アパートローン借り換えの必要書類・費用・チェックすべき5項目
今あるアパートローンを、別の金融機関のローンに変更すると、より低い金利にすることができるため、経営状態が改善し、返済負担が軽くなる、返済期間が短くなる、キャッシュフローがよくなるなどの効果が期待できます。
しかし、アパートローンを借り換えることによって、今の銀行取引を終わらせても問題がないのか、どこの金融機関なら受け付けてくれるのか、そもそも金利を下げると言っても、どのくらいまで下げられるのかなど、わからないことも多いかと思います。
そこで今回は、アパートローンの借り換えについて以下のようにまとめました。
- アパートローン借り換えのメリット・デメリット
- アパートローン借り換え前のセルフチェック5項目
- アパートローン借り換えの5フロー
最後までお読みなれば、アパートローンの借り換えについての基礎的な理解がすすみ、はじめてのアパートローンの借り換えに安心して挑めるようになります。
1.アパートローン借り換えのメリット・デメリット
あらためて、「アパートローンの借り換え」とは、現在ローンを組んでいる金融機関とは別の金融機関で、アパートローンを新しく組んで、ローンの返済を続けていくことです。
今組んでいるアパートローンの残債は、新しく組むアパートローンで完済するため、これから先のアパート経営計画や返済計画を、新しく作り直すことができます。
既存のアパートローンよりも低金利のアパートローンに借り換えができた場合は、返済総額を軽減し、キャッシュフローの改善や、返済期間の短縮につなげることができます。
そのため、アパートローンの借り換えでは、既存のアパートローンよりも条件の良いアパートローンに借り換えを行わなければ、借り換えの効果はありません。
なお、アパートローンの借り換えは、様々な書面が必要になり、またそもそも借り換えできるのか、借り換えることにメリットがあるのかなど、ご自身で判断するのは難しい場合もあります。
そこで、INVASEの「オンライン型アパートローン借り換えサービス」をおすすめします。
銀行の審査があるため、すべての方が借り換えできるものではありませんが、オンラインで瞬時に借り換え額が把握でき、本審査承認まで自宅で済ませることができます。
1-1.アパートローンの借り換えをする3つのメリット
- メリット1 金利負担が減る
- メリット2 返済プランが変えられる
- メリット3 より良いローンにできる
メリット1 金利負担が減る
アパートローンの借り換えをする最大のメリットは、金利が減って、返済負担が軽くなることです。アパートローンは、借入額が数千万円、多いときは億単位のお金を借り入れる高額なローンであるため、金利が1%下がるだけで、返済額も大きく変わります。
例を出して、おおまかなシミュレーション計算をしてみましょう。
アパートローンで5,000万円・金利3%を借り入れ、15年間返済を続けてきて、今回、金利の少し低いアパートローンへと借り換える予定だとします。
金利 | 毎月の返済額 | 残り15年の返済総額 | |
---|---|---|---|
現行のアパートローン | 3% | 約21万円 | 約3,700万円 |
新しいアパートローン | 2% | 約19万円 | 約3,400万円 |
上記表の通り、金利が1%下がると、毎月の返済額が約2万円、返済総額では、300万円もの違いがでてきます。
大きな借入額に対しての月2万円だとわかりにくいのですが、もし、このままアパートローンの借り換えをしなければ、300万円も多く返済することになる、と考えると金利差が生み出すオトク感がわかります。
メリット2 返済プランが変えられる
アパートローンを組んだ当初は、建物や設備も新築で、計画通りに経営がしやすいものですが、建物も設備も経年によって必ず劣化していきますので、だんだんと最初の頃のプランのままでは、経営が難しくなるケースがあります。
例えば、次のようなことが起き始めます。
- 設備が古くなり入居率が下がったため、周辺相場家賃より少し値下げをした
- 外観の劣化をカバーするため、外構リフォームを入れて修繕費がかさんだ
- こまめな手入れをしていて劣化は遅いものの、周辺に新築アパートやマンションなどのライバルができた
