【初心者向け】遺産相続手続きを「自分でやるかどうか」の判断基準とやり方
本記事では、相続人が「自分で遺産相続手続きをする」ための判断基準と、そのやり方について解説します。
この記事を読むと、
- 自分で遺産相続手続きをするかどうかの判断基準
- 自分で遺産相続手続きをする際の費用・手間・流れ
- 遺産相続の手続きを自分でする際の注意点
といったことがわかります。
この記事の内容
1. 「自分で遺産相続手続きをする」かどうかの判断基準
遺産相続の手続きは、専門家に依頼せず自分ですることが可能です。
しかし、遺産相続には専門的な知識が求められ、相続した財産の種類や相続人の数などによって手続きも変わるため、途中で挫折するケースも少なくありません。
まずは以下のケースを参考に、相続手続きを自分で行えるか判断してみましょう。
1‐1.自分で手続きしやすいケース
以下のようなケースでは、自分でも比較的スムーズに相続手続きをすることができます。
遺産相続や 相続人の状況 |
自分で手続きしやすい理由 |
---|---|
相続人の数が少ない | 相続人が自分1人など少数の場合は、必要となる書類の収集や手続きの手間が最小限で済みます。 相続人の調査も不要なのでシンプルです。 |
相続人同士の関係性が良好 | 相続手続きでは、相続人全員の「戸籍謄本」や「印鑑証明」などが必要になることがあります。 相続人同士の関係性が良好であれば全員分の取得が容易なので、手間やリスクも低くなります。 |
遺産に不動産がなく預貯金のみ | 所在する地域や築年数で評価額が変化する不動産と違い、預貯金は評価しやすく複雑な計算も特にありません。 金融資産や現物資産なども預貯金に比べ評価が難しくなります。 |
平日に自由な時間を作れる | 手続きの際に出向く必要のある役所や、金融機関などの対応時間は、一般的に平日の午前から夕方までです。 「平日を自由に利用できる」「休日を確保しやすい」ことが重要になります。 |
複雑な手続きや情報収集、勉強が苦にならない | 相続手続きは「遺言書の有無」や「財産の種類」「相続人の数」などにより複雑になる可能性があります。 それらの調査や手続き、また必要となる「法律や税制などの知識」を学ぶ事が苦にならないのも大事な要素です。 |
1‐2.専門家に任せた方が良いケース
以下のようなケースでは、自分で相続手続きをする難易度が高いため、専門家に任せた方が良いかもしれません。
遺産相続や 相続人の状況 |
専門家に任せた方が良い理由 |
---|---|
できるだけ早く売却したい | 相続した不動産は、登記手続きにより名義変更しないと売却できません。 最短で現金化したい場合は、手続きに慣れた専門家に頼るのがおすすめです。 |
負債などのマイナスの財産が多い | 負債などマイナスの財産が多い場合は、「相続放棄の手続き」をするのが一般的です。 相続放棄の期限は相続の事実を知ってから3ヶ月以内で、手続きを忘れると負債を相続するリスクもあるので、間違いのない判断をするには専門家がいると助けになります。 |
登記を放置していた不動産の相続 | 相続登記をせず放置されていた不動産は、「数世代に遡って相続人探し」が必要になる可能性があります。 「戦前の旧民法」を用いて判断が必要になることもあり、専門知識が求められます。 |
相続税や遺産分割などが発生する | 相続税が発生すると、「複雑な税金の計算や申告手続き」が必要です。 換価分割や代償分割など遺産分割を行う場合は、遺産分割協議書の作成にミスがあると「贈与税が発生するリスク」もあるので、専門家に任せると安心です。 |
相続した不動産が遠方にある | 相続登記等、不動産の所在する地元でしかできない手続き等があります。 自分で行うと往来の負担・手間が大きいので、専門家に任せてしまうのも手です。 |
相続内容や自分自身の状況に合わせて判断するとよいでしょう。
また、「相続手続き」の代行・相談を依頼できる専門家については以下をご参考ください。
依頼内容 | 弁護士 | 司法書士 | 税理士 |
---|---|---|---|
相続財産の調査 | 〇 | 〇 | 〇 |
遺産分割協議書のトラブル解決 | 〇 | × | × |
遺産分割協議書の作成 | 〇 | 〇 | △ |
不動産の相続登記 | × | 〇 | × |
