土地を相続したら、相続税はどれくらいかかるのか心配ですよね。相続税の計算は複雑なので、「1億円の土地を相続したら相続税は●円」などとシンプルに計算することはできません。
資産全体の額や、法定相続人の人数によって、相続税は大きく変わります。
相続税について知っておきたい特徴は、
- 一定以上の財産を持っている人だけに課税される
- 相続した財産が多いと、税率は高くなる
上記2点です。
つまり、相続税を節税するためには「相続財産の評価額を下げる」のが有効です。
相続税対策には色々ありますが、土地を持っている場合、相続税の評価額を下げる方法が存在します。
相続が発生してから対策することはできないので、あらかじめ余裕をもって、土地の相続税対策をしておくことをおすすめします。
この記事では、相続税のしくみの概要と計算例、土地の相続税評価額の計算方法、そして、土地活用で相続税を大きく節税するときの注意点についてご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、相続税対策の参考にしてください。
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1.土地にかかる相続税の仕組みと概要
まずは、相続税の計算方法について説明していきます。
1-1.土地の相続税とは
相続税とは、亡くなった方(被相続人)からの遺産を取得した方(相続人)に課せられる税金です。
相続税は、相続した財産すべてではなく、金額が一定額を超えた場合に、超えた部分にだけ課税されます。
課税対象額は、決められた計算方法に基づいて算出されます。
1-2.相続税が課税されるのは資産が多いときだけ
相続税は、遺産の総額が「基礎控除額」を超える場合にかかります。
「基礎控除額」の計算は次のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、相続人が3人なら基礎控除は4,800万円ですので、遺産の総額が4,800万円以上なら相続税がかかります。
相続税の課税対象の場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告しなければなりません。
法改正により、「基礎控除額」は平成27年(2015年)1月1日以降の相続から引き下げられました。そのため、これまでよりも相続税の課税対象となる人が倍増しています。
便利な場所の土地や、広い土地をお持ちの方は相続税がかかってくる可能性があるため、早めに対策を考える必要があります。
2.相続税の計算方法と流れ
相続税は財産が多いと税率が高くなるしくみですので、計算方法を解説していきます。
相続税は、次の3段階で計算します。
- 遺産の総額を計算
- 相続税の税額を計算
- 実際に財産を取得した割合に応じて相続税を計算
2-1.遺産総額を計算する
遺産の総額は、現金、預金、土地などの財産から、借入金や葬儀費用を差し引いて正味の財産を計算します。
そこから、「基礎控除額」と「保険金・退職金の非課税枠」などを差し引いて、相続税の課税対象となる遺産総額を算出していきます。
課税対象となる遺産の総額
=課税対象になる財産-借入金・葬儀費用-基礎控除額-保険金の非課税枠など
(死亡保険金や死亡退職金の非課税枠=それぞれ500万円×法定相続人の数)
課税対象になる財産の例 |
評価額 |
現金、預金、有価証券 |
額面通りまたは時価 |
土地 |
「路線価方式」または「倍率方式」(2章で解説) |
建物 |
固定資産税評価額 |
死亡保険金・死亡退職金(みなし相続財産) 3年以内に贈与された財産など |
額面通り(非課税枠あり) |
現金や預金は額面どおりですし、有価証券は時価なのでわかりやすいと思います。
土地については、時価(実際に売買されるときの相場)ではなく、国税庁の定める一定の方法で評価されるので、詳細は2章でご説明します。建物については、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。(固定資産税評価額は、市区町村から毎年送られてくる「固定資産税納税通知書(課税明細書)」に記載があります。)
遺産の総額を計算した結果、「基礎控除額」を超えなければ、相続税は課税されません。
2-2.相続税の税額を計算する
「遺産総額-基礎控除額」を計算し、「法定相続分」で割ってから、税率をかけます。
ここが非常にわかりにくい部分なのですが、具体的な計算例は3章で解説しています。
1つだけ押さえておいていただきたいことは、「相続税は、財産が多ければ多いほど税率が高くなる」ということです。
【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
- |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
出典:国税庁
税率は上記のとおり、10%~55%となっており、非常に高い水準です。
