【詳しく解説】貸し農園経営の基本とメリデメを解説
比較的広い休耕地を有する農家の方。初期費用を少なく、無理なく土地活用をしたい方。
農地のまま土地活用ができ、田舎の土地でも収益化が図れます。細分化するため、土地の形状をあまり問わず、転用も比較的容易です。
収益性が低いことがデメリットです。また、利用者トラブルの対応や農作物の管理など、人手が必要になります。開業にはそれぞれの業務形態に合った手続きが必要。
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この記事の内容
1.貸し農園経営の概要&こんな人に向いている
人気度 ◎高い→×低い |
収益性 ◎高い→×低い |
初期費用 ◎低い→×高い |
相続税対策 ◎高い→×低い |
流動性 ◎高い→×低い |
リスクの大きさ ◎小さい→×大きい |
管理の手間 ◎楽→×大変 |
---|---|---|---|---|---|---|
△ | △ | ◎ | △ | ○ | ◎ | ○ |
貸し農園経営はこんな人に向いている
- 使用していない農地を所有している方
- 初期費用の負担を小さく土地活用したい方
- 交通の便が悪いが比較的広い土地を持っている方
貸し農園は土地を農耕地として貸す土地活用方法です。土地の用途は法律で定められており、中でも農地の扱いは農地法で厳しく制限されています。
貸し農園での土地活用は、遊休農地を農地転用手続きせずとも収益化できる数少ない方法の一つです。
経営形態は、農地を営農者ではない市民に区画ごとに貸す市民農園型(シェア畑)、土地オーナーが農作物の管理をする必要がある体験農園型、農地を営農者に耕作地として貸す貸農地型があります。
2.メリット・デメリット&注意点一覧
メリット
- 農地の土地活用ができる
- 初期費用をあまりかけずに始められる
- 土地の形状を問わない
- 田舎の土地でも収益化できる
- 転用性がある
デメリット
- 収益性が低い
- 管理が必要
- 利用者トラブルが発生する可能性がある
- 開業には手続きが必要
貸し農園による遊休農地の活用は、営農できない事情がある土地の救世主的な活用方法です。営農ほどの手間をかけずに収益化でき、田舎の土地でも活用することができます。
ただし、市民農園のような小面積の農地貸付には、特定農地貸付法か市民農園整備促進法に基づく開設手続きが必要です。
<貸し農園経営の注意点一覧>
- 利用しやすい付帯施設付きの市民農園ができる区域は限られている
- 貸し農園の貸付期間が5年以内と定められていることに注意
3.事業モデル
貸し農園の事業形態は、主に3つの方式があります。それぞれの方式のメリット・デメリットをまとめました。
<パターン一覧> | |||
---|---|---|---|
パターン名 | メリット | デメリット | 相談先 |
市民農園型 | ・営農せずに農地を収益化できる ・遊休地を活用する場合節税効果が期待できる |
・トイレ等の施設を併設する場合は初期費用がかかる ・トラブルが発生する恐れがある |
自治体、土地活用会社等 |
体験農園型 | ・生産の喜びを伝えられる ・大きな手続きの必要はなく始められる |
・農作物管理の手間が発生する ・経営に工夫が必要 |
自治体等 |
営農者に農地として貸す | ・管理の手間がない ・収益が安定する |
・収益性は低い | 自治体等 |
3-1.市民農園型
<市民農園型の事業形態>
市民農園型(シェア畑)は農地を区画で分け、趣味として農業をする市民に貸し出す農地活用方法です。
市民農園を経営するための手続きの方法は2通りあります。市民農園整備促進法に基づいて運営する場合と特定農地貸付法に基づく場合です。
市民農園整備促進法に基づく市民農園の開設は、農機具収納施設や休憩施設、トイレなどの付帯施設の設置を条件としています。この市民農園の形態はドイツに古くからある「クラインガルテン(小さな庭)」と呼ばれるものに近く、市街地の緑地確保や地域コミュニティの形成にも役立てられます。
<市民農園型(付帯施設あり)の収益モデル表> | |
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売上(月) | 150万~300万円ほど |