上記以外にも、アパート経営は計画通り行かなくなる原因が、たくさん出てきます。
その結果、年間収支で手残りの金額が減ってきてしまうなど、返済計画の練り直しをする必要が出てきます。
しかし、どのようなローンでも、ローンの途中で借入条件を変更することは難しいため、そのまま同じローンを続けていくと、最終的には返済額と収益のバランスが崩れ、返済不能になる可能性が高まります。
このような問題を、抜本的に解決できる方法が、アパートローンの借り換えです。
アパートローンの借り換えをして金利が下がれば、前項でも解説をした通り、返済負担が確実に減ります。
借り換え時に、返済計画と経営計画を一緒に変更できるため、管理・維持もしやすくなり、経営の負担が減ります。
また、想定していたよりも低い金利に変更出来た場合には、収支が大きくプラスになることもあり、アパート経営の収益性そのものが改善されます。
メリット3 より良いローンにできる
アパートローンのような高額ローンは、万が一、契約者が亡くなった場合に備え、団体信用生命保険に入るのが一般的です。
金融機関で結ぶ契約ですが、保険会社の出している保険商品ですので、一般の保険と同様に、一度加入すると途中から内容の変更ができません。
団体信用生命保険には、普通の死亡保険のほかに、疾病特約などがついた保険商品もあり、差別化が進んでいます。
しかし、後から疾病の保障を足そうと思っても、追加はできないことが多いのです。
アパートローンを借り換えると、その時にまた、新しい団体信用保険に加入できるので、より手厚い保険に変更することもできます。
保障内容は保険会社によって違いがありますので、ご自身の加入したい保険の取り扱いがある金融機関を選ぶようにします。
1-2.アパートローンの借り換えをする3つのデメリットと対策
- デメリット1 費用が発生する
- デメリット2 金融機関との付き合いが終わる
- デメリット3 審査に落ちる可能性もある
デメリット1 費用が発生する
アパートローン借り換えのデメリットは、借り換えのための費用が発生することです。
今のローンを終わらせるための費用と、新しいローンを組むための費用が、両方かかります。
費用の主な内訳は以下の通りです。例はすべて、借入額残金3,000万円で計算しています。
A.今のローンを終わらせるための費用
- 返済手数料
-
現在のローンを、新しいローンを使って完済させるときに発生する金融機関の事務手数料です。手数料は金額や金融機関によって異なります。契約書または金融機関のサイトなどで確認をしてください。
- 抵当権抹消費用
-
現在のローンで設定していた抵当権の抹消費用です。手続き1件につき1,000円です。
- 違約金
-
アパートローンの借り換えをすると、違約金がかかることがあります。違約金の有無は、今のローンを借りている金融機関との契約書に記載があり、所定の「%」が書いてあります。
一般的には、短期(およそ5年以内)に借り換えをした場合に発生し、借り換え金額の1~2%が相場です。仮に、残債3,000万円だった場合は30~60万円の違約金が発生します。
B.借り換え後のローンに必要な費用
- 事務手数料
-
新しくアパートローンを借りる時に発生する事務手数料です。金融機関によって異なりますが、借入額の1~2%が一般的です。例えば、3,000万円借りると、30万円の費用が発生します。
- 保証料
-
多くの場合、アパートローンを組む時に、金融機関経由で保証会社を入れています。保証会社に支払う保証料と、保証会社の事務取扱手数料が発生します。もともと保証料が不要な金融機関もあります。
金融機関・保証会社によって異なりますが、相場は借入金額の1~2%程度と言われています。例えば、3,000万円の借入で1%の保証料であれば、30万円が必要です。支払い方法は金利に上乗せをして支払う場合と、一括で支払う場合があり、解約時に選択できます。
- 登録免許税
-
新しいローンで抵当権を設定するための登記費用です。「借り換え先金融機関の借り入れ額×0.4%」ですが、軽減税率の適用ができます。3,000万円であれば、3,000×0.4%=12万円に軽減税率がかかります。
