【初心者向け】不動産相続手続き(相続登記)にかかる費用と手間について
本記事では、不動産の相続登記にかかる費用と手間について解説します。
この記事を読むと、
- 不動産の相続登記にかかる費用
- 相続登記の手続きは必須
- 自分で相続登記するときの注意点
といったことがわかります。
1.不動産相続登記にかかる費用
不動産の相続登記にかかる費用として、以下5つが挙げられます。
- 登録免許税
- 必要書類の取得費
- 遺産分割協議書の作成費
- 遺言書の取得費
- 司法書士の依頼料
それぞれの目安は以下のとおりです。
種類 | 費用目安 | 補足 |
---|---|---|
登録免許税 | 固定資産評価額×0.4% | ‐ |
必要書類の取得費 | 各300~600円ほど 詳細は「1‐2.必要書類の取得費」を参照 |
‐ |
遺産分割協議書の作成費 | 遺産総額の0.3~1%ほど | 遺産分割協議を行う場合に必要 |
遺言書の取得費 |
|
遺言書による相続を行う場合に必要 |
司法書士の依頼料 | 6~7万円ほど | 司法書士に依頼する場合に必要 |
相続の条件次第では、登録免許税が免税される場合があります。詳しくは、以下記載の国税庁の専用ページをご確認ください。
参考:国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」
また、不動産相続に伴う手続きや必要書類に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
1-1.【費用①】登録免許税
登録免許税とは、不動産等の登記の際に課税される税金のことです。
相続を理由とする不動産登記の登録免許税は、以下の計算式で求められます。
参考:国税庁「登録免許税の税額表」
たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産を取得した場合、登録免許税として8万円の納付が必要です。
なお、相続登記の申請手続きおよび納付は法務局にて行います。
1-2.【費用②】必要書類の取得費
各書類の種類と費用は、以下のとおりです。
必要書類 | 入手場所 | 取得費用 |
---|---|---|
被相続人の戸籍謄本 (出生時から死亡時に至るまですべてのもの) |
本籍地の市役所 | 450円/1通 |
相続人全員の戸籍謄本 | 本籍地の市役所 | 450円/1通 |
被相続人の住民票除票 | 本籍地の市役所 | 300円/1通 |
不動産を相続する相続人の住民票 | 居住地の市役所 | 300円/1通 |
固定資産税評価証明書 | 不動産の所在地がある市役所 | 400円/1件 (※東京都23区内の場合) |
登記事項証明書 | 法務局 | 600円/1通 |
各種証明書の手続き請求については、以下の法務局のホームページをご確認ください。
参考:法務局「各種証明書請求手続」
上記の書類がそろったら、不動産登記の変更を法務局に申請します。
不動産登記には、専用の申請書が必要です。申請書の種類や作成方法に関しては、以下リンクの法務局のホームページで確認できます。
参考:法務局「不動産登記の申請書様式について」
なお、申請先の各法務局の所在地は、以下法務局の専用ホームページをご確認ください。
参考:法務局「管轄のご案内」
1‐3.【費用③】遺産分割協議書の作成費
遺産分割協議により遺産を分ける場合、協議を実施して協議書を作成します。
相続人自ら遺産分割協議書を作成することも可能ですが、作成には専門知識を要するため弁護士等の専門家に依頼することが一般的です。
遺産分割協議書の作成費は、遺産総額の0.3~0.5%ほどとなります。
そのほか、相続人調査や相続財産調査などのサービスを付加すると金額が加算されるイメージです。
なお、以下記事では遺産分割協議書の作成にかかる費用や土地の分割にかかる費用について詳しく解説していますので併せてご確認ください。
1‐4.【費用④】遺言書の取得・閲覧費
遺言書によって遺産分割するなら、遺言書の取得が必要です。
遺言書は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、種類ごとに取得費用が異なります。
1‐4‐1.自筆証書遺言
自筆証書遺言は、被相続人が遺言の内容および署名、捺印して作成する遺言書のことです。
自分で作成するため作成時に費用はかかりませんが、自筆証書遺言を法務局で保管してもらうなら保管の申請や閲覧請求に費用を要します。
種別 | 申請・請求者 | 手数料 |
---|---|---|
遺言書の閲覧の請求 (モニター) |
|
1,400円/1通 |
遺言書の閲覧の請求 (原本) |
|
1,700円/1回 |
遺言書情報証明書の 交付請求 |
関係相続人等 | 1,400円/1通 |
遺言書保管事実証明書の 交付請求 |
関係相続人等 | 800円/1通 |
自筆証書遺言の保管制度の手数料は、以下に記載する法務局のホームページも併せてご確認ください。
参考:法務局「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧・遺言書保管所一覧・遺言書保管所管轄一覧」
1‐4‐2.公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者が口述した内容を公証人が筆記して作成する遺言書のことです。
作成の際は、公証人に対して作成手数料を支払います。
公正証書遺言の作成に伴う費用は「公証人手数料令」という政令で定められているため、必ず支払わなければなりません。
作成手数料は、相続財産の価額に対し以下のとおり定められています。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超~ 200万円以下 |
7,000円 |
200万円超~ 500万円以下 |
11,000円 |
500万円超~ 1,000万円以下 |
17,000円 |
1,000万円超~ 3,000万円以下 |
23,000円 |
3,000万円超~ 5,000万円以下 |
29,000円 |
5,000万円超~ 1億円以下 |
43,000円 |
1億円超~3億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円超~10億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円超 | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
参考:日本公証人連合会「公正証書遺言の作成手数料」
なお、遺言書の作成枚数により、手数料が加算されることもあります。
1‐4‐3.秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が署名、押印して封印し公証人が日付等を記入して作成する遺言書のことです。
遺言書の内容は秘密にし、存在のみを証明してもらう方法となります。
秘密証書遺言の手数料は、公証人手数料令により11,000円と定められています。
手数料は、遺言書の内容や相続財産の価額、法定相続人の人数に左右されることはありません。
参考:公証人手数料令「第28条秘密証書遺言」
1‐5.【費用⑤】司法書士の依頼料
司法書士連合会による報酬アンケート結果(2018年1月実施)によると、相続の所有権移転登記の報酬額は以下表のようになっています。
地区 | 低額者10%の 平均 |
全体の 平均値 |
高額者10%の 平均 |
---|---|---|---|
北海道地区 | 28,320円 | 60,983円 | 97,843円 |
東北地区 | 35,457円 | 60,983円 | 99,733円 |
関東地区 | 39,212円 | 65,800円 | 103,350円 |
中部地区 | 37,949円 | 63,470円 | 116,580円 |
近畿地区 | 45,842円 | 78,326円 | 118,734円 |
中国地区 | 37,037円 | 65,670円 | 111,096円 |
九州地区 | 38,021円 | 62,281円 | 96,892円 |
上記の結果から、全国的に6~7万円の依頼料が相場となっていることが分かります。
2.相続登記の手続きは必須?
