【基本を解説】遊休農地の基礎知識|概要・補助金・活用事例等を解説
本記事では、遊休農地の基礎知識について解説します。
この記事を読むと、
- 遊休農地についての基礎知識
- 遊休農地を活用するメリット、そのまま放置する事のデメリット
- 遊休農地の活用法&事例
といったことがわかります。
また、「遊休農地の活用法」については下記コンテンツで詳しく解説しています。こちらもご参考ください。
この記事の内容
1.遊休農地の基礎知識まとめ
最初に、遊休農地の基礎知識をまとめました。
詳細は2章以降で解説しています。
遊休農地とは、農地で現在農業がされていない土地や、されていても家庭菜園のように規模が小さいものだけが行われているもののことを指します。
遊休農地を活用するメリットは大きく以下3つです。
- 収益を得られる
- 農地転用で土地の資産価値が上がる可能性がある
- 固定資産税が軽減する
所有の土地を遊休農地のままで放置すると、大きく以下3つの悪影響が起こりえます。
- 固定資産税が高くなる
- 草木が乱生し環境に悪影響が生じる
- ゴミの不法投棄や火災発生などのリスクが大きい
遊休農地の活用方法には大きく以下4つ+1つがあります。
- 農地として貸し出すと
- 農地バンクを活用する
- 売却する
- 農地転用して活用をする
以下の章から詳細を説明します。
2.遊休農地とは
この章では、遊休農地について詳しく解説します。
2-1.遊休農地の定義とは
遊休農地は、農地法において以下のように定義されています。
- 現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地(1号遊休農地)
- その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度に比し、著しく劣っていると認められる農地(①を除く)と定義され、農地の有効利用に向け て、遊休農地に関する措置を講ずべき農地(2号遊休農地)
出典:農林水産省 荒廃農地の発生防止・解消の 手順とそれに関連する 制度・施策
つまり、農地で現在農業がされていない土地や、されていても家庭菜園のように規模が小さいものだけが行われているもののことを指します。
2-2.耕作放棄地、荒廃農地との違い
「耕作放棄地」との違い
「耕作放棄地」は統計用語で、農林水産省が取りまとめている「農林業センサス」という統計資料において、「所有している耕地のうち、過去1年以上作付けせず、しかもこの数年の間に再び作付けする考えのない耕地」のことを指します。
それに対し「遊休農地」は法令用語で、言葉は違いますが内容としてはほぼ同様のものになります。
「荒廃農地」との違い
「荒廃農地」は、農林水産省が行う荒廃農地調査に基づき、市町村と農業委員会が毎年行う現地調査で把握した「現に耕作に供されておらず、耕作の放棄によって荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地」のことをいいます。
- A分類:再生利用が可能な荒廃農地
- B分類:再生利用が困難と見込まれる荒廃農地
の2種類があり、A分類の荒廃農地は1号遊休農地と同義です。
※荒廃農地調査は令和3年度から廃止され、遊休農地調査へ統合されました。
2-3.遊休農地対策について
遊休農地の増加は社会問題でもあり、平成25年の法改正により遊休農地対策が強化されました。
その結果、少しずつ減少してはいますが、ここ数年はほぼ横ばいで、更なる対策を必要としています。
第1号 | 第2号 | 合計 | |
---|---|---|---|
平成22年 | 148,029 ha | 8,881 ha | 156,910 ha |
令和4年 | 89,858 ha | 7,512 ha | 97,370 ha |
参考:農林水産省 遊休農地に関する措置の状況に関する調査の結果(令和4年度)
参考:遊休農地面積の推移(平成22年~令和3年)
3.遊休農地を活用することで得られるメリット
遊休農地を活用することで得られるメリットは、大きく以下の3つです。
- 収益を得られる
- 農地転用で土地の資産価値が上がる可能性がある
- 固定資産税が軽減する
遊休農地を活用すると、収益を得る事はもちろん、農地転用により資産価値が上昇や固定資産税の軽減も期待できます。
以下詳しく解説します。
3-1.収益を得られる
農地をただそのままにしていても税金や管理の手間が発生するだけですが、活用すればたとえ少額であったとしても収益を得られるようになります。
活用法に関しては5章で具体的に説明しますが、一番手間がかからない活用法の一つに「貸し出し」があります。
例えば、農林水産省が提供している「農地バンク」では、借りたい人との仲介をしていて、貸し出し期間の10年間は賃料を受け取れます。
3-2.農地転用で土地の資産価値が上がる可能性がある
遊休農地を農地転用して他の用途に活用することで得られるメリットの1つは、土地の資産価値が上がる可能性があることです。
通常、農地は特定の農業用途に制約されている場合があり、土地の有効活用を難しくしています。
しかし、遊休農地を新たな用途に転用することで土地の利活用が進み、土地の価値が上昇します。
