【マンションオーナー向け】マンション立退き交渉の基礎知識|立ち退き料相場、進め方のコツを解説
本記事では、マンションの立ち退き交渉についてご紹介しています。マンションの立ち退き交渉の流れや立ち退き料の相場、立ち退き料を抑えるためのポイントも紹介しているので、ぜひ本記事を参考にしてください。
この記事を読むと、
- マンションの立ち退き料の相場
- マンションの立ち退き交渉の流れ
- 立ち退き料を抑えるためのポイント
- 立ち退き交渉をする際のポイント
などがわかります。
マンションの建て替えに伴う立ち退きにお悩みの方は、下記記事もご参考ください。
1.マンションの立ち退き料の相場
マンションの立ち退き料の相場は、家賃の5〜6ヶ月分、もしくは40〜80万円が相場です。
1戸あたり100万円を想定しておくと、交渉によって追加費用が発生した場合でも安心です。
3章の3-1.に立ち退き料のシミュレーションを作成しましたので、そちらもご確認ください。
また立ち退き交渉を不動産会社や弁護士に委託する場合、賃借人に支払う立ち退き料以外にも費用が発生するケースがあります。
1-1.立ち退き料の内訳
マンションの立ち退き料は、下記3つの補償で構成されています。
- 移転(引っ越し)費用
- 賃借人の利用権の補償(借家権)
- 賃借人の利益の補償(営業補償)
1-1-1. 移転(引っ越し)費用
移転費用には引っ越し代金の他にも様々な費用が含まれます。
項目 | 内容 |
---|---|
引っ越し費用 | 引っ越し代、保険、分解取付調整、住所変更届、移転通知費用 |
移転先確保のための費用 | 不動産会社への仲介手数料、敷金の差額、礼金 |
移転先で増加した賃料差額 |
|
1-1-2. 賃借人の利用権の補償(借家権)
賃借人の利用権は借家権ともいわれ、賃借者を守るための権利のことです。
算出が難しいため、移転費用に含まれているのが一般的です。
迷惑料や慰謝料はこれとは別ものですが、必ず払う必要のある費用ではありませんが交渉次第では支払いが発生します。
1-1-2.賃借人の利益の補償(営業補償)
賃借人が店舗として使用している場合は、立ち退きにより営業が停止するため、営業停止による損失分なども補償する必要があるので補償額は数百万になる事もあります。
アパート立ち退き料については下記記事で詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。
1-2.弁護士への立ち退き交渉代行費用
立ち退き交渉は、弁護士に依頼することも可能です。
法律や判例に基づいて立ち退きに必要な業務をすべて代行してくれるため、スムーズな交渉が可能です。
トラブルを未然に防ぎたい場合は有効でしょう。
しかし、費用が高額になるケースがあるため、立ち退き交渉を代行してもらうかは十分に検討するようにしましょう。
2.マンションの立ち退き交渉の流れ
マンションの立ち退き交渉は一般的に下記の手順でおこないます。
- 書面で立ち退きの経緯を伝える
- 賃借人に口頭で立ち退きの理由と希望時期を説明する
- 賃借人側から事情をヒアリングする
- 事情に基づいて、立ち退き料と敷金について決定する
- 退去の手続きをする
マンションの立ち退き交渉をおこなう際には、賃借人とのトラブルに発展しないよう、手順を踏んで段階的におこなうことが重要です。
マンションの建て替えや解体については下記の記事を参照ください。
2-1.書面で立ち退きの経緯を伝える|文例も紹介
まずは、書面で立ち退きの経緯を伝えます。
書面での通知は立ち退きの半年前までにはおこないましょう。
書面は自分で作成する、もしくは不動産会社や弁護士などに依頼をする必要があります。
自分で書面を作成する場合は、下記の文例を参考にしてください。
作成後は、なるべく直接、賃借人に持って行きましょう。
通知書
令和〇年〇月〇日
〒000‐0000
◯◯県◯◯市◯◯区◯◯町00-00
◯◯ ◯◯ 殿
〒000‐0000
△△県△△市△△区△△町00-00
通知人 △△ △△
前略 通知人は貴殿に対し、以下の通り通知いたします。