遺留分侵害額請求 | 〇 | × | × |
相続税の申告 | × | × | 〇 |
特に不動産相続に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
2.「自分で遺産相続手続きをする」際にかかる費用と手間
遺産相続手続きには必要となる書類が多くあり、自分で手続きをするには一定の手間と学習が必要になりますが、費用は格安で済みます。
一方、それを専門家へ任せる事もできますが、ある程度費用が掛かってきます。
- 自分で遺産相続する場合
3,000円程度~ - 専門家に手続き代行を依頼する場合
100,000円程度~
※「遺産分割協議書」の作成を専門家に依頼する場合は費用が大きく増加します。
また、不動産を相続した場合にかかる「不動産登録免許税」等の税金は含んでいません。
専門家に依頼する場合は、相続財産の金額や種類、相続人の数などにより変動幅がありますので留意ください。
自分で相続手続きを進める場合、必要な書類と費用は主に以下となります。
必要書類 | 入手場所 | 取得費用 | 備考 |
---|---|---|---|
遺言書 |
|
|
|
被相続人の戸籍謄本 | 本籍地の 市町村役場 |
450円/1通 (※除籍・改製原戸籍は750円/1通) |
出生時から死亡時に至るまですべてのもの |
相続人全員の戸籍謄本 | 本籍地の 市町村役場 |
450円/1通 | 被相続人の死亡日以降に発行されたもの |
被相続人の住民票除票 | 本籍地の 市町村役場 |
300円/1通 | 登記簿上の住所および本籍地の記載があるもの ※被相続人の登記簿上の住所が戸籍謄本等に記載された本籍地と異なる場合に必要 |
金融資産の残高証明書 | 金融機関窓口等 | 800円/1通 | 各金融機関による |
遺産分割協議書 | 税理士の場合:遺産総額の0.5~1%ほど (相続税申告手続きを含む) (※専門家により目安が異なる) |
遺産分割協議を行う場合 | |
相続人全員の 印鑑証明書 |
居住地の 市町村役場 |
300円/1通 | |
不動産を相続する相続人の住民票 | 居住地の 市町村役場 |
300円/1通 | |
固定資産税評価証明書 | 不動産の所在地がある市町村役場 | 400円/1件(2件目以降100円/1件) (※東京都23区内の場合) |
登記申請をする日の属する年度のもの |
登記事項証明書 | 法務局 | 600円/1通 |
遺産相続手続きの中でも、書類の収集には大きな労力を要します。
特に被相続人の戸籍謄本は、本籍地が遠方であったり、転籍が多かったりすると収集に時間がかかる場合があるので注意しましょう。
不動産を相続した場合の手続きに伴う費用や手間に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
3.「自分で遺産相続手続きをする」際の流れ
遺産相続手続きは、完了まで多くのステップがあります。
全体の流れや必要書類を事前に把握しておくことで、スムーズに進められます。
遺産相続の主な手順は、以下のとおりです。
流れ | 必要な手続き | 誰が | どこで | 期限 |
---|---|---|---|---|
1 | 死亡届を提出する |
|
市町村役場 | 7日以内 |
2 | 年金受給停止 | 親族 | 年金事務所 |
|
3 | 介護保険の資格喪失届 | 親族 | 市町村役場 | 14日以内 |
4 | 遺言書の確認・遺言書の検認 (公正証書遺言以外)をする |
相続人 |
|
なるべく早く |
5 | 法定相続人の確認をする | 相続人 | 市町村役場 | なるべく早く |
6 | 相続財産の調査を行う | 相続人 | 金融機関等 | なるべく早く |
7 | 遺産分割協議を実施する | 相続人 |
|
なるべく早く |
8 | 預貯金等の相続手続き | 相続人 | 金融機関等 | なるべく早く |
9 | 相続の限定承認・放棄の申述をする | 相続人 | 家庭裁判所 | 3カ月以内 |
10 | 準確定申告をする | 相続人 | 税務署 | 4カ月以内 |
11 | 遺産分割協議書を作成する | 相続人 | 遺産分割協議の場 | なるべく早く (できれば10カ月以内) |
