆して相続します。
現物分割のメリットは以下のとおりです。
- 手続きがシンプルで分かりやすい
- 不動産を売らずに済む
- 不動産の評価にまつわるトラブルを回避できる
現物分割は、遺産分割の中で最も手続きが簡単な方法です。
不動産を取得するにあたり金銭が発生したり、売却のために手間をかけたりすることもありません。
また、不動産の評価を厳密に決めずに済む点も大きなメリットです。
相続における不動産の評価方法は複数あるため、トラブルに発展するケースも少なくありませんが、現物分割なら評価にまつわるトラブルを回避できます。
一方で、現物分割には以下のようなデメリットもあります。
- 建物は分けられない
- 分筆できない土地もある
- 分筆により土地の価値が下がることがある
マンションや戸建てなどの建物は、複数に分割できないためあまり現実的な方法とはいえません。
土地だけの相続なら、分割後も普通に利用できる面積があれば検討の価値はあるでしょう。
しかし、どこの土地でも分筆できるわけではなく、条例により分筆を禁止しているところもあります。
さらに、狭小地や変形地では、分割しても使い物にならない可能性があることから別の方法を検討するのが賢明です。
まとめると、「現物分割」に向いているのは下記のケースと言えます。
- 分筆しても問題ないほど広い土地を所有している
- 不動産のほかにさまざまな遺産がある
- 預貯金で相続分の調節が効く
1-3.【分割方法②】代償分割
代償分割とは、ある相続人が遺産を現物で取得し、ほかの相続人に自分の財産を支払う方法です。
代償分割のメリットとして以下が挙げられます。
- 公平かつスムーズに分割できる
- 不動産を売らずに済む
- 共有名義を避けられる
代償分割は、不動産を取得した人と不動産の代わりに財産をもらう人に不公平感なく分割できる点がメリットです。
売却等の手間がかかることもなく、話がまとまれば比較的スムーズに手続きできます。
しかし、代償分割には以下のようなデメリットもあります。
- 評価額で揉めることがある
- 代償金を支払うための資力が必要
代償分割は「不動産をいくらと評価するか」が大きなポイントです。
不動産の評価は複数の方法があるため、方法次第で評価額が大きく異なります。
不動産を取得する相続人とその代わりに財産をもらう相続人の間で評価額が食い違い、なかなか話がまとまらないケースも少なくありません。
また代償金が高額な場合、不動産を取得した相続人の経済的負担が多いことも難点です。
まとめると、「代償分割」に向いているのは下記のケースと言えます。
- 不動産を単独で相続したい人がいる
- 現物より現金での相続を望んでいる人がいる
- 分けにくい財産を平等に分けたい
1‐4.【分割方法③】換価分割
換価分割とは、遺産の全部もしくは一部をお金に換えて、そのお金を相続人で分割する方法です。
不動産の買い手が見つかり、相続人全員が納得する金額で売ることが前提となりますが、不動産の利用予定がなければ有効な選択肢となるでしょう。
換価分割のメリットとして以下が挙げられます。
- 公平に分割できる
- 不動産を維持・管理する必要がない
現金化できることが換価分割の大きなメリットです。
現物のままでは分割が難しかった不動産も、現金に換えてしまえば手間なく簡単に分けられます。
さらに、不動産を売却してしまえば維持、管理を続けるための費用やお金がかさむこともありません。
一方で、換価分割には以下のようなデメリットもあります。
- 資産を手放すことになる
- 売却には費用がかかる
- 立地により売却まで時間を要する
不動産という一つの資産を売却しなければならないことはデメリットです。
また、不動産売却にはさまざまな費用がかかることから、売却額の全部が手元に残るわけではありません。
立地によりなかなか購入希望者が現れないことも考えられます。
まとめると、「換価分割」に向いているのは下記のケースと言えます。
- 不動産の利用予定がない
- 平等に分割したい
- 代償金を用意する資力がない
1‐5.【分割方法④】共有
共有とは、一つの不動産を2人以上の相続人で共同して所有する方法です。
相続人の共有状態で相続するため、相続人間でトラブルにならないようであれば検討できるでしょう。
共有には、以下のようなメリットがあります。
- 不公平感なく分割できる
- 不動産を売却せずに済む
共有は、相続人間で不公平感なく遺産を分割できることがメリットです。
たとえば、相続財産が不動産一つしかなく代償分割や換価分割を選べない場合であっても共有することで不公平感なく分けられます。
不動産を手放さずに済む点も魅力です。
しかし、共有には以下のようなデメリットもあります。
- 売却には全員の同意が必要
- 他の相続人と日常的に連絡をとることになる
- 世代交代により権利が複雑化する可能性がある
一人でひとつの不動産を所有していれば、売却や維持、管理などその人の意思だけで自由に選択できますが、他者と共有していればそうはいきません。
共有では、売却や大規模な修繕工事などを行う際、共有者全員の同意が必要となります。
加えて、共有者が亡くなればさらに相続が発生し、結果的に共有名義人が細分化されて権利が複雑化することも考えられます。
相続が繰り返された結果、誰が共有者だか分からなくなることもあるでしょう。
まとめると、「共有」に向いているのは下記のケースと言えます。
- ほかの分割方法を選択できない
- 不動産を手放したくない