たとえば、農地を住宅地や商業地などに転用することで需要が高まり、土地の市場価値が向上する可能性があります。
ただし、地域ごとに異なる法規制や土地利用計画が存在するため、農地転用には地域の法規制や環境への影響などを考慮する必要があります。
3-3.固定資産税が軽減する
農地や土地は所有者に対して固定資産税が課税されますが、農地を放置している場合にもこの税金はかかります。
しかし農地を有効活用することにより、地域の発展や経済への貢献が期待され、自治体からの支援として固定資産税の軽減が行われる場合があります。
具体的な税制は地域や国によって異なるため、詳細は各自治体や税務機関のガイドラインを確認してください。
4.遊休農地のままで放置すると発生するデメリット
所有の土地を遊休農地のままで放置しておく事で発生するデメリットは、大きく以下の3つです。
- 固定資産税が高くなる
- 草木が乱生し環境に悪影響が生じる
- ゴミの不法投棄や火災発生などのリスクが大きい
それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
4-1.固定資産税が高くなる
固定資産税は土地や建物などの不動産資産にかかる税金であり、課税額は資産の評価額に基づいています。
農地の固定資産税は、通常
という計算式で算出されています。
しかし遊休農地で収益が発生していない場合、「0.55の税額補正」がなくなり、約1.8倍の固定資産税が発生することになります。
4-2.草木が乱生し環境に悪影響が生じる
定期的な耕作や管理が行われない場合、土地の表面に雑草や野草が繁茂し、農地の利用可能な面積を減少させるだけでなく、荒地化してしまう原因にもつながります。
草木の乱生は地域全体の景観や生態系に影響を与え、生態学的な問題を引き起こすこともあるため、定期的な農地の管理や活用が重要です。
4-3.ゴミの不法投棄や火災発生などのリスクが大きい
遊休農地の管理が行き届いていないと、ゴミが不法投棄されたり、火災発生の原因になったりすることが考えられます。
管理の不行き届きが原因で災害が発生した場合、損害賠償請求を受ける可能性もあります。
そのリスクを防ぐにために、多くの手間とコストがかけなくてはいけなくなります。
遊休農地を放置すると多くのデメリットがあります。遊休農地を手放したいという方は、ぜひ以下のボタンから土地情報を入力してみてください。
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5.遊休農地の活用方法4選+1
遊休農地の活用方法は大きく以下の4つです。
- 農地として貸し出すと
- 農地バンクを活用する
- 売却する
- 農地転用して活用をする
この章については、以下の記事で詳細に解説しています。
5-1.農地として貸し出す
農地を、他の農業者に一定期間にわたり貸し与えます。
メリット | 注意点 |
---|---|
|
|
農地の所有者は土地の収益を得られ、同時に農業者にとっては新たな生産の場を獲得できるのがメリットです。
5-2.農地バンクを活用する
「貸し出し」の1形態として、「農地バンク」の活用があります。
農地バンクは正式名称を「農地中間管理機構」といい、未利用の農地を有効に活用するためのプラットフォームを運営する仲介組織です。
農地バンクを活用するときのメリットと注意点は、以下の通りです。
メリット | 注意点 |
---|---|
|
|
農地バンクでは、地主や所有者が農地を貸し出し、活用したい農業者がバンクを通じて利用契約を結びます。
新しく農業を始めたい、規模を拡大したいと考えているやる気のある人材が借りてくれる可能性があります。
5-3.農地を転用して活用する
農地の転用とは、土地の使用目的を本来の農業用途から異なる用途へと変更することです。
これをするとアパート経営や駐車場経営等、様々な活用法を始める事ができるようになります。
メリット | 注意点 |
---|---|
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|
転用には地元自治体等の許可が必要で、且つ全ての農地が転用できるわけではありません。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
5-4.売却する
遊休農地が活用できない場合、土地所有者は売却を検討することも視野に入れてみてください。
遊休農地を売却するときのメリットと注意点は、以下の表の通りです。
メリット | 注意点 |
---|---|
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農地の売買は、農地法をはじめ、地域ごとに異なる土地利用計画や法規制によって制限されており、農業委員会等に許可を受ける必要があったりします。
また、農地から他の使用目的に変更すると売却し易くなりますが、これにも手続きや許可が必要です。
売却には、許可の取得や様々な関連書類の提出等が必要で、通常の土地の売買に比べて手間が大きくかかります。
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この章については、以下の記事でさらに詳細に解説しています。