水道光熱費 | 売上の5%程度 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×1.4% |
人件費 | なし |
雑費 | 売上の3%程度 |
200坪程度の変形地、20平米25区画を想定しています。
3-2.体験農園型
<管理委託を利用して経営する場合の事業モデル図>
土地オーナーが作付け地としての管理を行い、契約者から入園料を徴収して農作業体験を提供する事業形態です。観光農園とは異なり、作物の作付けから収穫までを一貫して体験できます。
開業にあたって特別な手続きは必要なく、作付面積の限定もありません。
入園料をとる形をとっているものの、利用契約を結びます。そのため収入の大きな変動はありません。
<体験農園型の収益モデル表> | |
---|---|
売上(年額) | 120万~200万円ほど |
水道光熱費 | 売上の5%程度 |
固定資産税(年額) | 固定資産税評価額×1.4% |
雑費 | 売上の10%程度 |
10アール程度の土地を30平米区画として運営を想定しています。
3-3.営農者に農地として貸す
<営農者に農地として貸す場合の事業モデル図>
営農者に農地として借地契約をする方式です。耕作放棄地を活用することで土地の維持ができるだけでなく、収益性もつけられます。
農地を借地として扱う場合、所有地の市区町村から営農者が変わることと事業計画の認定を受けなければなりません。認定を受けたうえで貸借契約を結び、事業計画に基づいた営農を行います。
<営農者に農地として貸す場合の収益モデル表> | |
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水道光熱費 | 売上の5%程度 |
固定資産税(年額) | 時価×70%×1.4% |
雑費 | 1~2万円 |
借地料が収入となります。農地の借地料相場は事業用定期借地権での賃借料相場を参考にしました。
4.開始するまでの流れ
ここでは、市民農園整備促進法に基づいて市民農園を開業する場合の開業までの流れを紹介します。
<開始するまでの流れの図>
4-1.農地の利用法を検討する
農地を農作物生産以外の用途に使おうとするときには農地転用の手続きが必要になります。農地転用にはさまざまな制度、法律が絡んでくるため、農地のままで活用できる方法をまずは検討するとよいでしょう。
周辺の環境が著しく変化していたり、相続税の問題がクリアになっていたりする場合、農地転用を検討したほうがよいケースもあります。判断に迷うときには土地活用の一括プラン請求を利用して相談してみるとよいでしょう。
4-2.市区町村に相談・開設の申請
市民農園として貸し農園経営をする方針が固まったら、市区町村の担当部署に相談します。
市民農園は市民農園整備促進法、特定農地貸付法の2通りの制度のどちらかを利用して始めるのが一般的です。市民農園整備促進法による開設は市民農園区域か市街化区域内に限られます。また、トイレや農機具庫などの付帯施設の建築も可能です。
4-3.市区町村と貸付協定を締結
提出した事業計画書に基づいて、貸付協定を締結します。事業計画には整備に関する事項や利用期間、貸付規定などが細かく設定されており、これをもとに事業を進めていく必要があります。
4-4.農業委員会に承認申請書を提出
市区町村での手続きが済んだら農業委員会に特定農地貸付の申請をします。申請の提出には貸付規定と市区町村と締結した貸付協定の添付が必要です。
農業委員会で申請内容を審査され、開設の承認がおります。
4-5.付帯施設の整備・開設の準備
市民農園整備促進法に基づいて市民農園施設を開設する場合、付帯施設の建築が可能です。トイレや農機具庫などを整備すれば農園としての利便性が増し、貸農園としての価値を高められます。
同時進行で開設へ向けて、利用者の募集や選考を進めます。
4-6.開設
整備や準備が完了したら開設(開業)です。運用を開始するのは農作物の作付けに合わせるのが一般的です。
事業は、貸付協定や貸付規定の内容に基づいて進めます。
5.農地活用のポイント
5-1.立地ニーズを調査する