2024年4月1日より、不動産相続に伴う登記申請が義務化されました。
以前は、相続後「必ず登記しなければならない」ということはありませんでした。
しかし、制度施行により不動産を取得した相続人は所有権の移転を知った日から3年以内に必ず登記の申請手続きをしなければなりません。
いずれの場合も正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下のペナルティが課されます。
なお、2024年4月1日より前に相続が開始しているときも3年間の猶予期間が設けられていますが、義務化制度の対象です。
相続により不動産を取得したら、早めに登記申請手続きを済ませましょう。
参考:東京法務局「相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)」
参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
3.自分で相続登記するときの注意点4つ!
最後に、自分で相続登記するときの注意点を紹介します。
主な注意点は、以下4つです。
- 相続人を調査・確定する
- 自筆証書遺言・秘密証書遺言は検認が必要
- 遺産分割協議書は形式に沿って作成する
- 法務局の開庁時間に気をつける
ひとつずつ解説します。
3‐1.相続人を調査・確定する
自分で相続登記する場合、第一に行うことは相続人の調査と確定です。
不動産の相続登記は、すべての相続人が相続登記に同意していることを証明しなければなりません。
そのため、あらかじめ相続人を調べ、確定する必要があります。
相続人は、被相続人の誕生から死亡するまでの戸籍謄本を取得し親族にあたる人をすべて洗い出すことにより調べられます。
3‐2.自筆証書遺言・秘密証書遺言は検認が必要
遺言書が、自筆証書遺言および秘密証書なら家庭裁判所にて検認の手続きをしなければなりません。
検認が済んでいない遺言書を法務局に持っていっても登記手続きはできません。
必ず、家庭裁判所にて検認が済んだものを持参しましょう。
また、検認を必要とする遺言書を勝手に開封した場合は、5万円以下の過料対象です。
参考:裁判所HP「遺言書の検認」
3‐3.遺産分割協議書は形式に沿って作成する
遺産分割協議書は、形式や記載事項に不備があれば無効となります。
協議書を相続人自ら作成する際は無効にならないよう注意が必要です。
自分で遺産分割協議書を作成するときは、以下の点に気をつけましょう。
- 相続人全員が協議に参加していることを確認して作成する
- タイトルは「遺産分割協議書」とする
- 作成年月日を記載する
- 署名は手書きにする
- 被相続人の情報を記載する(氏名、死亡日、最終本籍地・住所など)
- どの相続人がどの遺産を相続するか明記する
- 借金等があれば債務も記載する
- 相続人全員の住所・氏名を記載の上、実印(認印不可)にて押印する
- 遺産分割協議書を2通以上作成する場合は割り印を押す
3‐4.法務局の開庁時間に気をつける
法務局の開庁時間は、平日の午前から夕方までに限られています。
窓口で相談、申請するなら開庁時間に合わせて時間を作らなければなりません。
必要書類の準備や相続登記に関わる相談、申請などを含めて5日程度時間を確保しておきましょう。
また、申請中に補正があった場合は、申請書に記載した連絡先に電話がかかってくることがあります。
相続登記申請中は、法務局からの着信に気づけるような体制を整えておくと安心です。
参考:法務局「法務局の窓口対応時間について」
相続登記申請手続きにかかる費用と各費用の目安は、以下のとおりです。
種類 | 費用目安 | 補足 |
---|---|---|
登録免許税 | 固定資産評価額×0.4% | ‐ |
必要書類の取得費 | 各300~600円ほど 詳細は「1‐2.必要書類の取得費」を参照 |
‐ |
遺産分割協議書の作成費 | 遺産総額の0.3~1%ほど | 遺産分割協議を行う場合に必要 |
遺言書の取得費 |
|
遺言書による相続を行う場合に必要 |
司法書士の依頼料 | 6~7万円ほど | 司法書士に依頼する場合に必要 |
各費用の詳細は「1.不動産相続登記にかかる費用 」にて解説していますので、ご確認ください。
注意点は、以下4つです。
- 相続人を調査・確定する
- 自筆証書遺言・秘密証書遺言は検認が必要
- 遺産分割協議書は形式に沿って作成する
- 法務局の開庁時間に気をつける
各注意点の詳細は「3.自分で相続登記するときの注意点4つ!」にて解説しています。
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