【参照:土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減】 - 司法書士報酬
-
抵当権抹消・抵当権設定手続きをお願いする司法書士への手数料です。地域や事務所によって違いがありますが、5~10万円が相場です。ABまとめて手続きしてもらうこともできます。
- 印紙税
-
契約書などに貼る収入印紙のことで、使用することで納税したことになります。
- 借入額額1,000~5,000万円:2万円
- 借入金額5,000~1億円以下の場合は6万円
- 火災保険・地震保険
-
新たな借り入れ金融機関から、建物への火災保険と地震保険の加入をすすめられます。個人で申し込みをすることもできますので、借入の際には任意になります。
対策
借り換えを検討する時には、今までの借入先と、新しい借り入れ先の両方にかかる費用を試算します。
そして、金利を下げることで抑えられる返済総額から、借り換え費用を差し引いて、得があるかどうかを確認します。
もし、借り換え費用以上のメリットが出ないのであれば、借り換えによって損失が出てしまいますので、一旦、見送るようにします。
試算をする際には、金融機関との契約書と要件などをよく見ておくことも大事です。
例えば、5年以内に借り換えると手数料が発生するのであれば、5年が過ぎてから借り換えをすれば、その分、費用を減らすことができます。
このように、アパートローンの契約内容によって、借り換えができるタイミングも違ってきますので、借り換えのための下調べをしておくことも大事です。
デメリット2 金融機関との付き合いが終わる
借り換えをすると、当然ですが、今までの金融機関とは関係性が終わります。
アパートやマンション経営は、長い年月をかけて、利益を得ていくタイプのビジネスですので、金融機関とオーナーの間には、長い年月をかけて、少しずつビジネス上の信頼関係が育っていきます。
アパートローンを借りることにより、オーナーは自分では用意できないような大きな金額を借入して経営をスタートさせ、金融機関は貸し付けたお金の金利を得ることで、お互いにビジネスメリットが発生しています。
しかし、借り換えによって金融機関を変更してしまうと、今日まで育んできた関係性に、一度、ピリオドを打つことになります。
対策
借り換えは、主にオーナーにとってメリットのあることであり、金利が低くなることで、返済額も借り入れ総額も減らすことができ、アパート経営の収支状況が良くなりますので、積極的に行いたいところです。
しかし、金融機関から見ると、長期間利息を支払ってくれるはずの優良顧客を失うことになりますので、損失になります。
このことを念頭に置き、借り換えを検討する際は、必ず、担当者に、借り換えを検討している旨を相談することをおすすめします。
同じ金融機関内で借り換えることは珍しいのですが、今日までの取引の関係上、金融機関にとって失いたくない顧客であれば、金利引き下げやプランの見直し、関連金融機関への案内など、経営収支向上のための、前向きな姿勢を見せてくれます。
金融機関とオーナーの関係性は、あくまでビジネス上の信頼関係ですので、またお互いにビジネスメリットがあればまた、新しい土地活用などの借り入れなどはできます。
しかし、お互いにメリットがあることが前提の関係性ですので、どのような理由であっても、長年育んできた良好な関係性に、何の相談もなくピリオドを打つのだけは、回避したほうが良いでしょう。
デメリット3 審査に落ちる可能性もある
今までのアパートローンに通っていたからと言って、新しいアパートローンの審査に通るとは限りません。
アパート経営は息の長いタイプの経営ですので、今のローンを組んだ当時よりも状況は大きく変わっています。
例えば、
- 10歳以上年を取った
- 職場が変わっている
- 病気をした
- 家族が増えた
など、オーナーの持つ社会属性や背景が大きく変わっているケースもあります。同時に、金融機関側も、吸収合併などで、金融商品や体制などが変わっていることもあります。
また、年月が過ぎれば、当時新品だったアパートも、経年劣化によって修繕や修理が必要な個所が増え、経費が多くかかり、収益に影響が出ているケースもあります。
