【初心者向け】マンションの減価償却&計算方法の簡単解説 |2024最新の確定申告ルール変更も解説
本記事ではマンション経営を行われている方に向けて、減価償却費の基礎知識について解説します。
この記事を読むと、
- 減価償却費の考え方
- 減価償却費の計算方法
- 減価償却費と確定申告の関係
といったことがわかります。
確定申告時に利用するマンション経営の減価償却費は以下の計算式で算出します(平成19年3月31日以後取得の場合)。
この記事の内容
1.減価償却とは
減価償却とは、経年に伴い価値が減少する資産を耐用年数に合わせて分割し、その期ごとに費用として計上する会計上の手続きです。
減価償却を上手く活用することにより、所得税の節税が可能になります。
例えば1,000万円のマンションを購入した場合、最初の年に1,000万円を経費として計上するのではなく、毎年20万を50年にわたって計上し続ける、といったイメージです。
なお、減価償却は建物の劣化にのみ適用される会計項目です。会計上では「土地の資産価値は何年経っても下がらない」という考え方を採用しているため、土地については減価償却を適用しないこととなっています。
マンション経営における減価償却については、以下の記事もご参照ください。
2.減価償却費の計算方法
減価償却を算出する際の計算は、「定率法」または「定額法」が使用されます。
それぞれの計算方法の特徴は以下の通りです。
なお、「平成10年4月1日以後に取得したマンションの減価償却は原則「定額法」で行う必要があります。
特徴 | 計算方法 | |
---|---|---|
定率法 |
|
|
定額法 |
|
|
※償却率:マンションの耐用年数ごとに決められた数値。
定率法の場合、所得税が最初に発生する年の償却率がもっとも高く、以降は年々減少していく点が特徴的です。
一方定額法では、建物価格から毎年同額の減価償却費を差し引いて計算します。
詳しくは国税庁の「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」をご参考ください。
3.構造別:マンションの耐用年数
減価償却費に関係する「定額法の減価償却率」は、マンションの耐用年数によって異なります。
構造別の耐用年数は以下のとおりです。
構造 | 耐用年数 | 定額法償却率 |
---|---|---|
木造 | 22年 | 0.046% |
軽量鉄骨 | 19・27年 ※厚みによって異なる |
0.053%(19年) 0.038%(27年) |
重量鉄骨 | 34年 | 0.030% |
鉄筋 コンクリート造 |
47年 | 0.022% |
※耐用年数:減価償却費を払う期間。
減価償却では、耐用年数と併せて、定額法償却率の確認も必要です。
軽量鉄骨の場合、骨格材の厚みによって耐用年数と定額法償却率が変わるため、計算時に注意しましょう。
4.目的別:新築マンションにおける減価償却の計算方法
新築マンションにおける減価償却の計算方法は、居住用か事業用によって異なります。
用途 | 計算方法 |
---|---|
居住用 | 減価償却費 =建物購入価額×0.9×償却率 |
事業用 (平成19年 3月31日以前取得) |
減価償却費 =建物購入価額×0.9×償却率 |
事業用 (平成19年 3月31日以後取得) |
減価償却費 =建物購入価額×償却率 |
ここでは、目的別の計算方法を詳しく解説します。
4-1.居住用の場合
居住用の場合、マンション売却時にできるだけ課税されないように独自の計算方法を使用します。
計算式は以下の通りです。
4-2.事業用の場合
事業用の減価償却費の場合、マンションの取得日が平成19年3月31日以前か以後かによって計算方法が変わります。
それぞれの計算方法は、以下の通りです。
時期 | 計算方法 |
---|---|
平成19年 3月31日以前 |
減価償却費 =建物購入価額×0.9×償却率 |
平成19年 3月31日以後 |
減価償却費 =建物購入価額×償却率 |
5.目的別:中古マンションにおける減価償却の計算方法
中古マンションにおける減価償却の計算方法も、居住用か事業用によって異なります。
新築マンションと混同しないように注意してください。
用途 | 計算方法 |
---|---|