相続税対策では、財産の評価額を下げることが有効です。
2-3.実際に財産を取得した割合に応じて税額を計算
ステップ2で計算した相続税の総額を、実際に遺産を取得する割合で分けます。
このとき、配偶者は法定相続分または1億6千万円まで非課税になります(配偶者の税額軽減、配偶者控除)。
ただし、配偶者控除を使って相続税を抑えることができたとしても、次の相続では大きく課税されてしまうおそれがあるので注意が必要です(4章で詳しく解説しています)。
3.土地の相続税評価額の計算方法
それでは、土地の相続税評価額の計算方法を見ていきます。
3-1.相続税評価額とは
不動産のうち建物(家屋)の相続税評価額は、固定資産税評価額そのものです。
固定資産税評価額とは、土地や家屋といった固定資産の価値を定める「固定資産評価基準」にのっとり、各自治体が決定する価格のことをいいます。建物の場合、新築時は請負工事金額の約50~60%が目安とされていますが、構造や築年数の経過にともなって評価額が変化します。
固定資産税評価額を調べるには、毎年自治体から送付される納税通知書を確認してください。役所で固定資産税評価証明書を取得するか、固定資産課税台帳を閲覧しても確認できます。
土地の固定資産税についてさらに詳しく知りたい方は、下記記事を参考にしてください。
3-2.更地の場合の計算方法
土地の相続税評価額は、国税庁が定めた「路線価方式」または「倍率方式」で評価されます。
ざっくり言うと、都市部や住宅地のほとんどは、「路線価方式」となります。駅からかなり離れた田園地帯や山林などでは、「倍率方式」がほとんどです。
いずれの場合も、相続税評価額は、実際に取引される「時価」よりも安めの水準になるのが一般的です。
- ・路線価方式
-
道路ごとに、相続税評価額の目安となる「相続税路線価」が定められており、その道路に面した土地は路線価をもとにして評価されます。「路線価」が定められていないエリアでは、「倍率方式」になります。
-
相続税路線価は、国税庁のサイトで検索できます。路線価は、1平米あたりの単価が1,000円単位で表示されています。
例えば、相続税路線価が「200C」と書かれていたら、1平米あたり200千円(20万円)ということになります。
なお、数字の後のアルファベットは「借地権割合」というものですが、ここでは詳細は割愛します。
-
平米あたり20万円とわかったら、「20万円(路線価)×面積(平米)×補正率」の計算で土地の評価額を算出します。
補正率というのは、使いにくい形や、間口が狭すぎる場合などに、評価額が高くなりすぎないように修正するものです。
土地の相続税評価額の概算を知るだけなら、「20万円(路線価)×面積(平米)」を計算してみれば足りるでしょう。
- ・倍率方式
-
上記の国税庁サイトで調べたときに、相続税路線価が定められていない場合には、「倍率方式」で土地が評価されます。
「この市区町村の評価倍率表を見る」というページで倍率を調べます。
倍率方式の場合、「相続税評価額=固定資産税評価額×●倍」となります。
- ・簡便法
-
土地の相続税評価額の概算を簡単に知る方法があります。
毎年、市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書(課税明細書)」があればわかる方法です。
相続税評価額≒固定資産税評価額÷0.7×0.8
と概算できます。
「固定資産税評価額」は、課税明細書の「価格」という欄に記載されています。
手元に通知書が見つからない場合には、市町村の固定資産税担当部署(東京都は都税事務所)で確認することもできます。
「固定資産税課税台帳」を閲覧するか、「固定資産税評価証明書」を取得すれば、「固定資産税評価額」が記載されています。
なお、閲覧できる人の範囲には制限があり、本人確認書類等が必要になるため、事前に役所にご確認ください。
3-3.自宅が建っている土地の場合
先ほど紹介した3つの方法のいずれかで求められるのは、建物などが建っていない「更地」の相続税評価額です。
故人の自宅が建っている土地の場合は、「更地」よりも評価額が下がる可能性があります。そのカギを握るのが、「小規模宅地等の特例」です。この制度を使えば、自宅の敷地は330平米まで80%減額されます。
例えば、時価1億円の土地があったとします。更地なら相続税評価額は8,000万円前後となります。これが自宅の敷地で330平米以下の場合には、「小規模宅地等の特例」を使えば80%減額されて、約1,600万円となります。
「小規模宅地等の特例」には一定の要件があります。特に、土地を相続するのが、配偶者なのか、同居親族なのか、同居していない親族なのかによって条件が異なるので注意が必要です。
詳細は国税庁ホームページをご確認の上、税務署や税理士にご相談ください。
国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
3-4.アパートやマンションが建っている土地の場合