そのため、今から借り換えで申し込むアパートローンは、今の条件での審査であるため、昔と同じように通る保証はどこにもありません。
対策
オーナーの年齢、年収などの社会属性、建物の劣化などで、以前よりも条件が悪くなっている前提で、借り換えを考えます。
新しいローンでも、今のローンと同じように、申請前には、事業計画や返済計画が必要で、内容の妥当性と安全性が審査結果に大きく影響します。
現時点での物件の収益性と、自分の現在の状況などを考慮したうえで、安全性の高い返済計画を立てて、万全の体制で臨むべきです。
今のローンを組む時は新築アパートやマンションを建てるところからの計画でしたが、今回の借り換えをする際には、不動産の担保価値以外にも、現在の経営状態も審査の対象となりますので、空室率の改善、返済滞納をしない、賃料収入以外にも固定収入がある、物件の資産評価額が以前よりも高くなっているなど、借り換え先の金融機関にとってお金を貸すメリットがないと、借り換え審査をクリアするのは難しくなります。
2.アパートローン借り換え前のセルフチェック5項目
本章では、アパートローンの借り換えを検討する前に、借り換えができるかどうかを自分でチェックするための5項目をまとめています。
- 信用情報:勤務先と年収・金融資産などをチェック
- 担保評価:担保にした不動産の資産評価額をチェック
- アパートの利回り:類似物件の利回り相場と比較して、収益安定性をチェック
- アパートの空室率:現在運営中のアパートの空室率をチェック
- ローン返済状況:現在返済中のローンなどをチェック
これらの項目は、金融機関が審査の際に、特に厳しく見るポイントですので、1つでも気にかかるものがあれば、修正・改善をしてから借り換えの申請するようにしてください。
2-1.信用情報
金融機関が融資の際に見ている信用情報とは、個人の社会属性のことです。主に、勤務先と年収・金融資産を見ていますが、どのように評価するのかは、金融機関ごとに独自の基準があります。
- 勤務先と年収
-
会社員の場合は、ある程度の社員数がいる会社にお勤めで、勤続年数が3年以上あれば、基本的には問題がありません。
特に、大企業にお勤めの場合は、リストラや倒産になる確率が比較的低いため、万が一、アパート経営が不振になっても、給与によって毎月の返済がカバーできると判断するため、審査には有利だと言われています。医者・弁護士・税理士などの国家資格のある年収の高い職業の方は、定年がなく、引退をしない限りは死ぬまで働けるため、長期にわたって返済に支障が起きにくいと判断され、審査に有利だと言われています。
個人事業主や経営者は、収入が会社員よりも多くても、収入の安定性という面がネックになるため、次項の金融資産でカバーをします。
- 金融資産
-
金融資産とは、預貯金に加え、株式・債券などの現金化できるタイプの資産のことです。
こちらも、経営が悪化したときに、返済に充てられるため、金融機関では重要視します。
アパートローンを借り換えるときに、頭金が不足している場合は、これらの金融資産を頭金代わりにすることもできます。どのくらいの金融資産があればよいのかも、自己資金の準備額、アパートの不動産価値などを総合的に考慮したうえで、金融機関が独自に判断をしていきます。当然、多ければ多い方が有利です。
2-2.担保評価
担保評価とは、担保にした不動産の資産評価額のことです。金融機関は、ローンの借り手が、万が一返済できなくなった時に、担保していた不動産を売却して貸し出し金額の補填をします。
そのため、「担保評価>借入額」となっているのが理想です。
担保評価額は、物件の市場価格に、金融機関ごとに持つ独自の基準値をかけて算出するため、市場価格の6~7割くらいになると言われています。そのため、物件の市場価格がわかれば、だいたいの借入可能額もわかります。
賃貸経営をスタートしたときは、土地建物ともに新築で、法定耐用年数も長く、資産価値が最も高い状態です。
しかし、アパートローンを借り換えるときには、現状のアパートの状態で審査されますので、物件の評価額が低い場合は、賃貸経営で出た利益を極力繰り上げ返済して、「担保評価>借入額」のバランスになるように調整してから、アパートローンを借り換えるようにします。
2-3.アパートの利回り
