第一種低層住居専用地域で店舗やコンビニは可能?制約・注意点を解説
土地活用の選択肢が少ない地域の一つに「第一種低層住居専用地域」があります。
第一種低層住居専用地域では、原則として店舗を建てることができません。
しかしながら、実際には第一種低層住居専用地域内においても店舗が存在します。
第一種低層住居専用地域には、店舗を建てるための「裏技」のようなものがあるのでしょうか?
そこでこの記事では、「第一種低層住居専用地域で店舗を建てることができるのか」「どうすれば実現できるのか」を解説していきます。
ぜひ最後までおつきあいいただき、適切な手順で実現するための一助としてください。
この記事の内容
1.第一種低層住居専用地域とは
第一種低層住居専用地域とは、用途地域の1つであり、「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域」です。
用途地域とは、エリアによって建築可能な建物の用途を定めた規制になります。
用途地域は住居系、商業系、工業系で合わせて13種類あり、住環境の保護や商工業の利便性を図るために定められています。
第一種低層住居専用地域は、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域であるため、例えばオフィスビルや高層マンションのような背の高い建物を建てることができません。
日照を害するような建物が建たないことから、日当たりが良好な住環境が保たれるようになっていることが特徴です。
また、住宅街は一般的に閑静な環境も求められることから、不特定多数の人が多く出入りする店舗は建てさせたくない存在となります。
そのため、良好な住環境を保護する目的の第一種低層住居専用地域では、店舗も原則として建築できないことになっています。
第一種低層住居専用地域は、低層住宅街の住環境を守ることに特化している用途地域であることから、建築規制が極めて厳しい地域の一つです。
高層建築物や店舗といった選択肢がなく、選べる土地活用の種類も少なくなっています。
2.第一種低層住居専用地域の原則的な規制
規制の厳しい第一種低層住居専用地域においても「自宅兼店舗」であれば店舗を建てることが可能です。
自宅兼店舗の主な要件としては、以下のような制限があります。
【第一種低層住居専用地域の自宅兼店舗の要件】
兼用住宅で、非住宅部分(例えば店舗)の床面積が、50平米以下で、かつ、建築物の延べ面積の1/2未満であること
つまり、延床面積が100平米の自宅兼店舗で、自宅部分が51平米、店舗部分が49平米となる建物であれば店舗を建てることができます。
また、第一種低層住居専用地域における自宅兼店舗では、特定行政庁において建て方を制限する内規が存在することが通常です。
特定行政庁とは、建築主事(建築専門の役人)が置かれた自治体のことであり、比較的規模の大きい市区町村が該当します。
内規の具体例としては、「店舗と自宅が内部で行き来できること」といった規制があります。
第一種低層住居専用地域では、店舗を第三者に賃貸することを禁止している明確な規制はありません。
しかしながら、建物構造上、店舗と自宅が内部で行き来できるようにすることで、実質的に第三者に賃貸できないことになっています。
第一種低層住居専用地域で建てることができる自宅兼店舗は、自宅の居住者と店舗経営者が同一人であることを前提としており、店舗部分を他人に貸すような土地活用は実質的にできないようになっているのです。
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3.2019年6月からの建築基準法の改正内容
第一種低層住居専用地域では、原則として自宅兼店舗しか建てられませんが、以前より例外的にコンビニ等の一定の店舗を建てることが可能です。
その方法は、「建築基準法第48条ただし書許可」と呼ばれる裏技になります。
「ただし書」とは、法律の条文の後半に記載された「ただし、~」というような文言のことです。
建築基準法第48条1項は、以下のような条文となっています。
赤字で示す部分が「ただし書」です。
【建築基準法第48条1項】
第一種低層住居専用地域内においては、別表第二※(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
※建築可能な用途を定めた表のこと
「ただし書」には、「良好な住居の環境を害するおそれがない」または「公益上やむを得ない」場合には、原則以外の建物を建てることができると定められています。
つまり、例えばコンビニが良好な住居の環境を害するおそれがないと認められる場合には、第一種低層住居専用地域でもコンビニを建てることができるということです。
従来、建築基準法第48条ただし書の許可を得るには、建築審査会と呼ばれる行政の審査が必要でした。
ところが、2021年6月以降は建築基準法が改正(2018年改正)されたことで、第一種低層住居専用地域においてコンビニ等の店舗を建てるには、建築審査が不要となる改正が行われました。
そのため、2021年6月以降は建築審査会のプロセスが減ったことから、従来よりも第一種低層住居専用地域でコンビニ等は建てやすくなったといえます。
建築審査会のプロセスが不要となった建物は、コンビニや調剤薬局等の日用品の販売を主たる目的とする店舗に限定されています。
どのような店舗でも建てられるわけではないという点がポイントです。
4.コンビニの許可基準
第一種低層住居専用地域でコンビニを建てるには、立地等において許可基準を満たすことが必要です。
コンビニの許可基準に関しては、国土交通省が「第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域におけるコンビニエンスストアの立地に対する建築基準法第 48 条の規定に基づく許可の運用について(以下、技術的助言という)」で指針を示しています。
コンビニの許可基準は技術的助言を参考にしながら各特定行政庁が独自の基準を決めているという状況です。
参考までに、建築基準法施行規則第10条の4の3に定められた主なコンビニの許可基準を示すと以下のようになります。
基準項目 | 内容 |
---|---|
立地環境 | 主要な幹線道路の沿道への立地に限定することとし、建築物の敷地は幅員9メートル以上の道路に接すること。 |