12 | 相続税の申告と納付をする | 納付義務のある相続人 | 税務署 | 10カ月以内 |
13 | 相続登記をする | 相続により不動産を取得した相続人 | 法務局 | 3年以内 |
このように、自分で遺産相続手続きをすると、書類収集や手続きの手間はかかりますが費用は最小限で抑えられます。
相続内容や自分の状況に合わせ、より確実かつスムーズに手続きを完了できる方法を選びましょう。
相続した土地の活用を検討しているなら「HOME4U 土地活用」がおすすめです。簡単な情報入力で最大10社からご所有の土地にあった活用プランの提案を受けられます。
4. 「自分で遺産相続手続きをする」際の注意点
最後に、自分で遺産相続の手続きをする際の注意点を紹介します。
主な注意点は、以下の4つです。
- 自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認する
- 早い段階で相続人の調査と確定を済ませる
- 必要書類の不備に気をつける
- 平日に手続きのための時間を確保する
ひとつずつ、解説します。
4‐1.自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認する
遺言書による相続では、その遺言書が「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」なら家庭裁判所にて検認が必要です。
検認とは、遺言書を開封し内容を確認するための手続きのことで、相続人に遺言書の存在や内容を知らせると共に、その内容を明確にして偽造等を防止する役割があります。
検認が済んでいない遺言書を法務局に持っていっても相続登記の手続きはできません。
必ず、家庭裁判所にて検認が済んだものを持参しましょう。
参考:裁判所「遺言書の検認」
4‐2.早い段階で相続人の調査と確定を済ませる
遺産相続により不動産を取得したら、速やかに相続人を調査し確定します。
不動産の相続登記をする際は、すべての相続人が相続登記に同意していることを証明しなければなりません。
そのため、できるだけ早く相続人を調べ、確定する必要があります。
後に、新たな相続人が見つかったといった事態に陥らないよう念入りに調査しましょう。
4‐3.必要書類の不備に気をつける
自分で相続の手続きをするなら、必要書類を不備なく集めることが重要です。
不備があれば申請が通らなかったり、期限内に手続きできなかったりとさまざまな支障が生じます。
特に、遺産分割協議により遺産を分ける場合、自分で遺産分割協議書を作成するなら無効にならないよう注意が必要です。
4‐4.平日に手続きのための時間を確保する
法務局や家庭裁判所、市役所の開庁時間は、平日の午前から夕方までに限られています。
相続手続きを自分でするなら、開庁時間に合わせて時間を確保しなければなりません。
必要書類の収集や各手続きに伴う相談、申請などを見据えて時間を取っておきましょう。
登記申請中に補正があった場合は、申請書に記載した連絡先に電話がかかってくることがあります。
相続登記申請中は、法務局からの着信に気づけるような体制を整えておくと安心です。
自分で手続きしやすいケースは、以下のとおりです。
- 相続人の数が少ない
- 相続人同士の関係性が良好
- 遺産に不動産がなく預貯金のみ
- 平日に自由な時間を作れる
- 複雑な手続きや情報収集、勉強が苦にならない
以下のような場合は、専門家に任せた方が良いでしょう。
- できるだけ早く売却したい
- 負債などのマイナスの財産が多い
- 登記を放置していた不動産の相続
- 相続税や遺産分割などが発生する
- 相続した不動産が遠方にある
また、遺産相続手続きの詳細は「3.「自分で遺産相続手続きをする」際の流れ」にて解説しています。
主な注意点は、以下の4つです。
- 自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認する
- 早い段階で相続人の調査と確定を済ませる
- 必要書類の不備に気をつける
- 平日に手続きのための時間を確保する
各注意点の詳しい解説は「4.自分で遺産相続手続きをする際の注意点」をご一読ください。
電話でもプラン請求をお受けします。「個人情報の取り扱いについて」に同意の上、お電話ください。