土地にアパートやマンションなどの賃貸住宅が建っている場合も、更地に比べて大幅に評価額が下がります。
まず賃貸住宅の敷地は、「貸家建付地」の扱いになるので、約20%減額されます(減額率は稼働率やエリアによって多少変わります)。さらに「小規模宅地等の特例」を使えば、事業用の土地は200平米まで50%減額されます。
例えば、時価1億円の土地の場合、更地なら相続税評価額は8,000万円前後です。
アパートを建てると、まず「貸家建付地」として約20%減額され、6,400万円前後になります。その上で、「小規模宅地等の特例」を使うと、200平米までなら50%減額されて約3,200万円となります。
なお、「小規模宅地等の特例」を利用するには、「相続人が申告期限まで土地を所有して賃貸経営を続けている」等の要件があります。
ここまで見てきたように、土地をお持ちの方の相続税対策は、「小規模宅地等の特例」を最大限に活用して評価額を下げることがポイントになります。しかも、アパート等を建てるためのローンの借入があれば、資産総額から借入金を差し引くことができるため、節税効果はさらに高まります。
このような理由で、土地の相続税対策としてアパート経営などの土地活用を行う方は多いです。
アパート経営による相続税対策については、「節税に効果的な貸家建付地。相続税評価額の計算方法と注意点とは?」でも詳しく解説しています。
4.相続税の計算例
それでは、相続税の具体的な計算例を見ていきます。
相続税の計算は非常に複雑なので、実際に相続税を申告するときには税理士に相談することをおすすめします。
【設定例】
- 相続財産は固定資産税評価額5,000万円の土地と、預金2,000万円
- 法定相続人は2人(子供2人)
- 生命保険金、葬式費用、ローンは無いものとする
4-1.「ステップ1」遺産総額の計算
固定資産税評価額5,000万円の土地の相続税評価額は、5,000÷0.7×0.8=約5,700万円程度と概算できます
そうすると、相続財産の総額は、土地5,700万円+預金2,000万円=7,700万円となります。
基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数=4,200万円です。
4,200万円を超えるので、相続税の課税対象となります。
4-2.【ステップ2】相続税の総額を計算
ここが非常にわかりづらい部分です。
相続財産の総額から、基礎控除を差し引いたものに、「法定相続分」をかけます。
※法定相続分
- 配偶者と子供が相続人なら、配偶者1/2、子供(全員で)1/2
- 配偶者と直系尊属が相続人なら、配偶者2/3、直系尊属1/3
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人なら、配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
子供が2人以上なら均等に分ける
子1:(7,700万円-4,200万円)×1/2=1,750万円
子2:(7,700万円-4,200万円)×1/2=1,750万円
次に、国税庁ホームページで税率を確認します。
法定相続分に応じた取得金額が1,000万円超3,000万円以下の場合は、税率15%、控除額50万円です。
それぞれの法定相続分に応じた取得金額に税率をかけて、控除額を差し引いたものが、相続税の総額になります。
(1,750万円×15%-50万円)+(1,750万円×15%-50万円)=425万円
4-3.【ステップ3】実際の取得した割合に応じて税額を計算
ステップ2で計算した相続税の総額を、実際に財産を取得した割合に応じて分けます。
例えば兄弟が均等に財産を分けた場合には、425万円÷2をそれぞれが負担します。
もし兄が資産の6割、弟が4割を取得する場合には、兄の相続税は425万円×60%=255万円、弟の相続税は425万円×40%=170万円ということになります。
5.土地活用で相続税を節税するときの3つの注意点
2章で解説したとおり、更地にしておくよりも、アパートやマンションを建てて土地活用を行うと、相続税の節税効果は抜群です。
アパート等を建てると土地の相続税評価額を大幅に下げることができますし、建築費の借入を差し引くことで、相続財産を大幅に圧縮できるからです。
ただし、アパート等を建てて相続税の節税を狙うときに注意したいことは3つあります。それは「早めの対策」「収益性を重視する」「一次相続と二次相続を考える」ということです。
それぞれ詳しく説明します。
5-1.早めに対策を始めるほうが節税効果大
相続直前にアパートを建てた場合、「小規模宅地等の特例」が使えないため、節税効果がやや弱まります。
具体的には、アパート経営を始めてから3年以内に相続が発生すると、「小規模宅地等の特例」は使えないので、注意してください。
相続税の生前対策は、できるだけ早めに始めることが大切です。
5-2.資産を減らさないように、収益性もしっかり追求することが大切
続税対策でアパートを建てるときには、収益性の面の検討がおろそかになってしまうことがあります。
