大家の右腕税理士事務所、一般社団法人大家の右腕代表税理士の細江博之です。本連載では、「地主さんのための経営指南」をテーマにしています。
今回は前回に引き続き所得税・相続税を圧縮させるための、メソッドである法人活用(所得移転編)について解説していきたいと思います。
前回は所得移転効果(相続税の節税)のひとつである役員報酬について解説させて頂きましたが、今回はもうひとつの方法を解説します。
1.建物売却とは
所得移転効果の2つ目の方法は、結論からお話しすると「建物売却」です。
これだけ聞くと「???」かもしれません。詳細を説明します。
まず、建物売却の意図としては「そもそも、物件を購入又は建設した意図は何でしたか?」です。
恐らく、土地の有効活用、相続税の圧縮対策、資産運用などがあると思います。特に地主系の大家さんの場合は、相続税を圧縮する対策、固定資産税の圧縮対策が多いと思います。
では、相続税の圧縮効果がなくなったもしくは薄くなった物件、つまり、相続税の評価減、圧縮効果がなくなった「築古」物件の出口はどのように考えていますか?
築古物件は相続税の圧縮効果がないだけでなく、減価償却費もなくなり、個人で所有すると所得税が高くなる物件です。
ということは、築古物件は課税所得が高くなり、所得移転をしないと所得税が高くなります。
そして、相続税の圧縮効果も薄いので相続税も高くなります。
では、これを解消するために、第三者に売却して新規で物件を建設する、または購入するということも考えられますが、地主系のオーナーさんには不動産管理法人(同族会社)を活用するのをおすすめします。
個人の建物を不動産管理法人(同族法人)に売却することを「不動産所有方式」といいます。
※法人活用の3つの方式については来月以降でお伝えします。
ここで、具体的な事例を解説します。
例えば、時価2億円(固定資産税評価額2億円・簿価2億円)の物件で残債が1億円の物件を個人で所有していたとします。この時点で相続税の課税遺産総額は2億円ー1億円=1億円です。1億円に相続税が発生してしまいます。
これを2億円で不動産管理法人(同族法人)に売却したとすると、法人は2億円で物件を購入し、個人は2億円の現金を不動産管理法人から取得し、その原資で1億円の借入金を返済します。
簿価2億円の物件なので、譲渡収入2億円ー取得費2億円=譲渡所得0円
つまり、譲渡所得税はかかりません。ですから、税引き後のキャッシュが1億円となる訳です。
建物⇒現金に資産の組み換えをして、この1億円を元手に別の物件を購入して、相続税の圧縮・節税を実行すると言う訳です。
2.まとめ
所得移転効果とは、贈与税を払わずに、下の世代に財産と将来の財産を移転する作用のこと(収益移転・役員報酬)ですが、そのうち築古の建物を売却し収益移転することで、相続税の圧縮対策を行う原資を得られること、所得税の節税というダブルの効果が期待できるので、おススメです。
この記事の執筆者
この記事の執筆者
細江 博之
所属 大家の右腕税理士事務所 代表税理士
職業 税理士
税理⼠登録以来、主に⼤家さんの税務に従事し、顧問先の⼤家さんに多⽅⾯の節税対策を提案し、所得税を年間500万円以上節税提案、相続税を1億円以上の節税提案をした実績がある。
自身も地主系大家の家系に養子縁組し、3代目大家として承継中。
⼤⼿ハウスメーカー主催セミナー、⼤⼿管理会社主催のセミナーの講師、宅建協会主催研修、名古屋⼤家塾講師など、セミナー講師として累計300回ほど登壇実績あり。
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