アパートの利回りも、審査に影響があります。
金融機関によって、利回りの採択方法や判断基準には違いがあるものの、「収益還元法」で審査をするタイプの金融機関では、利回りを重要視する傾向があります。
収益還元法とは、「この物件は将来このくらいの利益を出すかもしれない」という、収益性への期待を中心に利回りを考える審査方法です。簡単に言うと、そのアパート経営の賃料だけで、ローンが全額返せるかを見る方法です。
審査方法は、審査対象の不動産物件と、類似物件の利回りを複数比較して、借入額の妥当性と、期待している収益に対して、どのくらいの危険性(収益のダメージになる要素があるか)があるのかなどを見ています。
この時、審査対象物件の利回りが、類似物件の利回り相場よりあまりにも低い場合は、将来、少しの空室や退去、金利上昇からのダメージが大きく、家賃収入からの返済ができなくなる可能性が高いと判断されます。
セルフチェックの方法としては、金融機関がどの審査方法を取っているのかは、申込者にはわからないことが多いので、アパートローンの借り換えをする場合には、先に、物件のある近隣エリアで、類似の条件(敷地・部屋数・賃料・築年)を持つ賃貸物件の利回り相場を確認し、そこから大きく離れていないかどうかをチェックしてみます。
例えば、近隣の類似物件が利回り7%前後で運営していて、ご自身の物件がそれよりかなり低い%で経営しているのであれば、賃料の総収入が増えるような対策を打ってから、審査申込をするようにします。
具体的な対策とは、主に空室対策のことになりますが、リフォーム・リノベーション・設備付与など、利回りアップできる要素を不動産管理会社や建築会社にも相談しながら、アパートローン借り換えを検討することをおすすめします。
また、このような対策を打つことで、アパートローンの借り換えをしないでも、収支バランスが改善されることがあります。
2-4.アパートの空室率
アパートに空室があると、アパート経営による賃料収入が減るため、審査には不利になります。理想は、80~100(満室)%の状況が作れることです。
アパートの入居状況は、努力である程度は解消できますので、募集と管理を委託している不動産会社に相談をし、入居者確保に力を入れてもらい、満室にしてからアパートローン借り換えを申し込むことをおすすめします。
広告宣伝費などの費用は発生しますが、金利が下がったことのメリットに比べれば、小さな費用と言えます。
2-5.ローン返済状況
アパートローンは、家賃収入をそのまま返済に充てるケースがほとんどですので、アパート経営が順調にいっていれば、返済も順調に進みます。
しかし、アパートローンを借り換える1年以内に、何らかの理由で支払い遅れや滞納があると、経営能力・返済能力に問題ありと見なされるため、審査に通らなくなる可能性があります。
この場合は、今回のアパートローンを借り換えは見送り、1年以上の支払い遅れがない状況を作ってから再チャレンジすることをおすすめします。アパートローンの借り換えをする際には、ご自身の借りているローンの状況などをチェックして、万全の体制で挑みましょう。
3.アパートローン借り換えの5フロー
本章では、アパートローンを借り換えする際の全体の流れをまとめています。
ある程度の流れを把握しておくことで、実際にやるべきことがわかり、準備もはかどります。
3-1.希望する借り換え条件を決める
申込などをする前に、現在の経営状態から、少しでも経営状態を改善し、利益を増やすために、どんな借入条件が必要なのかを探ります。
3-1-1.現状を把握
金融機関に相談する前に、現在経営中の物件の現状を把握します。確認すべきポイントは次の3つです。
1.物件情報
物件は、担保評価の対象になります。
必要書類:契約書・重要事項説明書・登記簿謄本・公図・返済予定表(金融機関から受け取ったもの)
2.収支状況(レントロール)
今までの経営収支がわかるものを、年単位でまとめ、わかりやすく整理しておきます。出来る方は、グラフなどを用いて、収支状態がわかるようにします。管理会社から定期的に送られてくる毎月の精算レポートも含まれます。
3.賃貸経営以外の収入証明と資産