たしかに、アパートさえ建てれば相続税は節税できるかもしれませんが、アパート経営が赤字になって資産を減らしてしまうことは避けなければなりません。アパートは、間取りや設備、デザイン性などの建築プランによって、稼働率や家賃がまったく違うものになります。
建築費をできるだけ抑えつつ、競争力の高いアパートを建てることが大切です。
収益性も節税効果も妥協せず、最高のアパートを建てるためには、複数の建築会社からの提案を受け、しっかり比較検討した上で「最高のプラン」を見つけることが重要です。
「HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」では、信頼できる大手の建築会社が揃っていて、複数の建築会社の建築費や収支計画などがまとまった「経営プラン」を簡単に取り寄せられます。
お持ちの土地の賃貸需要をしっかり踏まえて様々な工法・間取り・設備等が提案してもらえるので、できるだけ多くの建築会社から提案を受け、ご予算やご希望の節税効果を満たせるプランを見つけ出してください。
5-3.一次相続と二次相続を考えることが大切
例えば夫が亡くなって、妻と子供が相続するのが「一次相続」、次に妻が亡くなって両親の全財産を子供が相続するのが「二次相続」です。
「一次相続」の時点では「配偶者控除」があり、資産が1億6千万円までなら非課税になるため、相続税対策は必要ないと思うかもしれません。
でも、「二次相続」では「配偶者控除」が使えず、基礎控除額や死亡保険金の非課税枠も減るため、莫大な相続税がかかってしまうことがあります。
相続対策では、一次相続と二次相続を総合的に考えて節税を考えていくことが大切です。
あらかじめ対策を考えておくかどうかで、相続税には数百万円以上の差が出ることもあります。
アパートを扱う建築会社には相続税に強い税理士が在籍・提携していることも多いので、プロに相談しながら、積極的な相続税対策をとることをおすすめします。
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~相続した土地を売却する場合は?~
相続した土地を自分で使う予定がなく、売却する場合にはどんなことに注意すればよいでしょうか?
複数の相続人がいる場合にも、土地を売却して現金化すれば公平に分けやすくなります。
相続した土地を売却する時に使える有利な制度としては、次の2つがあります。
●マイホームの敷地だったなら3,000万円控除あり
故人のマイホームの敷地を売却する場合には、利益が出ても3,000万円まで非課税になる制度があります。
相続した土地は、取得した価格がすでにわからなくなっているケースが多く、多額の所得税・住民税がかかってしまう場合があります。
故人のマイホームの敷地を売る場合には、この制度が使えるかどうかぜひ検討してみてください。
なお、この制度は2023年(令和5年)12月31日までの間に売ることが要件になっています。
国税庁「被相続人の居住用財産を売ったときの特例」
●取得費加算の特例(3年以内に売却)
相続税の課税対象になった人で、相続税の申告期限から3年以内に土地を売却した場合には、売却益に課税される所得税を節税できます。
具体的にいうと、土地を取得した費用として、相続税額を加算することができるので、課税対象となる所得を減らすことができます。
国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
相続した土地は相場がわかりにくいことも多いですし、他の相続人に納得してもらうためにも最高額で売却したいものです。
そんなときには「不動産売却 HOME4U」を利用すると、複数の不動産会社の査定を簡単に受けることができ、その土地を最も高く売ってくれそうな不動産会社を見つけることができます。
依頼する不動産会社しだいで、土地の売却価格には大きな差が出るため、ぜひご利用ください。
6.相続税の節税に使える控除と特例
相続した財産が多ければ多いほどに相続税額も大きくなりますが、控除を利用することによって節税が期待できます。
それでは早速、相続税に関する主な控除について解説します。
6-1.基礎控除
どんな相続であっても、条件なしに差し引けるのが基礎控除です。
基礎控除額は以下のように計算します。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600 万円×法定相続人の数
例)夫が他界し、妻と子ども3人で相続する場合の基礎控除額
3,000万円+600万円×(1+3)=5,400万円
(引用元:国税庁HP「財産を相続したとき」
6-2.贈与税額控除
贈与税額控除とは、相続発生時点よりさかのぼって3年以内に被相続人から贈与財産を受けた方が利用できる控除のことです。
具体的には、贈与時点で納めた贈与税額を相続税から差し引けます。3年以内に贈与された財産は相続税の課税対象になるので、贈与税と相続税が二重にかかってしまうのを防ぐことが目的とされています。
