【マンションオーナー向け】マンション建て替えの基礎知識
鉄筋コンクリート造のマンションの場合、法定耐用年数は47年ですが、実際のマンションの寿命は耐用年数よりも長くなっています。
この記事を読むと、
- マンションの建て替えを検討する3つのタイミング
- マンションを建て替える流れ
- マンションの建て替え実現に向けてやるべきこと
などがわかります。
マンションを建て替えるために必要な費用についても簡単に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、「HOME4U 土地活用」を使えば、土地情報を入力するだけで、最大10社の大手ハウスメーカー・建築会社から建築費や予想収益が含まれた、「賃貸併用住宅の建築プラン」を取り寄せることができます。以下のボタンからお試しください。
この記事の内容
1.マンションの建て替えを検討するタイミングは3つ
マンションの建て替えを検討するタイミングは主に3つあります。
- 3つの耐用年数を目安に検討する
- 「収益状況の悪化」を目安に検討する
- 「賃貸ニーズの変化」を目安に検討する
耐用年数経過後の対処法について以下の記事でも解説しています。併せてご確認ください。
1-1.建て替え検討の目安 その1
「3つの耐用年数」
以下は、マンションの建て替えを検討する目安になる3つの耐用年数です。
マンションの「寿命」に近いのが「物理的耐用年数」で、建て替えの判断の重要な目安となります。
種類 | 概要 | 建て替えの判断基準 |
---|---|---|
法定耐用年数 | 税法上の建物の使用可能期間 | あまり関係がない |
物理的耐用年数 | 物理的な建物の寿命 | 築60年を超えると物理的な限界が近い |
経済的耐用年数 | 建物の市場価値が評価される期間 | リフォームなどを行っていない場合築50年を超える建物は今のニーズにあわず需要がほぼない。 |
「経済的耐用年数」については「1-3.賃貸ニーズの変化」で解説していますので、ご確認ください。
1-2.建て替え検討の目安 その2
「収益状況の悪化」
空室が増えて収益状況が悪化し、建て替えて家賃収入増が見込める場合は、建て替えを検討するタイミングです。
ただし、容積率に余裕がない場合は今より戸数を増やす事ができず、建て替えても大きな家賃収入増は見込めないと言えます。
容積率に余裕がない場合は、専門家に相談し修繕やリノベーションで収益状況の改善が見込めないか、建て替えと比較して検討した方が良いでしょう。
老朽化が進んだマンションは、建て替え促進のため容積率を緩和する特例もあるので対象となるか合わせて確認しましょう。
参考:国土交通省 容積率の緩和特例について(マンションの建替え等の円滑化に関する法律第105条第1項関係)
以下の記事では、アパートの建て替えを検討すべき基準や成功のポイントを解説しています。ぜひこちらも参考にしてみてください。
1-3.建て替え検討の目安 その3
賃貸ニーズの変化
建物のデザインや仕様などは、時代によってニーズが変化します。
建物のデザインや仕様のせいで稼働率が低下している場合は、市場価値が低下するため、建て替えを検討するタイミングのひとつです。
※建物に需要があり市場で売買が可能な期間を「経済的年数」と言います。
建物の仕様は概ね30年を経過すると、その時代のトレンドとは合わなくなり、50年を過ぎると生活に不便を感じるレベルのずれがでるようになります。
ニーズに合致しないマンションで入居者募集にコストをかけるよりも、時代の流れに沿って建て替えた方がよいケースもあります。
2. 「マンションの建て替え」についてのマクロ環境
2022年末時点の日本全国のマンションストック総数は約694.3万戸です。
マンション1棟あたりを約50戸とすると、約14万棟のマンションが全国にあることになります。
つまり、マンションの建て替えは全体の0.2%程度しか行われておらず、マンションが建て替えられる事例は少ないと言えます。
実際下記の国土交通省のデータによると、マンションの建て替え件数は増えてきていますが、年間300件以下と決して多くありません。
2023年時点で築40年を超えるマンションは約250万戸あり、更にこの先倍増すると予測されています。
この老朽化したマンションの建て替えを実施しやすくするため、分譲マンションの建て替えに関する法律の要件が緩和されようとしています。
具体的には下記になります。
現行 | 所有者の5分の4の同意が必要 |
---|---|
改正案 |
|
また住民が負担する建て替え費用を縮小するため、現在のマンションより戸数を増やし、その購入費を建て替え費用に充てられるように容積率を緩和する特例もあります。
参考:国土交通省 改正マンション管理適正化法・マンション建替え円滑化法について
3.マンションを建て替える流れ
マンションを建て替える流れは以下の通りです。
- マンションの建て替えについて検討を進める
- マンション建て替えの計画を立てる
- 新規入居者の募集を止めて立ち退き交渉を行う
- 建て替えの工事に取りかかる
3-1.マンションの建て替えについて検討を進める
マンション建て替えの検討は以下のような流れで進めていきます。
参考:国土交通省 マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル 令和4年3月改訂
大規模修繕が合理的であれば修繕・改修の検討を、建て替えが合理的であれば、「マンション敷地売却制度(※)」の利用も視野に入れて建て替えの検討を行います。
※マンションの敷地を一括して買受人に売却する仕組み
3-2.マンション建て替えの計画を立てる
マンションを修繕して使い続けるのか、建て替えるのか必要性を検討したうえで建て替えが決まったら、具体的な計画を策定します。
以降の流れを考えると、建て替えの計画は遅くても2~3年前に立てられるとよいでしょう。
また、以下の記事ではアパートの建て替えの流れを詳しく解説しています。併せてご確認ください。
マンション建て替えに伴う
建築プランを
複数社に一括請求!!