居住用 | 減価償却費 =建物購入価額×0.9×償却率 |
事業用 (平成19年 3月31日以前取得) |
減価償却費 =建物購入価額×0.9×償却率 |
事業用 (平成19年 3月31日以後取得) |
減価償却費 =建物購入価額×償却率 |
5-1.居住用の場合
居住用の中古マンションも新築マンション同様に、計算式は以下の通りです。
5-2.事業用の場合
事業用の中古マンションの減価償却の計算方法は以下の通りです。
時期 | 計算方法 |
---|---|
平成19年 3月31日以前 |
減価償却費 =建物購入価額×0.9×償却率 |
平成19年 3月31日以後 |
減価償却費 =建物購入価額×償却率 |
ただし中古マンションの場合、残っている耐用年数(残存耐用年数)に応じた償却率を算出した上で減価償却費を計算しなければいけません。
残存耐用年数の計算方法は、以下の通りです。
経過年数の状況 | 計算方法 |
---|---|
法定耐用年数を 満了している |
法定耐用年数×0.2 |
法定耐用年数を 満了していない |
法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2 |
残存耐用年数を求めたら、年数に該当する償却率を調べて計算式に当てはめます。
6.建物価格が分からない場合の減価償却の計算方法
建物の価格が分からない場合でも、以下の方法で減価償却を求めることが可能です。
- 建築費から計算する
- 消費税率から計算する
ここではそれぞれの計算方法を解説します。
6-1.建築費から計算する方法
消費税制度が始まる1989年以前に購入したマンションや、個人から購入した中古マンションの場合、以下のように建築費から減価償却の計算を行います。
- 新築時の建物価格=建物の標準的な建築価額による建築単価×建物面積
- 減価償却費=新築時の建物価格×0.9×償却率×経過年数
まず国税庁が開示している「建物の標準的な建築価額表」をもとに新築当初の建物の建築費を求め、その上で建物価格を算出する必要があります。
6-2.消費税率から計算する方法
不動産では消費税は建物価格にのみ影響することから、消費税額と消費税率から以下のように建物価格を計算することが可能です。
- 建物価格=消費税÷購入当時の消費税率
- 減価償却費=建物価格×0.9×償却率×経過年数
ただし、マンション購入時期によって消費税率は異なる点に注意してください。
7.マンションの減価償却は確定申告に必要|2024年からの改正点に注意
マンションを売却して譲渡所得を得た場合や、家賃収入のような不動産所得が発生した場合には、確定申告を行わなければいけません。
そして譲渡所得や不動産所得を計算するにあたって、マンションの減価償却費が必要になります。
マンション経営における確定申告の手順や、減価償却費が必要となる詳しいタイミングについては、以下の記事をご参考ください。
また、2024年の確定申告では以下のような変更点がありますので注意してください。
- 扶養条件の変更
- 「申告不要制度」の削除
- 青色申告・白色申告がインボイスに対応
- 減価償却とは、経年に伴い価値が減少する資産を耐用年数に合わせて分割し、その期ごとに費用として計上する会計上の手続き
- 減価償却を上手く活用することにより、所得税の節税ができることもある
詳細は「1.減価償却とは」にて解説しています。
減価償却費は新築・中古マンション、建物価格が分からない場合によって使い分けます。
- 新築・中古マンションの計算方法は、「居住用」か「事業用」かによって異なる
- 事業用の中古マンションでは残存価額に注意する必要がある
- 建物価格が分からない場合は、「建築費」や「消費税率」から計算できる
詳細は「4.目的別:新築マンションにおける減価償却の計算方法」「5.目的別:中古マンションにおける減価償却の計算方法」「6.建物価格が分からない場合の減価償却の計算方法」にて解説しています。
減価償却は譲渡所得や不動産所得を計算するために必要です。
詳細は「7.マンションの減価償却は確定申告に必要|2024年からの改正点に注意」にて解説しています。
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