ただし、贈与時点で贈与税を支払っていない方は、この控除は適用されません。
(引用元:国税庁HP「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
6-3.配偶者控除
相続税に関する配偶者控除は、正式には「配偶者の税額軽減」といいます。
被相続人の配偶者は、最大1億6,000万円か法定相続分のうち、多いほうの金額まで相続税がかかりません。配偶者には相続税ができるだけかからないよう、法的な措置がとられているのです。
例)3億円(基礎控除後の遺産総額)を妻と子ども1人で相続する場合
配偶者の法定相続分:3億円×2分の1=1億5,000万円
1億6,000万円か法定相続分のうち多いほう、つまりこの場合は1億6,000万円まで相続税はかかりません。
配偶者の負担を軽くするための制度ですが、この控除を適用する場合は二次相続についても考慮したほうがよいでしょう。一次相続で配偶者が最大限多くの財産を相続した場合、二次相続の時点で子どもが納める相続税が多くなる恐れもあります。
相続の際には、将来子どもにかかる負担を見越して、相続額の検討や生前贈与を視野に入れることをおすすめします。
なお、内縁の夫や妻は配偶者控除の対象にはなりません。
国税庁HP「配偶者の税額の軽減」
6-4.未成年者控除
法定相続人が未成年(満20歳未満)のときは、未成年者控除を適用し、相続税の額から一定の金額を差し引けます。
控除額は、相続人である未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円となります。
未成年者控除の額=満20歳になるまでの年数×10万円(1年未満の期間は切上げ)
例)満18歳の子が遺産相続する場合
未成年者控除額:(20歳−18歳)×10万円=20万円
国税庁HP「未成年者の税額控除」
6-5.障害者控除
相続人が85歳未満で障害があった場合、一定額を相続税から控除できます。
控除額は一般障害者か特別障害者かによって異なり、障害の程度をもとに判断されます。
一般障害者の控除額:満85歳になるまでの年数×10万円
特別障害者の控除額:満85歳になるまでの年数×20万円
障害者控除額が障害者本人の相続税額より多く、控除額全額を引き切れない場合は、引き切れなかった金額を障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
国税庁HP「障害者の税額控除」
6-6.相次相続控除
相次相続控除とは、10年以内に一次相続・二次相続があいついで発生した方を対象とする控除です。
短期間に相続が重なると、ひとつの財産に二重の相続税がかかることになってしまいます。そこで、1回目の相続において納めた相続税のうち、1年につき10%の割合で減額した金額を、2回目の相続で課される相続税額から控除します。
相次相続控除額=A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10
- A=1回目の相続で納めた相続税
- B=1回目の相続で得た財産価額
- C=2回目の相続における財産価額の合計額
- D=2回目の相続で得た財産価額
- E=1回目から2回目までの経過年数(1年未満は切り捨て)
なお、一次相続と二次相続の期間が短いほど控除額が大きくなります。
国税庁HP「相次相続控除」
6-7.小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた、もしくは事業をしていた土地に対し、80%または50%まで評価額を減額できるという制度です。
この特例を適用するにあたって、下記の2点に当てはまっていることが条件となります。
- 対象となる宅地で、被相続人や被相続人と生計をともにする親族が居住・事業をしていること
- その宅地等に建物や構築物が建っていること
また、農地や採草牧草地は特例の対象にはなりません。
土地は「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」のいずれかに区分され、それぞれに適用される限度面積と減額される割合(50%か80%)が定められています。
条件に当てはまる場合、小規模宅地等の特例を活用すれば相続税を大幅に軽減できます。
例)1億円の特定居住用宅地等(330平米まで80%減額)を1人で相続する場合の遺産総額
- 小規模宅地等の特例を使わない場合:1億円-基礎控除3600万円=6,400万円
- 小規模宅地等の特例を使う場合:1億円×20%(80%減額)-基礎控除3,600万円=₋1600万円
小規模宅地等の特例を使うことで遺産総額が6,400万円から圧縮され、相続税は発生しません。
国税庁HP「小規模宅地等の特例」
7.相続税の申告時期とタイミング
相続税を納める時期は定められているのでしょうか。
また、不動産の相続手続きはどのようなタイミングで行うべきでしょうか。
7-1.まずは相続登記をしてから