- 不動産の維持・管理を共有者で分担できる
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2.不動産相続にかかる相続税の概要
相続により財産を取得した場合、相続税がかかります。
しかしながら、相続税は基礎控除額を超えたときに限り超えた部分にだけ発生するため、実際に納付義務が生じることはほとんどありません。
本章では、相続税の概要と計算方法を簡単に解説します。
なお、相続税の詳細についてはこちらの記事で解説していますので、併せてご確認ください。
2-1.相続税とは
相続税とは、被相続人から遺産を取得した場合に課税される税金のことです。
決められた計算式に基づき、課税対象額を算出されます。
また、相続税申告のおおよその要否は、以下記載の国税庁のホームページから確認できます。
参考:国税庁「相続税」
参考:国税庁「国税庁 相続税の申告要否判定コーナー」
2-2.課税されるのは資産が3,600万円より多いときのみ
相続税は、基礎控除を超える場合のみに超えた部分にだけにかかる税金です。
基礎控除額の計算式は、以下のとおりです。
たとえば、法定相続人が4人の場合では、3,000万円+600万円×4=5,400万円となり、相続財産が5,400万円を超えるなら相続税が発生します。
なお、相続税の課税対象者は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に手続きしなければなりません。
2‐3.相続税の計算方法
相続税の計算手順は、以下のとおりです。
- 各相続人の課税価格を計算
- 相続税の総額を計算
- 実際に財産を取得した割合に応じて相続税を計算
まず、相続した財産をすべて集計して非課税の財産や控除できる金額を差し引き、課税価格を計算します。
次に、各相続人の課税価格をいったん合計し「遺産総額-基礎控除」を計算してから、各相続人の「法定相続分」で割ってから税率をかけ、相続税の総額を算出します。
最後に、相続税の総額を実際に取得する割合で分け、各相続人の税額を計算します。
なお、相続税額の計算の詳細は、国税庁のホームページを併せてご確認ください。
参考:国税庁「相続税の計算」
2‐4.相続税の申告と納付
相続税が発生したら、必要書類をそろえて被相続人の死亡時における住所地の所轄税務署長に提出します。
相続税申告時の必要書類は、以下のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時に至るまですべてのもの)
- 相続人のマイナンバー確認書類
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 法定相続情報一覧図
- 遺言書の写し
- 遺産分割協議書の写し
- 固定資産税評価証明書
- 登記事項証明書
- 公図・地積測量図
- 住宅地図
上記に加え、相続税の申告書が必要となります。
相続税の申告書は、最寄りの税務署の窓口もしくは国税庁のホームページからダウンロードが可能です。
申告書の作成や各税務署の所在地は、以下記載のリンクから確認できます。
参考:国税庁「相続税の申告書等の様式一覧(令和5年分用)」
参考:国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」
なお、相続税の申告と納付の詳細は、国税庁のホームページも併せてご確認ください。
参考:国税庁「相続税の申告と納税」
3.不動産相続に強い会社を選ぶには
不動産相続は、専門知識を要する場面が多々あります。
特に、相続人が多いと話がまとまらず分割までに多くの時間を費やすことになるかもしれません。
そこで、おすすめの方法が不動産相続に強い会社に依頼することです。
相続を得意とする不動産会社なら豊富な実績と知識が蓄積されており、より円滑な遺産分割を期待できます。
相続に強い不動産会社を探す際は「HOME4U 土地活用」がおすすめです。
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相続税は、相続財産が基礎控除額を上回ったときのみ課税されます。
詳細は「2.不動産相続にかかる相続税の概要 」にて解説しています。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人」で計算できます。
詳しくは「2‐2.課税されるのは資産が3,600万円より多いときのみ」をご確認ください。
必要書類をそろえ、被相続人の死亡時における住所地を管轄している税務署長宛てに提出します。申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
必要書類は、以下のとおりです。
- 相続税申告書
- 被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時に至るまですべてのもの)
- 相続人のマイナンバー確認書類
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 法定相続情報一覧図
- 遺言書の写し
- 遺産分割協議書の写し
- 固定資産税評価証明書
- 登記事項証明書
- 公図・地積測量図
- 住宅地図
詳細は「2‐4.相続税の申告と納付」にて解説しています。
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