賃貸経営以外に給与収入や、金融資産・不動産などがある場合は、収入と資産のリストを作っておきます。給与は源泉徴収票などの収入証明、金融資産は通帳や証券のコピー、不動産などは固定資産税明細書なども、用意しておきます。
これらの書類は、金融機関に相談や申請をするときにも使いますので、足りないものは探しておきます。
3-1-2.借り換えた場合のシミュレーション計算をする
アパートローンの借り換えをすることによって、支払状況がどのくらい変わるのかを、シミュレーション計算します。
計算は、ネットにある無料シミュレーターを使うと便利です。
複数の金融機関の資料を集め、なるべく数多くの試算をして比較します。
例えば、残額が3,000万円の状態で借り換えた場合を、以下のように表にして比較するとわかりやすくなります。
現在の銀行金利 3% | A銀行 2% | B銀行 1.2% | C銀行 1% | |
---|---|---|---|---|
毎月返済額 | 21万円 | 19万円 | 18万円 | 17.9万円 |
年間返済額 | 249万円 | 232万円 | 219万円 | 215万円 |
金利総額 | 730万円 | 475万円 | 280万円 | 230万円 |
返済総額 | 3,700万円 | 3,400万円 | 3,300万円 | 3,230万円 |
返済総額の差額 | 300万円 | 400万円 | 470万円 |
上記のように並べて比べると、このまま3%で残りの15年の返済を続けるよりも、アパートローンの借り換えをしたほうが良いことがわかります。
あくまで、申込前のシミュレーション計算なので、申込者の条件などに沿って、実際の金利は変わります。しかし、数多くの金融機関を比較しておけば、経営の選択肢が増え、より良い借り換え先を選ぶこともできます。
新しい借入先に行く前には、必ず今のアパートローンの金融機関へ借入条件変更の交渉をします。
変更を受け入れてくれれば、諸費用などをかけずに、より有利な金利で借り換えをしたのと同じ効果を出すことができます。
【参照:無料シミュレーション リアルタイムシミュレーター】
3-2.借り換え相談先を探す
アパートローンの借り換えにより、収益が改善するなどのメリットがあることがわかり、今のアパートローンでは借り換え内容の変更ができない場合は、必要書類をそろえて、借り換え先予定の金融機関にローンの相談に行きます。
金融機関 | 金利めやす | 対応エリア |
---|---|---|
都市銀行 | 1~2% | 全国対応 |
地方銀行 | 1.5~2.5% | 地方銀行の本店を中心として営業地域 |
信用金庫・信用組合 | 2~3.5% | 本店支店のある周辺エリアのみ |
ネット銀行 | 2~3% | 全国対応。ただし店舗はなし。 |
ノンバンク | 2~8% | 全国対応 |
金融機関には上記表のような種類があり、それぞれ、融資の仕方に特徴があります。金利は金融機関によって大きく異なり、その時の金利水準に沿ったままで出すところから、常に水準よりも高い設定をするところがあります。
上記表は、変動金利をメインに、都市銀行を基準として表下に向かって増えていきます。
あくまでめやすですので、実際の金利は各金融機関のプラン設定や、申込者の条件によって変わります。
融資期間は、基本的には物件の耐用年数の範囲内になります。
3-2-1.都市銀行
都市銀行とは、いわゆる大手金融機関と呼ばれる、都市圏に本店を置き、全国に支店を構えている銀行のことです。
三菱UFJ、みずほ銀行、三井住友銀行は3メガバンクと呼ばれています。
それ以外の大手金融グループとして、りそなホールディングス、あおぞら銀行、SBIホールディングスなどがあります。
メガバンクは最も金利が低く、1~2%代で安定しているのが特徴ですが、取引先は大手企業が多く、個人の方がアパートローン融資や借り換え融資を受けるのは難しいでしょう。
その他大手金融グループは、メガバンクに比較すると個人事業主への取引にも積極的ですので、相談をしてみる価値はあります。
3-2-2.地方銀行
地方銀行とは、特定の都道府県に本店を置き、主に本店を中心とした近県範囲の企業と取引をするタイプの銀行です。
例えば、千葉銀行・静岡銀行など、わかりやすい名前がついています。