3-3.新規入居者の募集を止め立ち退き交渉を行う
建て替えの計画を進めるのと並行し、賃貸マンションの場合は新規入居者の募集を止める必要があります。
新規入居者の募集を止める理由は、以下の通りです。
- 立ち退き交渉をスムーズに進めるため
- 入居者が多い状態だと立ち退き料が高額になるため
新規入居者の募集を止めたら、「建て替えによる契約の解除」の旨を入居者に伝え、立ち退き交渉を行います。
立ち退き交渉を始めるのは遅くとも契約期間が満了する半年前までです。
また、住人に立ち退きを求める際には、立ち退き料を支払わなくてはなりません。
アパートや戸建て賃貸といった賃貸住宅の立ち退き料の相場は、ざっくりと40~80万円程度です。
またマンション建て替え時に発生する立ち退き料について、詳細は以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
3-4.建て替えの工事に取りかかる
入居者の立ち退きが完了したら、建て替えの工事に取りかかります。
立ち退きが完了次第、すぐに工事が進められるよう、各種工事の契約やローンの契約といったもろもろの契約を進めておきましょう。
建物の解体・除去後に建て替えるマンションの建築に取りかかります。
工事が始まると、オーナーがやるべきことは概ね完了したと言えます。
4.マンションの建て替え実現に向けてやるべきこと4つ
マンションの建て替えの実現には、全てのプロセスにおいて、住民を含めた関係者の合意形成が円滑に図られることが重要です。
本章では、マンションの建て替え実現に向けてオーナーがやるべきことを4つ解説します。
- 入居者への対応
- 建て替え後の収支プランを立てておく
- 管理方式を決めておく
- 解体工事は新築工事の会社にそのまま依頼する
4-1.入居者への対応
マンションの建て替え実現に向けて最も大切なことは、入居者への対応です。
分譲マンションの建て替えは、入居者(区分所有者)の合意なくては成しえません。
以下、国土交通省が策定している「マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル」から、マンションの建て替え実現に向けて大切なことを抜粋しました。
- マンションの建替えの検討にあたっては、建替え、マンション敷地売却及び修繕その他の方法における改善効果と所要費用等を比較するなどして建替えの必要性を確認するとともに、各区分所有者等の意向把握を十分に行うよう努める必要があります。
- 管理組合が適切な時期に説明会を繰り返し開催するなど、区分所有者等の建替えに関する知識の普及に努めるとともに、建替えの検討段階ごとに、専門家の協力を得ながら策定した計画内容等の区分所有者への情報提供の徹底、区分所有者の意向の反映に努める必要があります。
- このようにして、建替えの決定に向けては、区分所有者の合意形成を適切に図りながら進めていくことが重要です。
出典:マンションの建替えに向けた合意形成に関する マニュアル
さらに、建て替え決定後の立ち退きについては原則として賃貸人が行う必要があります。
マンションの建て替え実現には、入居者が十分に納得できる説明を行うための豊富な知識が必要です。
マンション管理士や弁護士、建築士などの専門家に管理組合の会合に出席してもらうのもよいでしょう。
4-2.建て替え後の収支プランを立てておく
マンション建て替え後に収入が減ってしまうことがないよう、建て替えプランを立てておくことも重要です。
とくに、マンションの老朽化に伴い建て替えを行う場合は「既存不適格建築物」に該当しないか、確認する必要があります。
既存不適格建築物である場合、容積率の問題でマンションが建てられた当時よりも小さいマンションしか建てられない可能性があります。
建て替え後の収益に影響しますので注意しましょう。