建物の規模 | 店舗の用途に供する床面積は 200 平方メートル以内とすること。 |
騒音対策 | 電気冷蔵庫若しくは電気冷凍庫または冷暖房設備の室外機を設ける場合においては、当該室外機の騒音の大きさを国土交通大臣が定める方法により計算した値以下とすること。 |
臭気 |
|
交通負荷 | 敷地内には、専ら、貨物の運送の用に供する自動車の駐車及び貨物の積卸しの用に供する駐車施設を設けること。 |
夜間照明等 | 午後 10 時から午前 6 時までの間において営業を営む場合においては、「隣地境界線に沿って車両の灯火の光を遮る壁その他これに類するものを設けること」等の一定の措置を講じること。 |
5.第一種低層住居専用地域でコンビニを建てる際の注意点
本章では、「第一種低層住居専用地域でコンビニを建てる際の注意点」について、以下の5点を解説します。
- 確実に建てられるとは限らない
- 許可取得までに時間がかかる
- 店舗面積に制限がある
- 営業上の制限が発生する
- テナント撤退後の後利用が難しい
それではひとつずつ見ていきましょう。
5-1.確実に建てられるとは限らない
第一種低層住居専用地域でコンビニ等の店舗を建てるには、許可を申請しても確実に建てられるとは限らないという点が注意点です。
国土交通省は各都道府県に対し、許可にあたり以下のような条件を参考に総合的な判断をすることと通達しています。
【立地の判断基準】
- 低層住宅が連担している地域であって、住民の徒歩圏内に日常生活のために必要な店舗が不足している等、生活利便性に欠ける地域
- 地域の主要な生活道路の沿道等、店舗併用住宅や小規模店舗が立地しており、良好な住居の環境を害するおそれがない地域
- 道路や鉄道の新設等により、土地利用の転換が将来的に見込まれる等、立地を許可しても差し支えないと考えられる地域
出典:国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律等の施行について(技術的助言)」
第一種低層住居専用地域であっても、上記のような要件が整っていなければ許可は下りない可能性が高いです。
また、仮に許可申請の受付が行われても、近隣住民からの意見を聞く公聴会は行われます。
近隣住民から反対の意見が出された場合には、許可が下りなくなる可能性が高くなります。
5-2.許可取得までに時間がかかる
第一種低層住居専用地域でコンビニ等の店舗を建てるには、許可取得までに時間がかかるという点も注意点です。
国土交通省所管の国土技術政策総合研究所によれば、2021年の6月より前の建築審査会があるケースでは、事前相談から許可の事前相談受付から許可申請までは平均144.9日となっています。
同資料によると、最も時間を要するのが事前相談受付から許可申請受付までの121.9日です。
事前相談受付から許可申請受付までは、役所内で関係機関・部局との協議・調整が行われる期間であり、大半の時間をこの期間に要します。
一方で、2021年の6月以降に不要となる建築審査会開催期間はわずか平均13.6日です。
手続が割愛された部分はたった13.6日だけであり、2021年の6月以降も少なくとも100日程度の期間を要するものと推測されます。
許可までには時間がかかり、なおかつ、最後の公聴会で近隣住民から反対が行われれば、許可が下りない可能性も高いです。
時間をかけても建てられるかどうかが分からないことから、実質的にコンビニ等の選択はしにくいといえます。
5-3.店舗面積に制限がある
第一種低層住居専用地域のコンビニには、店舗面積に制限がある点も注意点です。
建築基準法施行規則では、店舗面積を200平米以内としています。
昨今のコンビニは、ATMやイートインスペースが常設されていることから、店舗面積は90坪前後の物件が多いです。
200平米となると60.5坪ですので、最近のコンビニにしてはかなり狭い部類となります。
店舗面積が狭くなれば、今どきのコンビニから何らかの機能を省く必要があり、店舗の魅力が落ちる原因となってしまいます。
店舗の魅力が落ちれば、集客力も落ち、最終的には撤退リスクが高まってしまうということです。
5-4.営業上の制限が発生する
第一種低層住居専用地域のコンビニには、営業上の制限が発生する点も注意点です。
コンビニの許可基準では臭気対策が義務付けらえており、例えば屋外で商品の陳列または販売をすることは禁止されています。
たまに郊外のコンビニで店外において一部の商品を屋外で販売しているケースを見かけますが、このような自由な販売形態は原則としてできないということです。
営業上の制限があれば、売上をアップさせる対策も減ってしまうため、撤退リスクも高まってしまうことになります。
5-5.テナント撤退後の後利用が難しい
第一種低層住居専用地域のコンビニでは、万が一、コンビニが撤退した場合、後利用が難しいという点です。
「建築基準法第48条ただし書」によって建てられる店舗は、日用品の販売を主たる目的とする店舗に限られています。
具体的にはコンビニや調剤薬局等が該当します。
後継テナントは、日用品の販売を主たる目的とする店舗の中から探すことになりますが、該当する店舗が見つかるとは限りません。
自由な業種の中から後継テナントを探すことができないことから、撤退時の悪影響は大きいといえます。
まとめ
いかがでしたか。
第一種低層住居専用地域で店舗を建てることに関して、解説してきました。
第一種低層住居専用地域とは、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定められた地域であり、原則として一定の要件を満たす自宅兼店舗以外に店舗を建てることができません。
コンビニを建てる事もできなくはないものの、「確実に建てられるとは限らない」や「許可取得までに時間がかかる」等の障壁があるため、選択肢としては厳しいといえるでしょう。
もし自宅兼店舗をご検討なら、「HOME4U 土地活用」を上手に活用し、実績豊富なハウスメーカーの相見積もりをしっかり比べることから始めてみてください。
皆さんの店舗経営が成功に結び付くことを願っています。
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