相続が発生したら、まずは不動産の相続登記を済ませ、その後相続税の申告をしてください。
そのほうが戸籍謄本などを余計に準備する必要もなく、スムーズです。なお固定資産税は、毎年1月1日時点の固定資産に対して請求されます。
そのため、不動産の相続が発生した場合は、年内のうちに相続登記を済ませたほうがよいでしょう。
7-2.相続開始から10ヶ月以内に
相続税の申告は相続開始(非相続人がなくなったとき)から10ヶ月以内と決まっています。
どうしても間に合わない場合、未分割申告という方法をとります。これは、協議がまとまっていなくても、法定相続割合で分割したと仮定して相続税をいったん納める方法です。正式に遺産分割方法が決まったら修正申告を行い、払い過ぎた方は相続税を戻してもらい、不足している方は追加で支払います。
ただし、未分割申告には配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使用できないため、納税者に不利な面があるともいえます。
未分割申告を行う際には、注意が必要であることを覚えておいてください。
7-3.実は必要ない?相続登記
実は相続登記の手続きには、「いつまで」という期限はありません。
しかし、相続登記を済ませておかないと、相続した不動産の売却や賃貸などができなくなります。
相続が発生したら、すみやかに相続登記を済ませることをおすすめします。
8.相続した不動産の活用方法
相続した不動産の活用方法はさまざまな方法があります。
それぞれメリット・デメリットがあるのでよく検討することが必要です。
自分や家族・親族が住む |
次世代に相続させる場合、「小規模宅地等の特例」が活用できる可能性があるため、将来的に相続税の軽減が期待できる。 |
賃貸に出し、収益を得る |
マンション・アパート経営して賃貸収入をえる。 大きな収益を見込める一方、投資額は大きくなるリスクも。 貸家にすると評価額が下がるので節税効果がある。
更地にして土地を貸す、駐車場やトランクルームにするといった方法もある。 次世代に相続させる場は、貸付事業用宅地として「小規模宅地等の特例」を活用することも可能。
|
売却する |
土地を利用する予定がなければ売却して現金化したほうがいい場合も。 固定資産税や管理維持費を回避できるほか、売却で得たお金で試算運用や不動産投資に活用できる。 売れた際は、仲介手数料などの経費、譲渡所得課税や印紙税などの税金がかかる。 |
等価交換する |
デベロッパーに土地を提供する代わりに建物の一部をもらうこと。 土地を手放す代わりに、それと等しい価値の建物の区分所有権が得られる。
|
自分や家族・親族が住む |
次世代に相続させる場合、「小規模宅地等の特例」が活用できる可能性があるため、将来的に相続税の軽減が期待できる。 |
賃貸に出し、収益を得る |
マンション・アパート経営して賃貸収入をえる。 大きな収益を見込める一方、投資額は大きくなるリスクも。 貸家にすると評価額が下がるので節税効果がある。
更地にして土地を貸す、駐車場やトランクルームにするといった方法もある。 次世代に相続させる場は、貸付事業用宅地として「小規模宅地等の特例」を活用することも可能。
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売却する |
土地を利用する予定がなければ売却して現金化したほうがいい場合も。 固定資産税や管理維持費を回避できるほか、売却で得たお金で試算運用や不動産投資に活用できる。 売れた際は、仲介手数料などの経費、譲渡所得課税や印紙税などの税金がかかる。 |
等価交換する |
デベロッパーに土地を提供する代わりに建物の一部をもらうこと。 土地を手放す代わりに、それと等しい価値の建物の区分所有権が得られる。
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まとめ
相続税は、遺産の総額が「基礎控除額」を超える場合に課税されます。
相続税は次の流れで算出することができます。
- 遺産総額を計算する
- 相続税の税額を計算する
- 実際に財産を取得した割合に応じて税額を計算する
遺産の額が多いと税率が高くなるしくみなので、財産の評価額を下げることが相続税対策になります。
土地の相続税評価額は、「路線価方式」または「倍率方式」で評価されますが、「固定資産税評価額÷0.7×0.8」で概算することもできます。自宅の敷地やアパートの敷地は、建物が建っていない土地よりも相続税評価額が下げられます。そのため、相続税対策としてアパート経営を始めるのは有効です。
ただし、アパート経営による相続対策を行うときには、「早めの対策」「収益性を重視する」「一次相続と二次相続を考える」という点に注意してください。
相続税は事前の対策で大きな差が出ますので、大切な資産を守るためにぜひ検討してみてください。
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