【基本を解説】市街化調整区域の基礎知識|家の建て方やおすすめ活用法も解説
本記事では、「市街化調査区域」の基礎知識について解説します。
市街化調整区域とは、「市街化を抑制する区域」を意味しており建物を建てることが原則禁止されています。
市街化調整区域で土地を活用するには、
- 建物を建てずに土地を活用する
- 建物を建てるために開発許可をとり、土地を活用する
上記のような方法があります。
1.市街化調整区域の特徴
「市街化調整区域」は、都市計画法で定められた都市計画区域の中の分類のひとつです。
都市計画区域は下記3つの区域に分類されます。
- 市街化調整区域:市街化を抑制しており、原則として建物を建てることができない地域
- 市街化区域:積極的に開発を進め、おおむね10年以内に市街化を図る地域
- 非線引き区域:上記のどちらにも属さない地域
そのうち、「市街化調整区域」には2つの特徴があります。
- 開発ルールに制限がある
- 立地が不便
本記事では「市街化調整区域」について詳しく説明します。
都市計画区域や市街化区域の詳細については以下記事をご覧ください。
1-1.開発ルールに制限がある
市街化調整区域は、農地や自然を残すことを目的としているため、特別に許可を得ない限り、原則建物を建てられません。
新しく建物を建てられないのはもちろん、すでに建っている建物の建て替えやリノベーションも許可を得て行う必要があります。
したがって、基本的には建物なしの土地活用を検討する必要があります。
1-2.立地が不便
市街化調整区域に指定されているエリアは都市部から離れているため、交通アクセスの面で不便であったり、買い物や飲食などに関連する施設がほとんどありません。
こうした不便性もあり、不人気な土地であることが一般的です。
2.市街化調整区域での土地活用(建物なし)
建物を建てずに行える土地活用は、以下4つの方法があります。
- 太陽光発電
- 墓地・霊園
- 駐車場・コインパーキング
- 資材置き場
収益性 | 手間 | 費用 | |
---|---|---|---|
太陽光発電 | ○ | ○ | ○ |
墓地・霊園 | ◎ | △ | ○ |
駐車場・ コインパーキング |
○ | ◎ | ○ |
資材置き場 | △ | ◎ | ◎ |
以下、ひとつずつ解説します。
2-1.太陽光発電
フィールド設置(野立て)の太陽光発電設備は建築基準法の建物にあたらないため、開発の許可が必要ありません。
自然を相手にする土地活用方法のため、市街化調整区域があるエリアとの相性が良い方法です。
固定価格買取制度(FIT)の定めにより、20年間は固定価格で買取してもらえる保証があるので、毎月安定的な収入を受け取ることができ、設置費用を回収できるようになっています。
ただし、急斜面や地盤が緩い場所で地盤改良・地質改良の造成工事を行った場合は開発の許可が必要になるため、注意が必要です。
2-2.墓地・霊園
墓地・霊園の利用者は頻繁に参拝するものではないため、アクセスが不便で人気のない市街化調整区域であっても、十分に需要が見込めます。
業者の立場からしても、地価が高い市街地よりも市街化調整区域のほうが購入のハードルは低めです。
一定以上の広さの敷地が必要ですが、他の3つの土地活用よりも高めの収入を期待できます。
ただし、墓地・霊園は長い期間の使用が前提なので、一度業者に貸し出したら当分戻ってくることはない点には十分留意する必要があります。
2-3.駐車場・コインパーキング
基本的に人が多く集まらない市街化調整区域の中でも例外的に観光施設や商業施設、企業の工場があるなど、一定の集客が期待できる立地であればこの活用方法が視野に入ってきます。
集客次第ではまとまった収入を期待できる土地活用方法です。
2-4.資材置き場
資材置き場は土地を整備する必要もなく、業者に貸し出すだけで収入源にできる活用方法です。
他の3つの土地活用方法と比べても手軽な点が特徴です。
ただし、周辺に資材置き場を必要とする業者の存在があってはじめて成立します。
また、期待できる収入はそこまで高くはありません。
3.市街化調整区域での土地活用(建物あり)
原則として建物を建てられない市街化調整区域ですが、自治体が定める基準を満たすことで、建設の許可を得られる可能性があります。
建物を建てられる場合の土地活用には、以下2つの方法があります。
- 高齢者向け施設
- 医療機関
収益性 | 手間 | 費用 | |
---|---|---|---|
高齢者向け施設 | ◎ | ○ | △ |
医療機関 | ◎ | △ | △ |
以下、ひとつずつ解説します。
3-1.高齢者向け施設
高齢者が増加傾向にある中で、高齢者向け施設の建設ニーズは高まっています。
サービス付き高齢者向け住宅や特別養護老人ホームなどの高齢者向け施設は街外れの立地でも需要があるため、広い土地であれば選択肢の一つとして検討しましょう。
高齢者向け施設を運営する業者へ貸し出すことができればまとまった収益を期待できる一方で、高齢者向け事業は短期間で撤退するケースも少なからずある業界です。
撤退されてしまった後に建物を持て余してしまうリスクがある点には注意する必要があります。
3-2.医療機関
医療機関は大規模な敷地を必要とすることに加え、市街地でも比較的支障なく運営できる業種ということもあり、市街化調整区域を活用方法の一つとしてあげられます。