通知人は貴殿に対し令和00年0月0日、以下の条件で賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」といいます)を締結し、以下の建物(以下「本件物件」といいます)を賃貸しました。
記
所在 ◯◯◯◯
地番 ◯◯◯◯
地目 ◯◯◯◯
物件名 ◯◯◯◯
賃貸借期間 00年
賃料 0000円
しかしながら、本件物件は建築されてから〇〇年が経過しており、老朽化が進んでおります。
つきましては、通知人は貴殿に対し、契約満了日である令和〇年〇月〇日までに、本件物件の明け渡しを履行していただくようお願い申し上げます。
以上、要件のみにて失礼いたします。
草々
2-2.賃借人に口頭で立ち退きの理由と希望時期を説明する
書面で立ち退きの経緯を伝えた後、それぞれの賃借人と日程を調整し、口頭で立ち退きの理由と希望時期を説明します。
口頭での説明は、書面での通知後、なるべく早い段階で設定します。
賃借人への説明をしたうえで、建て替えが正当事由として認められる場合は立ち退き料を支払う必要はありません。
老朽化による自然災害の倒壊リスクや健康リスク、定期借家契約での契約期間満了などが正当事由になります。
建て替えに伴う立ち退きの「正当事由」については下記記事もあわせてご参考ください。
2-3.賃借人側から事情をヒアリングする
賃借人に立ち退きを納得してもらえない場合、賃借人から事情をヒアリングします。
立ち退き時期の調整や住み替え先を提案できるとスムーズに交渉ができる可能性が高まります。
また、転居への負担が大きい賃借人に対しては、補償という形で立ち退き料を上乗せすることで、立ち退きの同意が得やすくなるでしょう。
2-4.事情に基づいて、立ち退き料と敷金について決定する
賃借人の事情や交渉の内容を踏まえて、立ち退き料と敷金の交渉をおこないます。
引っ越し・住み替えにかかる費用がどのくらいかを計算し、立ち退き料を提示します。
交渉が難航しそうな場合には、早めに弁護士などの専門家に相談をしましょう。
2-5.退去の手続きをする
賃借人から立ち退きの合意が取れたら、退去の手続きを進めます。
交渉が難航して立ち退きの合意が得られない場合は、最終的には裁判で争うことになります。
しかし、裁判では貸主の立場が弱くなってしまうため、できるだけ、交渉段階で解決するようにしましょう。
立ち退き後に建て替えでマンション建築を考えている方は不動産会社に相談してみましょう。
3.立ち退き料を抑えるためには
立ち退き料を抑えるためのポイントは下記の5つです。
- 空室が多い時期を狙う
- 原状回復義務を免除する
- 退去までの家賃を減額する
- 定期借家契約に切り替える
- 引っ越し先を提供する
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1.空室が多い時期を狙う
立ち退き交渉をおこなう際は、入居者が少なく、空室が多い時期を狙いましょう。
空室率が7割を超えたタイミングがおすすめです。
満室の場合と入居率が3割(空室率7割)の場合では、立ち退き料の負担が大きく変わります。
下記に例を紹介します。
- マンション戸数:15戸
- 1戸あたりの家賃:10万円
- 1戸あたりの立ち退き料:60万円(家賃6か月分(10万円×6))
- 立ち退き交渉の結果支払いが発生した戸数:入居戸数の3分の1と仮定
空室率7割 | 満室時 | |
---|---|---|
入居戸数 | 4戸 | 15戸 |
立ち退き料が必要な戸数 (全体の3分の1と仮定) | 1~2戸 | 5戸 |
立ち退き料 | 60~120万 | 300万 |
また空室が多い時期を狙うと、交渉の手間が削減できます。
弁護士等に業務代行を依頼している場合は費用削減にもなります。
3-2.原状回復義務を免除する
賃貸契約では多くの場合、原状回復を求めています。
この原状回復義務を免除することで、立ち退き料の負担を抑える提案も可能です。
売却をする際は原状回復が必要ですが、建て替えをする際は現状の建物は取り壊すため必要はありません。
原状回復義務を免除することで賃借人の負担も減らせるため、立ち退き料の交渉に有利に働きやすくなります。
3-3.退去までの家賃を減額する
立ち退き交渉は遅くとも半年前から動き出す必要があります。