地域活性化を目的として、地域に密着したさまざまなタイプの金融商品を取り扱っています。
経営する物件が、地方銀行の取引エリア内にあるのであれば、メインバンクとしておつきあいするのに適しています。
アパートローンなどを含めた事業ローンの取り扱いが複数あるため、アパートローンの借り換え相談はしてみる価値があります。
3-2-3.信用金庫・信用組合
信用金庫・信用組合は、都道府県よりもさらに狭いエリアを対象にしている金融機関です。
基本的に市町村単位をメインとし、最も遠くても営業所が隣接する隣の県くらいまでしか商圏にしません。
例えば、横浜信用金庫・湘南信用金庫など、取り扱い範囲がハッキリわかるような店名が多いのも特徴です。
信用金庫・信用組合は、運営の実務としては銀行とほぼ同じなのですが、非営利法人であるため、一般的な銀行と比べると「お付き合い」が重要視される傾向があります。
そのため、長い期間の取引経歴があることや、そのような履歴のある方からの紹介に対しては、とても誠意ある対応をしてくれます。
また、商圏内にある事業貸付に対しては、基本的に積極的です。すべての信用金庫・信用組合にアパートローン商品があるわけではありませんが、物件のあるエリアの信用金庫・信用組合は必ず調べるようにしてみましょう。
3-2-4.ネット銀行
ネット銀行・ネットバンクは、現実の店舗を持たない銀行です。
本店業務としての店舗はありますが、いわゆる、一般の銀行のような支店営業をしていません。
人件費を抑えることで、手数料などが安く、都市銀行のATMとコンビニATMで入出金ができるなど、便利な点が多いのが特徴です。
例えば、ジャパンネット銀行・ソニー銀行・楽天銀行・オリックス銀行・SBJ銀行などがあります。
借り換えの場合は、「不動産投資ローン」「不動産担保ローン」または「おまとめローン」という商品名で表示されていることが多く、どのネット銀行でも、取り扱いに積極的です。
店舗がないのでネットからの申し込みと相談のみになりますが、スマホからも申し込みができます。
また、ネットのみの手続きで店舗営業がない分、借り換えの際に発生するさまざまな事務手数料が無料なこともメリットです。
ただし、金融機関によっては金利の高い固定金利しか選べないところもありますので、ネット銀行のなかでも、複数の金利比較をしてから選ぶようにします。
3-2-5.ノンバンク
ノンバンクとは、銀行以外の金融機関のことを指し、預金の受け入れを行わずに、お金を貸すなどの業務に特化した金融機関のことです。
貸すお金の原資は、一般の銀行の場合は預金口座に預けられたお金ですが、ノンバンクの場合はノンバンクが銀行から借りた資金を貸し付けています。
そのため、ノンバンクが貸しているお金にはすでに金利が付いているため、ノンバンクでの融資は、一般の金融機関よりも高利になります。
貸付専門機関ですので、他の金融機関に比べると審査時間も短く、融資を受けやすいのが特徴です。
ノンバンクには、新生インベストメント&ファイナンス、三井住友トラスト・ローン&ファイナンス、セゾンファンデックスなどがあります。
3-3.必要書類と費用の準備
アパートローン借り換えの申請に必要な書類と費用を準備します。
アパートローン借り換えの申し込みは、同時に複数の金融機関に申し込みをしても問題ありませんので、必要書類は、申込する数だけ準備します。
手数料などの費用は、実際に融資が決定してから発生するものですので、1件分のみです。
3-3-1必要書類
- 物件情報に関するもの
- 収支状況(レントロール)
- 賃貸経営以外の収入証明と資産の証明になるもの
- 身分証明書・職務経歴書
- ・物件情報に関するもの
-
現在経営中の賃貸物件の契約書・重要事項説明書・登記簿謄本・公図・返済予定表(金融機関から受け取ったもの)をまとめておきます。
契約書・重要事項説明書・登記簿謄本・公図や測量図などは、建築会社から竣工の際に手渡されています。また、アパートローンを組んだ時の契約書は、返済予定表やその他の書類と一緒に、金融機関で手渡されています。
- ・収支状況(レントロール)
-
融資申請で提出する、今までの経営収支がわかる帳簿です。手書きやエクセルでよいので、年単位でまとめ、わかりやすくしておきます。管理会社から定期的に送られてくる毎月の精算レポートは別途ファイルをしておきます。