「公益上必要な建築物」として届け出をして許可を得れば、市街地調整区域においても建設可能です。
医療機関の運営に必要な建物は、土地の所有者側が建てることを求められるのが一般的なので、まとまった額の初期費用が必要となる点には注意が必要です。
4.開発許可を得る申請手続きの流れと費用・注意点について
申請手続きの流れと費用、市街化調整区域が農地の場合の注意点について解説します。
4-1.開発許可・申請手続きの流れ
建物を建てるための開発許可を得る手続きは以下の流れとなります。
- 自治体への事前届・事前協議 :事業計画を策定する
- 近隣住民への説明:開発内容の説明と、近隣住民へ説明を行ったことを自治体へ報告する
- 開発審査会での協議:開発に関わる公共施設(道路・下水道など)の管理者と協議する
- 開発許可申請:開発許可の申請をする
手続きは土地を所有する方が独力で行うよりも、行政書士や土地家屋調査士といった専門家の助言を得て行うことでスムーズに済ませることができます。
4-1-1.自治体への事前届・事前協議:事業計画を策定する
都市計画法に基づき、事業計画を策定します。
また、自治体の担当者と話し合い、どういった規制があるのか申請に必要な書類はなにか確認をします。
4-1-2.近隣住民への説明:開発内容の説明と、近隣住民へ説明を行ったことを自治体へ報告する
どういった開発が行われるのか「開発予定標識」を設置し、近隣住民へ周知します。
開発予定標識は申請を行う14日前までに設置をする必要があります。
また申請する前に、どのような開発が行われるのか近隣住民へ説明し、説明が終わったことを自治体へ報告する必要があります。
ただし、自己住宅を建てる際は近隣住民への説明は不要です。
4-1-3.開発審査会での協議:開発に関わる公共施設(道路・下水道など)の管理者と協議する
道路や下水道など、開発にかかわる公共施設の管理者と協議し、同意を得る必要があります。
協議が必要な管理者については、関係開発事前協議の場などで確認をすることができます。
また、協議・同意が終了した際は「同意書」など、同意を得たことを証明する書面を受け取りましょう。開発許可申請の際に必要になります。
4-1-4.開発許可申請:開発許可の申請をする
「開発許可申請」と「必要な添付書類」を正本・副本を1部ずつ作成し、各都道府県知事に提出します。
提出する書類は主に下記の通りです。
- 委任状(代理人に委任する場合)
- 申請者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 開発区域の位置や面積を記入した地図
- 建築物または特定工作物の用途が記載された書類
- 住宅を建築する際の設計図
- 工事施工者に関する書類
- 資金計画書(見積書など)
- 申請者の資力・信用に関する書類
- 公共施設管理者・関係権利者の同意書
- 公共施設管理者との協議をしたことを示す書面
必要な書類については、自治体によって異なることがあります。
申請を行う前に事前に確認しておきましょう。
4-2.開発許可・申請にかかる費用
開発許可・申請には下記2つの費用がかかります。
- 開発行為関係手数料
- 行政書士や土地家屋調査士へ支払う報酬
開発行為関係手数料は、開発の目的によって金額が異なります。
開発の目的は「自己の居住用」と「自己の業務用」にわかれており、店舗や工場等を建てる土地として申請する「自己の業務用」のほうが、やや高い金額に設定されています。
自治体によっても金額が異なりますが、1㎡あたり1,500円~2,000円を基準に考えておくとよいでしょう。
4-3.農地の場合は転用許可が必要
市街化調整区域が農地の場合、建物を建てる際には「転用許可」を申請し、「農地」から「宅地」へと変更する必要があります。
農地転用の費用は、届け出が3万円~5万円程度、許可は6万円~8万円あたりを基準に考えておくとよいでしょう。
自分で申請することも可能ですが、行政書士など専門家に依頼する場合は、別途報酬が必要になります。
また、「農振地域」に指定されているエリアの場合、農地からの転用が認められないので、ご自身の所有する土地が「農振地域」にあたらないかどうか確認する必要があります。
「市街化を抑制する区域」を意味しており建物を建てることが原則禁止されています。市街化調整区域で土地を活用するには、
- 建物を建てずに土地を活用する
- 建物を建てるために開発許可をとり、土地を活用する
上記のような方法があります。
開発許可を得るためには、下記の流れが必要になります。
- 自治体への事前届・事前協議:事業計画を策定する
- 周辺住民への説明:開発内容の説明と、周辺住民へ説明を行ったことを自治体へ報告する
- 開発審査会での協議:開発に関わる公共施設(道路・下水道など)の管理者と協議する
- 開発許可申請:開発許可の申請をする
費用は、土地活用の用途や自治体によっても異なりますが、1㎡あたり1,500円~2,000円を目安にしておくとよいでしょう。
農地転用の場合は届け出に3万円~5万円、許可に6万円~8万円を目安にしておくとよいでしょう。
詳細は「4.開発許可を得る申請手続きの流れと費用・注意点について」にて解説しています。
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