退去までの家賃を減額・免除することは、賃借人にとっても大きなメリットになるため、立ち退き料を削減できる可能性があります。
なお家賃を免除する場合には、賃借人との間で結んでいる普通借家契約を解除し、使用賃貸契約を締結しなおさなければなりません。
3-4.定期借家契約に切り替える
定期借家契約は、期限が定められており契約更新ができない契約のことです。
定期借家契約では正当事由の有無にかかわらず、期間満了によって賃借人に明け渡しをしなければなりません。
通常、賃借人とは契約の更新ができる普通借家契約を結んでいます。
しかし、普通借家契約を契約更新ができない定期借家契約に変更することで立ち退き料の負担をなくせます。
しかし、事務所やテナントを除き、2000年2月末以前に契約した普通借家契約は定期借家契約への切り替えができないため、注意が必要です。
3-5.引っ越し先を提供する
立ち退きを求める際に立ち退きを求める際に引っ越し先を提供することで賃借人の不安が解消され、立ち退き料を安く済ませられるケースがあります。
複数の物件を所持しているオーナーであれば、近隣の物件や、家賃が同等の他の物件を斡旋しましょう。
また現在取引のある不動産会社に相談するのもよいでしょう。
4.トラブル回避のために!立ち退き交渉をする際のポイント
下記のポイントを意識することでスムーズに立ち退き交渉が進みます。
- 賃借人に早めの告知をする
- 交渉が決裂した時の対応策を考えておく
- 弁護士に代行してもらう
4-1.賃借人に早めの告知をする
借地借家法では、契約期間満了の1年~半年前に立ち退き請求をすることが原則とされています。
しかし、それよりも賃借人に早めの告知をすることで、賃借人も引っ越し費用の捻出ができたり、引っ越し先を探す時間を確保する事ができます。
立ち退きを請求するタイミングが早ければ早いほど、相場よりも安い立ち退き料で納得してくれる可能性が高まり、立ち退きを拒否される可能性も低減します。
4-2.交渉が決裂した時の対応策を考えておく
交渉が決裂した場合、最終的には裁判で争うことになりますが、裁判では手間も費用もかかってしまいます。
早い段階で弁護士に相談し、交渉が決裂した時の対応策を考えておくのもひとつの方法です。
弁護士から法的なアドバイスをもらったり、賃借人との間に入ってもらったりすることで話がまとまるケースも少なくありません。
4-3.不動産会社や管理会社に相談する
立ち退き交渉自体は貸主本人、もしくは弁護士しかできませんが、不動産会社などにアドバイスをもらうことは可能です。
不動産会社から的確なアドバイスをもらえるため、スムーズに立ち退き交渉を進められる可能性が高くなります。
また、賃借人の引っ越し先を探して提案してくれる場合もあり、交渉材料として有効です。
立ち退き後に建て替えで
マンション建築を
考えている方は
不動産会社に相談!
立ち退き料の相場と構成要素は下記の通りです。
- 立ち退き料の相場は家賃の5〜6ヶ月分、もしくは40〜80万円
- 立ち退き料は3つの要素で構成されている
- 弁護士への立ち退き交渉代行費用
詳細は「1.マンションの立ち退き料の相場」にて解説しています。
立ち退き交渉は下記の手順でおこないます。
- 書面で立ち退きの経緯を伝える
- 賃借人に口頭で立ち退きの理由と希望時期を説明する
- 賃借人側から事情をヒアリングする
- 事情に基づいて、立ち退き料と敷金について決定する
- 退去の手続きをする
詳細は「2.マンションの立ち退き交渉の流れ」にて解説しています。
立ち退き料を抑えるためのポイントは下記です。
- 空室が多い時期を狙う
- 原状回復義務を免除する
- 退去までの家賃を減額する
- 定期借家契約に切り替える
- 引っ越し先を提供する
詳細は「3.立ち退き料を抑えるためには」にて解説しています。
立ち退き交渉をする際のポイントは下記です。
- 賃借人に早めの告知をする
- 交渉が決裂した時の対応策を考えておく
- 不動産会社や管理会社に相談する
詳細は「4.トラブル回避!立ち退き交渉をする際のポイント」にて解説しています。
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