- ・賃貸経営以外の収入証明と資産の証明になるもの
-
アパート経営による収入以外に、給与などの収入がある方は、その収入が証明できるものを用意します。
- 会社員の方:源泉徴収票
- その他の不動産収入などがある方:確定申告書の控え・固定資産税明細書
- 金融資産など:証券・債券・通帳など
- ・身分証明書・職務経歴書
-
身分証明書は、顔写真付きのものを用意します。パスポート・運転免許証・マイナンバーカードなどが適切です。
職務経歴書は、今のローンを組んだ時から、仕事が変わった場合などに提出します。
主に、融資の担当者が確認のために見るものですので、手書きまたはプリントアウトしたもので問題ありません。
3-3-2.費用準備
借り換えをするアパートローンの残高と、借り換えをする金融機関に応じて、必要な金額が変わります。
今のローンを終わらせるためにかかる費用と、新しく借り換えるための費用が両方かかります。
概算でよいので、借り換え費用の1~2%程度を、借り換えのための諸費用として準備しておきます。
今のローンを終わらせるための費用
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借り換え後のローンに必要な費用
|
これらの費用が、金融機関ごとにどのタイミングで必要になるのかも、チェックしておく必要があります。
3-4.任意の金融機関に相談に行く
必要書類を持って、任意の金融機関に相談に行きます。
相談時は、直接行く方法と、電話相談のうえで訪問をするパターンがあります。
どの場合でも、相談担当者に、借り換え理由や、現在の経営状態など、いろいろな角度から質問をされます。
すべて、必要書類に書いてあることばかりですが、オーナーがご自分の言葉で、経営状態を明確に説明できる方が心証は良くなりますので、経営状態はよく把握しておく必要があります。
特に、管理会社に多くのことを丸投げしてしまっているケースは要注意です。
同じ資料を持って同じ金額の内容を相談に行くのですが、金融機関によって対応が少しずつ違います。
相談はあくまで相談ですので、シミュレーション計算をした数字よりも、低い金利にできる方法などがあれば、このタイミングで確認しておきます。
足を運んだ相談先の中から、メリットの大きいと思われる金融機関へ審査の申し込みをします。
この時、金融機関から提示された必要書類を速やかに出せるよう、書類などは前もってセットしておきます。
金利引き下げの交渉は、申し込みをする段階でします。
金融機関が納得する理由が必要ですので、経営者として明確な説明ができる様に準備をしておきましょう。
残りの返済期間の総金利額を減らせるメリットを考えれば、相談前に、税理士などに有料相談をしておくのもおすすめです。
審査申込も、複数の金融機関に同時にしても問題ありません。相談、申請ともに無料です。
3-5.借り換え実行
審査が通過したものから、任意の金融機関でアパートローンの借り換えを実行します。
借り換えに伴う諸作業をし、必要な費用を支払います。借り換え後は、新しい金利での返済が始まります。
まとめ
いかがでしたでしょうか、アパートローンの借り換えについてまとめました。アパートローンの借り換えは、金利が下がることにより、返済額の負担を減らし、経営状態を大きく改善できる手段であることがわかりましたね。
ただし、経営中の物件の借り換えをすることは、新築のアパート資金を借りた時よりも金融機関からのチェックも厳しく、そのままの状態では借りられないことが多いこともご理解いただけたと思います。また、あらかじめ対策をすることで、審査をクリアできる確率を上げることができるので、借り換えにもある程度のスケジュールが必要です。
アパートローンの借り換えによってキャッシュフローが大きく改善されれば、残りの返済期間そのものを短縮させることも可能です。借り換えをご検討の方は、本記事のセルフチェック項目に沿って対策を打ち、出来るだけスムーズにアパートローンの借り換えができるように、準備をしておきましょう。
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