休耕地での貸し農園経営は、ローコストで始められる農地の土地活用方法です。しかし、収益性は土地活用の中でも高いとはいえず、周辺の環境の変化によっては農地転用をしても高い収益性を確保できる土地活用に踏み切ったほうがよいケースもあります。
立地に賃貸住宅のニーズがあれば、農地転用した後も固定資産税の節税効果があります。まずは、立地のニーズを確認することから始めるとよいでしょう。ニーズの調査には一括プラン請求サービスの利用がおすすめです。
「HOME4U 土地活用 」では、さまざまなジャンルの土地活用を比較検討できる一括プラン請求サービスを提供しています。
5-2.ニーズに合った環境を整える
貸し農園の経営では、利用者のニーズに合った環境、経営スタイルを用意することが成功の秘訣です。農地をそのまま活用できる方法、ローコストでできる方法として貸し農園のメリットは大きいものの、経営がニーズに見合わないと経営が失敗する恐れもあります。
区画の面積ひとつとっても、利用者が使いやすい面積を用意することが大切です。
5-3.トラブル対処に備えておく
貸し農園経営はローコストで始められるものの、収益性は高くありません。管理の手間が一切ないのは営農者に農地として貸し付ける方法のみです。管理の手間や固定資産税分の収益を得ていくには、経費をできるかぎり抑えて運営することが大切です。
5-4.安定的な経営のために経費節減を重視する
貸し農園経営はローコストで始められるものの、収益性は高くありません。管理の手間が一切ないのは営農者に農地として貸し付ける方法のみです。
管理の手間や固定資産税分の収益を得ていくには、経費をできるかぎり抑えて運営することが大切です。
6.補助金その他活用できる制度一覧
市民農園の整備では活用できる補助事業がいくつかあります。いかに主なものをまとめました。
<補助金その他活用できる制度一覧> | ||
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名称 | 内容 | 注意点 |
農山漁村振興交付金 | 都道府県または市区町村が作成する農山漁村地域の活性化計画実現に必要な施設整備を総合的に支援する交付金制度。交流・ふれあいのための体験農園、市民農園の整備も対象。 | ・事業の総予算に上限がある ・地方公共団体が主体となって作成すべき申請書類がある |
都市農村共生・対流総合対策交付金 | 農山漁村の豊かな自然がもたらす「食」を観光、教育等に活用するための地域の手作り活動を支援する交付金。食を活用したグリーン・ツーリズム、農業の体験教育、農業を通した健康づくりなどの活動に支援を行う。 | ・上限額が地区ごとに決まっている。(上限800万~900万円) |
市民農園開設等促進事業補助金(和歌山市) | 10区画以上、100平米以上の規模をもつ市民農園を新設および増設するとき、休憩所等の設備整備にかかる費用を助成する。和歌山市内の耕作放棄地を対象としている。 | ・市区町村単位の補助金制度 ・休憩所等を設置できる市民農園整備促進法に基づいて設置する市民農園が対象 |
市区町村で独自の助成制度を設けているケースもあります。ただし、どの制度に基づくかで利用できないこともあるので注意が必要です。
7.貸し農園経営の成功事例
貸し農園経営の中でも付帯設備のある市民農園のモデル事例を紹介します。まずは農地活用で市民農園をする場合の成功するコツをまとめました。
<成功のコツ一覧>
- 経営規模の見極め
- 利用できる補助金の見極め
前提条件 | 土地面積10a(約302坪) 市民農園として区画整理 休憩所、トイレ、駐車場を整備 |
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初期投資 | 合計:250万円 |
利回り・収益 | 年間売上:約200万円 年間経費:約40万円(光熱水道費、雑費、固定資産税等) 利回り:約64% 年額利益:約160万円 |
成功のポイント | 上記は整備の補助金制度を活用していないため、付帯施設設置等で補助金制度を利用すれば、利回りはさらに高くなります。ただし、人件費は経費に入っていないため、実質の利回りは高くありません。 |
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