5-5.(番外編)農地として再生する
遊休農地を農地として再生し、再度農業の為に活用するという方法ももちろん活用法の一つと言えます。
後述しますがこちらは補助金も各種あって行政の応援を得られやすく、自治体も巻き込んだ形で地域振興を図りながら再生に成功した事例も存在します。
5-5-1. 遊休農地に関する都道府県別の補助金一覧
遊休農地を農地として再活用する時に使える補助金は様々あります。
こちらで幾つか例示します。
補助金・交付金制度 | 目的 | 問い合わせ先 |
---|---|---|
中山間地域等直接支払制度 | 荒廃農地の解消や復旧を補助する制度 | 農林水産省 |
多面的機能支払交付金 | 農地・農道・水路などの保全管理や質的向上を図る活動を支援する制度 | 地方農政局 |
農山漁村振興交付金 | 山村活性化や最適土地利用など複数の取り組みを補助する制度 | 地方農政局 |
都道府県別の補助金は以下のようなものがあります。
都道府県 | 事業名 | 事業目的 | 補助率 |
---|---|---|---|
山形県 (村山市) |
遊休農地対策事業 | 遊休農地の再生、農地の適正利用 | 補助対象経費又は55,000円/10aのいずれか低い額(*) |
茨城県 (大子町) |
遊休農地等活用事業 | 遊休農地の再生及び景観形成 | 上限:100,000円/地区(*) |
長野県 (大町市) |
遊休農地荒廃防止支援事業 | 遊休農地の再生作業に係る経費の一部を補助 | 7万円/10a以内 ※上限:総事業費の3/4(*) |
鹿児島県 (南さつま市) |
遊休農地解消対策奨励金交付事業 | 遊休農地の再生及び利用促進 | 20,000円/10a(*) |
千葉県 (松戸市) |
遊休農地再生推進補助金 | 遊休農地の再生及び利用促進 | 5,000円/a(*) |
※「a(アール)」とは面積の法定計量単位で1a=100㎡。
引用:都道府県独自の荒廃農地対策事業一覧(令和5年4月時点)
補助金は地域自治体によって金額が変わっていきます。
都道府県別での補助金一覧は厚生労働省が出している、「都道府県独自の荒廃農地対策事業一覧(令和5年4月時点)」を参考にしてみてください。
5-5-2. 遊休農地の活用事例
以下、遊休農地の活用事例について紹介します。
山形県白鷹町の、基盤整備による荒廃農地再生及び農地集積とともに、醸造用ブドウ栽培で地域を活性化した事例です。
活用の取り組みが行われた白鷹市の荻野地区は、かつて盛んであった養蚕業の衰退により荒廃農地が拡大しつつあることが課題でした。
そこで、基盤整備実施に併せて地域住民によるワークショップを開催。地域の課題を共有し、対応策を考えた結果、農地集積と高生産性作物の導入を図ることになりました。
地域で作られた組織と、醸造用ブドウの試験場を求めていた企業が無事マッチングを果たし、平成25年度に耕作放棄地再生利用緊急対策交付金を活用して、荒廃農地0.32haを再生し、醸造用ブドウの試験栽培を始めました。
平成26年度からは、農業競争力強化農地整備事業を活用して、試験栽培地に隣接する荒廃農地3.4haを再生しています。
参照:農林水産省「荒廃農地解消の優良事例集援」
宮崎県日之影町が行なった2つの取り組みの事例です。
- 13の地域協定を統合・広域化することで既存の担い手の活動範囲を広げる
- 農作業受託の核となる町出資の農業法人との連携で協定農用地の維持・保全の取組体制を確立
宮崎県日之影町は棚田地域振興活動加算を活用し、「日之影町担い手協議会」を運営開始します。
さらにまち全体が一体となり農業経営を守り、後継者を育てるため、平成28年に自治体出資型の農業法人を設立しました。遊休農地を活用してトマトや薬草などを生産することにし、水稲防除や他の農作業の受託量も年々増加しています。
協議会は効率的な農作業受託を促進するため、農地の調整や受託作業料金の調整を行なっており、地域全体で協力して持続可能な農業経営の実現に努めています。
参照:宮崎県「継続して農地を維持する体制をめざして」
最適な土地の活用方法をチェック!
自分に合った、最新の不動産動向を考慮したおすすめの土地活用方法がチャートでわかります。
詳細は下記ページをご覧ください
遊休農地とは、農業に利用されていない農地です。
遊休農地を放置すると税金が高くなったり災害の原因になる等さまざまな悪影響があります。
所有している遊休農地を活用するためにも、ぜひ本記事を参考にしてください。
遊休農地を活用すると、以下の3つのメリットが得られます。
- 収益を得られる
- 農地転用で土地の資産価値が上がる可能性がある
- 固定資産税が軽減する
メリットについての詳しい内容は「3.遊休農地を活用することで得られるメリット」を一読ください。
遊休農地を放置すると、以下の3つのデメリットが生じる場合があります。
- 固定資産税が高くなる
- 草木が乱生し環境に悪影響が生じる
- ゴミの不法投棄や火災発生などのリスクが大きい
詳しいデメリットについては「4.遊休農地のままで放置すると発生するデメリット」を一読ください。
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