なお、「HOME4U 土地活用」を使えば、土地情報を入力するだけで、最大10社の大手ハウスメーカー・建築会社から建築費や予想収益が含まれた、「賃貸併用住宅の建築プラン」を取り寄せることができます。
建て替え後にマンション経営が赤字とならないよう、収入・支出・収支の3点でシミュレーションを行い、それを基に戸数や家賃設定、借入額などを決定しましょう。
下記ボタンでマンション建て替えとその後の経営プランを複数社に相談する事ができます。ぜひご活用ください。
4-3.管理方式を決めておく
マンションの工事が始まると、オーナーがやるべきことはほぼ完了です。しかし、竣工までに管理方式を決め、契約する必要があります。
マンションの管理方式は、大きく分けて「管理委託」「パススルー型サブリース」「家賃保証型サブリース」の3種類があります。
管理方式は何を選択するかによって収益性が大きく異なるため、慎重に検討したい項目です。管理方式を決める際は複数のハウスメーカーや建築会社を比較したうえで、検討するとよいでしょう。
管理方式にはそれぞれメリット・デメリットがあります。自身にあった方式を選びましょう。
- 家賃保証型サブリース:
手数料は高いが家賃収入がある程度安定して得られる。管理業務はすべて委託 - パススルー型サブリース:
管理業務はすべて委託可能だが家賃保証はない。 - 管理委託:
管理の一部を管理会社に委託。自身の業務範囲は広い。
4-4.解体工事は新築工事の会社にそのまま依頼する
マンションを建て替えする場合、解体工事は新築工事の会社にそのまま発注するとスムーズです。
本来、解体工事と新築工事の会社は異なりますが、新築工事を行う建築会社も解体工事を請け負ってくれます。
解体工事は騒音と振動が激しい工事です。そのため、解体工事は新築工事よりも近隣とトラブルになりやすい工事と言えます。
解体工事と新築工事の会社を分けると、解体工事を行う会社が新築工事の影響を考えず、無責任な近隣対応をしてしまうケースもあるため、解体工事は新築工事を行う建築会社に依頼した方が全体的にスムーズになるでしょう。
マンション建て替えに伴う
建築プランを
複数社に一括請求!!
5.マンションを建て替えるのにかかる費用
マンションを建て替えるのに必要な費用には、主に以下のようなものがあります。
- 解体費用
- 設計費用
- 建築費用
- 各種税金
マンションの解体費用の相場は建築エリアや構造によって異なりますが、坪数×4〜8万円が目安です。
下記記事で詳しく解説していますので、是非ご参考ください。
マンションの建築費の目安は、3階建ての鉄骨造で8,500万円、5階建ての鉄筋コンクリートで1憶9,200万円程度です。
マンション建築費については、下記記事でも詳しく解説していますのであわせてご参考ください。
マンションの建て替えを検討する主なタイミングは3つあります。
- 3つの耐用年数を目安に検討する
- 「収益状況の悪化」を目安に検討する
- 「賃貸ニーズの変化」を目安に検討する
詳細は「1.マンションの建て替えを検討するタイミングは3つ」で解説しています。
マンションを建て替える流れは、以下の通りです。
- マンションの建て替えについて検討を進める
- マンション建て替えの計画を立てる
- 新規入居者の募集を止めて立ち退き交渉を行う
- 建て替えの工事に取りかかる
詳細は「3.マンションを建て替える流れ」にて解説しています。
さらに、マンションを建て替えるのにかかる費用については「5.マンションを建て替えるのにかかる費用」で解説しています。併せてご確認ください。
マンションの建て替えを実現するためにオーナーがやるべきことは以下の4つです。
- 入居者への対応
- 建て替え後の収支プランを立てておく
- 管理方式を決めておく
- 解体工事は新築工事の会社にそのまま依頼する
詳細は「4.マンションの建て替え実現に向けてやるべきこと4つ」にて解説しています。
電話でもプラン請求をお受けします。「個人情報の取り扱いについて」に同意の上、お電話ください。